土屋孝元のお洒落奇譚。作品は額縁や台座を得て完成する
額装あれこれ……。

(2013.06.17)

額縁と絵や写真、
考えられる組み合わせは無限。

絵や彫刻、イラストや立体作品の額や台座が気になります。額や台座があってこその作品であり、完成度だと思うのですがいかがでしょうか。僕は個展用には、ある時期から浅草橋の額縁屋さんにお願いしてオリジナルフレームを使っていました。過去形なのにはわけがあり、久しぶりに連絡したら、お店が無くなっていました、名前は違いますが、フレームを作るお店はあるようなので今度、お願いしてみようと思います。この辺り、浅草橋周辺は問屋街なので比較的安く額縁を作ることができます。


作品は額縁、台座との組み合わせがあってこそ。最近、新たによい額縁屋さんを発見しました、『石見額縁』さんといいます。ホームページはこちら。

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額縁の話に戻り、僕が作っていた額縁は、少し細身の金箔仕上げで真ん中に溝をとり、緑青を入れた額縁です。金箔の下地にはオレンジ色の下地を塗り金箔が傷などで剥がれると下地が顔を出します。金箔は空気中の湿度により、酸化が進み、黒く変色するのも味だと思っていますが、これも個人的な好みによるのかもしれませんね。ちょうど1987年の個展用に多く作り、もう20数年過ぎたこの額縁が良い味になって気に入っています。金箔も黒く変色し、傷などで部分的にオレンジの下地が見え隠れしています。これに新しい作品を入れ替えて展示したこともあり、難を言うとこの額縁はキャンバス作品や厚みのある作品には向いていないのです。ファブリアーノの厚みのある300kgぐらいの紙に描いた水彩ぐらいまでですね。額縁は絵や写真により、考えられる組み合わせは無限と言っても過言ではありません。

お手製の額縁
作ったことありますか。

ここからは個人的な好みの話です。これが正解という事はないので気楽にお聞きください。ある時の個展では水彩の小品を白い幅のある額縁に入れ、作品自体を3mm程浮かしたようにしたこともあります。これはポストカードサイズくらいの小さな場合は上手く見せられたと思います。大きなサイズ、木炭紙サイズとか、B2サイズくらいになると僕の好みですが、額縁はあまり主張しないシンプルなもが良いのかなと。

例えば、有元利夫先生のリトグラフポスターには、杉の板目がでた生地のままの額縁、このリトグラフは有元さん本人から頂いたもので、今では、かなりの高額になるとかならないとか。以前 鈴木八郎さんに紹介して頂いた横尾忠則さんも制作されているシルクスクリーン工房で個展用に制作した自作の12色特色刷りのB1サイズのシルクスクリーンポスター版画には余白を開けて玉杢模様の版画用額縁。


シンプルな銀のフレーム。2006年、銀座の『福原画廊』にての個展風景から。この額は『伊藤屋』でお願いしました。

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もう30年も前になる青墨を使った作品には和紙の耳が見えるように紙を台紙に貼りガラス入りのアルミ製のフレームを使いました。また、ある時のグループ展では、キャンバス地にアクリル、ミクストメディア作品をそのまま入れる額縁でフレームに虫喰い穴のあるペンキ仕上げのフランス風の額縁。自分でも額縁を作ったこともあり、その時の額縁は、木製のパネルを入れるためのフレームを発注して枠の下地にモデリングペーストで厚みやテクスチャーを付け、金箔を貼り、少し剥がして風合いを付けたところへ、古い感じがするリレー付ソケットを取り付けて透明電球を入れ、イルミネーションの様に電球が順番に点灯するものでした。


辰年の年賀状にしたイラストには貝フレーム。

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またあるときは、ポストカードを入れるために自分で作った額縁は一般的な普通の市販のフレームに貝殻をグルーガンで固定して貝殻の額縁。最近では、流木の立体作品にかなり厚みのあるアクリル台座に真鍮製のパイプをドリルで穴あけして樹脂で固め固定して作品を浮かしています。これは、博物館の展示のようなイメージです、個人的に立体作品で台座が素晴らしいと思うのは、コンスタィン・ブランクーシでしょうか。真鍮無垢の作品に大理石の台座、大理石の作品に大理石、木製台座の組み合わせなど、作品のイメージや印象により台座も変化させています。また、最近見たものでは、山口薫の小品の墨絵にかなりの厚さのマットをいれ、その断面に年代物の古裂の更紗を見せた額装もセンスを感じました。馬の墨絵にまわりに少しだけ見える更紗の赤い色が品良く、大人な印象でした。僕は絵や作品により額縁にも変化をつけたいので、いろいろな額装を楽しんでいます。


2012年、銀座『ギャラリーゴトウ』での個展より。流木彫刻の台座、イラストにしてみました。

こちらはその流木彫刻作品の台座、写真です。