アートニュース Fromミュージアムカフェ – 25 - 夏休み、ちょっと遠出して美術館に行くのもオススメ!『生誕110周年記念 山本丘人展 魂の抒情詩』田辺市立美術館で開催中。

(2009.08.20)

近代日本画家の巨匠・山本丘人(1900~1986)。現代的な日本画の表現を切り拓いた第一人者であり、1977年には文化勲章も受章しています。今展は山本丘人の生誕110年を記念して、その画業を代表作などでたどっていく回顧展。現代的な造形のうちに、詩情あふれる作品を描き続けた巨匠の芸術を約40点の作品によって振り返ります。

『公園の初夏』1928年 美術館夢呂土・山本丘人記念館

近代日本画の巨匠として活躍した山本丘人。日本画の枠に問らわれず、自ら志を高くもっての活動は多くの名作を生みました。1964年には日本芸術院賞受賞、1977年、文化勲章を受章するなど、近代日本画壇には欠かせない存在として、今もなお語り継がれる作家のひとりです。
今回の展覧会は、そんな山本丘人の人となり、そしてその作り出す世界観を表現したいと、画業の変遷とともに3部構成で展示を観賞することができます。本来、近代洋画の魅力でもある造形的、そして感覚的な部分を生かし、さらに独自の新鮮な作風で描かれた作品は海や山といった自然を主題にした作品が多く、創作活動においてもとても積極的だったといいます。晩年まで描き続けた丘人の最後の作品までを展示しています。

見どころはその技法の素晴らしさ。新しい「日本絵画」を目指し、創造美術を立ち上げた丘人ならではといえるでしょう。それまでの日本画技法に拘らない技法はとてもユニークかつ不思議。実際の作品を前にすると、美しく深遠な画面が広がります。塗りに箔を貼って色を重ねた後、上塗りしながら画面を引っ掻いたり擦ったりなどして下地の箔を見せていくなど、とても細かい手法を用いて作品を制作しています。
そんな技法もじっくりと堪能できる機会です!

作品のほか、丘人が記した絵葉書や、親交のあった作家たちと交わされた手紙、パスポートなども展示されます。丘人という人間性が垣間見える品々からは、友人知人との心の交流の様子が伝わってくるようです。ぜひ足を運んで、山本丘人という作家の人生を味わってみてください。

地方の美術館は、ならではにこだわった展覧会が多く開催されています。夏休み、帰省の途中にちょっと寄り道、たまには車で遠出……その先に美術館なんてセレクトも、たまにはいいのではないでしょうか。

『鳥と風月』 1972年 箱根・芦ノ湖成川美術館
『浪と花』 1970年 箱根・芦ノ湖成川美術館
『仔犬と菜の花』 1982年 佐久市立近代美術館

 

『生誕110周年記念 山本丘人展 魂の抒情詩』

期日:2009年7月18日(土)~9月6日(日)
会場:和歌山・田辺市立美術館
料金:600円(一般)ほか
問い合わせ:田辺市立美術館 0739-24-3770