池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALK花束とビッグイシュー。

(2009.02.03)

 会う人会う人に話していることがある。先日、とある経営コンサルタント氏がこう言っていた。
「景気の“気”は人の“気”。人の気分が景気を左右してしまうというのは、経済の世界では定説なんですよ」
 つまり、不景気、不景気と言えば言うほど、本当に景気が悪くなってしまうということである。

 私の敬愛する作家、筒井康隆氏の公式ブログ「笑犬楼大通り 偽文士日碌」の昨年12月31日にも、「マスコミはあまり不景気、不景気と言わない方がいい。せっかく金を使おうとしている人たちが遠慮したり節約したりして、ますます不景気になる。こいつは確かなことなんですよあなた。困っている人を取材するのはいいが、それを社会全体に敷衍しようとする意図があらわであり過ぎる。よくありません」とあった。
 おおいに共感している。

 確かに、私自身、このところ、ムードに負けて、少々使い控えをしていたかもしれない。「お金はあればあるだけ使ってナンボ、消費は最大の快楽であり美徳だ!」という世代であり、実際にそのような生活を続けてきたのに、不景気そうな顔をしているのはいやだ。ああいやだ。
 これはひとつ、世界経済に盛大に貢献したいと思っているのだが、一度締めてしまった財布の紐はなかなか緩まないものだ、ということも感じていた今日この頃。

 たまに通りかかる花屋「青山フラワーマーケット」で、小さな花束が売られていることを、知ってはいた。「ライフスタイルブーケ」と名付けられたシリーズで、たとえばグラスに入れるサイズのものは350円、ダイニングテーブルの上に飾ることのできるものは750円など。
 いつもは素通りするだけだったのに、その日、この花束を買ってみようかという気になったのだ。吟味して、ダイニング用のものを選ぶと、きちんと包んで延命剤までつけてくれた。
 花を飾った部屋はとたんに明るくなり、なんだか私の顔もほころぶ。理由もないのに、うれしくなってしまうのだ。

 花を買った帰り道、駅前で『ビッグイシュー』の販売員さんを見かける。
 ご存じの方も多いと思うが、この雑誌、ホームレスの仕事を作り、自立を応援するという理念のもと、ロンドンで始まった事業。300円の雑誌のうち、160円が彼らの収入になる。
「先日『ビッグイシュー』を買ったら……」と、ライター女子が普通に話していたり、会社でふと見ると編集者のデスクに立てかけてあったりと、みんな普通に購入している様子に、気がついていた。
 以前はよく買ったのに、最近は手にとってないなあ、と思い出し、気がつくと、300円を渡していた。

 以上2つ、合計するとほんの1000円ほどの小さな出費だけど、私にとっては、この「不景気コール」に負け続けて以来、気持ちの余裕を確かめることのできた、大きな実りある行為。
 冷え込む冬の街を眺めながら、気持ちがほかほかとあたたかくなるお金の使い方って、いいじゃない、と、思うのだった。よし、ムクムクと消費欲が湧いてきた!

「ダイニングブーケ」を、デンマーク生まれのホーム&キッチンメーカー「ボダム」のガラス製のティーポットに活けてみた。
この日に買った『ビッグイシュー』。