土屋孝元のお洒落奇譚。台北國立故宮博物院展で、あの「翠玉白菜」を見る。

(2014.07.09)

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「翠玉白菜」より。清時代・18~19世紀のものです。だれもが見たい一品、日本初公開。© Takayoshi Tsuchiya

 
翠玉を掘り出して、手作業で彫刻した
「翠玉白菜」。

台北国立故宮博物院展『台北 國立故宮博物院-神品至宝-』に行ってきました。

今さらながら、中国の歴代王朝の文化と質の高さ その完成度には驚きます。印象深かった順に上げてみますと「翠玉白菜」、「徽宗の絵や書」、「王羲之の書」、「青花龍紋天球瓶」、「明朝の刺繍、漆芸」、「乾隆帝コレクション」。「翠玉白菜」は清朝の力を感じる作品の一つです、清朝末期の皇帝 「光緒帝」の妃 「瑾妃(きんひ)」の嫁入り道具として紫禁城の寝室に飾られていたと言う「翠玉白菜」。紫禁城は見て来たわけではないのですが、「ラストエンペラー」や「1911」などの映画でも紫禁城が少しは描かれていてなんとなく理解しています。

ちなみにこの「瑾妃」は、「光緒帝」と「西太后」が亡くなった後に紫禁城内にて実権を握っていたようで、あの「西太后」の後にですから、いかに権力があったのか想像できます。雲南や東南アジアの奥地から翠玉を掘り出して、手作業で彫刻するテマヒマは普通では考えられない労力がかかっているのです。

中国において古代より金よりも珍重された「玉」は彫刻には不向きで硬度があり 硬く細工が難しいと言われています、その翠玉に多産、子孫繁栄の象徴イナゴとキリギリスを彫刻し脚などはここまで細工するかというくらいの精密度です、展示されている実物ではこのイナゴとキリギリスは見えにくく、拡大写真があるので そちらで確認するのがお勧めですね。白菜は、「百材」と同じ音で富を、青と白の色で「清清白白」を象徴していると言われます。この作品は清朝末期に紫禁城の宝物を整理している時に発見されたとか。発見者が傾けて観れるように台座も制作して、以来その方法で展示されるようになり、今回も傾けた展示になっています。最近 紫禁城の宝物蔵にて白菜を垂直に立てて飾る台座が見つかったとか、垂直に立てて飾ると また印象が変わるのでしょう。

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「鷹文玉圭」より。代々の中国の皇帝が受け継いだ宝の一つで、紀元前2500年から1900年ころの玉圭に乾隆帝が詩と自分の印象を刻ませています。© Takayoshi Tsuchiya
 

徽宗の見事な痩金体の書。

また 今回の展覧会には「徽宗」のコレクションも多数有りました、記憶が定かではないのですが、「桃鳩図」で有名な北宋の皇帝と記憶しています。芸術感覚に優れ自ら描いた絵も中国美術史上の中でも完成度が高く第一級品と言われています。

彼の造った文字書体「痩金体」はタイポグラフィ的に見ても素晴らしい綺麗な書体で 現代のデザインにも通用するモダンな書体です、もちろんこの「徽宗」が書いた痩金体の書も展示されています。中国の王朝を全て記憶していないのですが、金に攻められて南へ移り、南宋となり、元がモンゴルより起こり、中国全土を掌握し南宋をほろぼすまでの北宋と南宋です。

話は清朝に戻り、この清朝は明を制圧し最盛期を迎えます、その時代の皇帝の一人が乾隆帝です、この乾隆帝のコレクションも数多く展示されています。乾隆帝は詩作や深い学識を持つ皇帝としても知られ、軋轢があった満州族と漢民族の融和のために、当時の古今東西の書物を全て書き写させたいう「四庫全書」の編纂を指揮して完成させ、もちろんこの「四庫全書」も展示されているのです。

乾隆帝は皇帝が代々受け継いだ宝物で新石器時代から伝わる「鷹文玉圭」に自分の印と詩を刻ませたと言います。たしか、中国の皇帝達は自分が所有した絵や書に自分の印を押して自分が所有したという印にしたとか?、皇帝の数だけ印が絵や書に残る……。

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「青花龍文大瓶」より。景徳鎮窯 明時代・15世紀のものです。明朝の磁器の素晴らしさ、デザイン性に驚きです。これが朝貢のお返しだったのです。© Takayoshi Tsuchiya

「青華龍紋天球瓶」を見ると 明朝の「永楽帝」の栄華に想いをはせます。明朝 永楽帝の時代に宦官でイスラム教徒の大提督 「鄭和」が率いた のべ300隻、約3万人の大船団での幾度かの南海遠征にて東南アジア、中近東、アフリカまで遠征し、定かではないのですが、いくつかの分隊はアフリカ最南端喜望峰を越えて大西洋へ、コロンブスが発見する前のアメリカへ到達していたとか。北はグリーンランド、南はオーストラリアにも立ち寄り中国へ戻っているのです。その目的は明朝皇帝への朝貢を要求し、周辺国からの朝貢のお返しとして作られたのがこの「青華龍紋天球瓶」などの景徳鎮で作られた磁器だとか。ヨーロッパや日本で磁器が作られるだいぶ前にこの瓶を作った技術は驚きです。

この鄭和の遠征は突然中止され、以降明は鎖国政策をとり海外への門戸を閉ざしました。この時の海図や資料はポルトガルのエンリケ航海王やバスコダガマに渡ったも言われているのです。展示品をひとつひとつ見て行くと、その背景にあった時代のことを考えてしまいます。

その品物がたどって来た歴史や物語など、想像しながら見て回るのも面白いのかなと。

『国立故宮博物院展』は相当な混雑のようですが、「翠玉白菜」の展示は7/7(月)まで。金曜日の午後遅い時間帯には比較的余裕をもって見れるようですね、あくまでも参考なのであしからず。

特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」

 会期:2014年6月24日(火) ~ 2014年9月15日(月)
*「翠玉白菜」の展示は7/7(月)まで。
会場:東京国立博物館 平成館 特別展示室/本館 特別5室 
(東京都台東区上野公園13-9 東京国立博物館)
開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:7月14日(月)、7月22日(火)、7月28日(月)、8月4日(月)、9月1日(月)、9月8日(月)*ただし、6月30日(月)、7月7日(月)、8月18日(月)、8月25日(月)は特別展会場のみ開館。総合文化展(本館、東洋館、法隆寺宝物館、平成館1階)は閉室いたします。
料金:一般1600円、大学生1200円、高校生700円
問い合わせ:03-5777-8600 (ハローダイヤル)