ボブ・ディランの絵画展、日本で初開催!

(2010.11.05)
『Train Tracks(RED SKY)』。

“ボブ・ディラン絵画展”。「えっ?ボブ・ディランって、絵を描くんだっけ?」。最初にこの話を聞いたときの素朴な感想でした。

1970年6月に発表した10枚目のアルバム『セルフ・ポートレイト』のジャケット(自画像)を描いているという程度の知識はありましたが、展覧会を開く程、本格的に描いていたとは、不勉強ながら知りませんでした。

どうやら1989年から1992年までのツアー中にスケッチ画を描いていたらしく、その時の絵をまとめたのが『Drawn Blank』というタイトルで小さな出版社から画集が発表されていたようです。ただ、この時はあまり話題にならなかったようですが、画集が出版された12年後の2006年、ドイツのキュレーターが、たまたまその画集を見て、画家としての才能を発見し、ディランに「このスケッチ画に色をつけて描いてみたら?」とアドバイスしました。褒められて気を良くしたのか、どうかわかりませんが、これを受けて、ディランは、わずか8カ月の間に、肖像画、風景画、静物画、裸体画等、約300点近くの水彩画やガッシュ画(水性絵具の一種)を描き上げました。

これらの絵は、2007年10月にドイツ・ケムニッツの美術館で初めての絵画展として展示され、現地で大評判となり、2008年6月と2010年2月にロンドンでも開かれ、今年9月からコペンハーゲンでも開催される程の人気絵画展となりました。

ボブ・ディランの音楽はメッセージ色の強い、どちらかというとハードな曲が多いですが、彼の描く絵は音楽と正反対で、静かで優しく、おだやかな印象を受けます。怖そうな、取っつきにくい雰囲気ですが、絵を見る限り、実は案外優しい人かもしれません。

ボブ・ディラン。

アートの専門家に寄れば、ディランの絵はゴッホやゴーギャンなどの後期印象派の影響を強く受けていると評してます。ご本人は誰の影響も受けてないと語っていますが、初めてアートに接したのは、1960年代にニューヨークのメトロポリタン美術館で見たポール・ゴーギャン展だそうで、潜在的に後期印象派の影響をは受けてるのではないかと思われます。

今回、日本で展示されるのは”The Drawn Blank Series”と呼ばれる水彩画の原画22点とリトグラフ15点です。面白いのは、原画には直筆のサインが入って、全ての原画とリトグラフは販売されるということ。

でも、ちょっと高いです。

いちばん高いのが『Train Tracks(RED SKY)』というタイトルの、高さ122cm × 幅92 cmの大きさで描かれた線路の絵で、約5,400万円! いちばん安くても約380万円ですから、一般人にはとても手が届きません。

一方、リトグラフは20万円からの価格帯なので、ディラン・ファンなら大人買い出来る範囲でしょう。又、会場では画集も販売される予定です。入場料は無料なので、六本木にいらっしゃった際は、是非、足を運んでご覧ください。ボブ・ディランの息吹を、すぐそばで感じることが出来ます。

『Cassandra』。
『Horse』。

三井住友銀行 presents  ボブ・ディラン絵画展
BOB DYLAN EXHIBITION~THE DRAWN BLANK SERIES~
日時:2010年11月6日(土) ~21日(日) 13:00~20:00
会場:六本木ヒルズ『umu』
(六本木ヒルズ・アリーナ向かい/テレビ朝日社屋1階)
入場料:無料
公式ホームページ:http://bobdylanumu.jp/

筆者プロフィール

石角隆行(いしずみ・たかゆき)

「六角堂」代表。
レコード会社勤務を経て、エンタメ系専門のPR会社、六角堂を設立。屋号は生まれ育った近所にある実在のお寺から勝手に拝借。都内在住の京都出身者で集う『にぬきの会』主宰。