リブロ・トリニティ – 3 - 『映画でワイン・レッスン』 青木冨美子著

(2008.12.15)
~著者+編集者+書店スタッフ、著者+書店販売員+読者……3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

 

発売29日でamazonの「ワイン部門」で1位に!

青木冨美子著

『映画でワイン・レッスン』1,365円(税込)
(枻出版社刊)

 

 

■書店スタッフより

ケイ・コーポレーション(TSUTAYA FC)商品部黄木宣夫

群馬県、桐生市出身。
書店人として25年超のキャリア。前橋の老舗書店を経て現職。
映画検定1級所持。今年は田辺・弁慶映画祭(和歌山県)の審査員に招聘された。良書・良(映)画(あくまでも自分にとって)を求めて日夜研鑽中(ほんとうか?)

ワインと映画、まさに蘊蓄の二重奏

まずは、アクション、ラブストーリー、SFなどのジャンル、そしてお気に入りの出演俳優や監督で映画をひと括るのがふつうの見方でしょうが、ひとの興味の向う先との重なり合いで、より好事な嗜好が芽生えてまいります。

登場する小道具・大道具をネタに、作品たちを串刺しにして行く見方があり、小さいものは、煙草や化粧品から、拳銃・自動車・飛行機まで、どちらの興味が先なのかは個人によって違うでしょうが、蘊蓄の傾け甲斐のありようを考えれば、大いに価値を見出すべき映画に対する嗜好性といえるでしょう。

まえがきにあるように、著者は映画少女(「映画の芽」)というまっとうなスタートをし、キャリア途上でのワインとの出会いがあり、その芽が見事に「実」をつけたものが本書です。

あらためて驚くのは、「サイドウェイ」のようにワイン自体が素材の作品はともかく、小道具として、点景としてのワインがこれだけ多くの作品で重要な「役」を担っていたということでしょう。私自身、誰もが知っている名作で何度も見ている筈なのに、ワインのシーンなんかあったかなぁ、というところからの再認識がしきりでした。ワインに込められた意味を推理したり辿ることで、作品の見方も受ける印象もまた大きく変わってきます。例えば、僕の大好きな作品に「ジョー・ブラックをよろしく」がありますが、死神の「ジョー」(ブラット・ピット)がワインを‘飲まない’シーンが2回、言われてみれば、そんなシーンが、くらいの認識でした。なぜ死神はワインを飲まなかったのか?著者による解釈は本書に譲りますが、これなど、良い作品には深く掘り下げたくなる場面が数多いことの証かも知れません。 

また、個人的に嬉しいのは、作品の完成度からいえば、B級的と言わざるを得ない作品まで取り上げられていることです。実は私が「クラレット」(ボルドー産の赤ワインのこと)という単語を覚えたのは「007/ダイヤモンドは永遠に」で、どのような場面での登場かは、本書に詳述されていますが、このシーン、ジェームスボンドファンなら絶対に忘れもしない名場面なのですね。(と勝手に思っています)

いやぁ、もう一度見なければならない作品がたくさんできてしまいました。正に嬉しい悲鳴ということです。

蛇足ですが、映画ではないですが、「刑事コロンボ」シリーズの最良作「別れのワイン」、青木さんはどう評価されているのか、聞いてみたいですね。

■著者より

青木冨美子(あおき・ふみこ)

NHK、洋酒メーカーを経て、現在フリーランス・ワインジャーナリスト
女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、昭和女子大学オープンカレッジ、ホテルオークラ「ワインアカデミー」の講師として活躍中。著書『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社)』、執筆協力『ワインの事典(柴田書店)』、監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

まずは何と言っても“シャンパン”から!

泡が含まれているだけで飲む人を特別な気分にさせてくれる素敵な飲み物シャンパン。映画の中でも一番活躍しています。監督や脚本家もそれがわかっているからでしょうね。

主人公リック(ハンフリー・ボガート)とイルザ(イングリッド・バーグマン)の存在を強く印象付けた往年の名画『カサブランカ』に登場していたのはマム社の「コルドン・ルージュ」です。そしてリックがイルザにささやいた名セリフは……あの「君の瞳に乾杯」!
 また映画『タイタニック』の中でタキシード姿のジャック(レオナルド・ディカプリオ)がおかわりをしていたのはモエ・エ・シャンドン社の『ブリュット・アンペリアル』、世界で最も多く愛飲されているシャンパンです。
 
本書は2007年春からホテルオークラのワインスクール「ワインアカデミー」で、“ワインと映画”の講座を担当したことがキッカケで再デビューした新刊。そのベースになっているのは2000年5月にリリースした『おいしい映画でワイン・レッスン』です。
 
「シャンパン編」には前述の2作品のほか、『ニキータ』や『月の輝く夜に』など全7つの名画を取り上げ、シャンパンが誕生した由来から歴史、製法、タイプまで映画と関連付けて解説しています。「イタリア編」ではチャーミングなオードリー・へプバーンの『ローマの休日』を切り口にして藁づとのキアンティの由来やイタリアワインの変遷、ボトルの変化などについて、また、「新世界編」ではマドンナが好演した『エビータ』を題材に、躍進著しいアルゼンチンワインについて書いてあります。
 
どのページから拾い読みしてもす~っと入れるのが本書の特徴です。『映画でワイン・レッスン』の世界にどっぷり浸っていただいている間に、“ワインを飲む楽しみは、知る楽しみによってさらに深まる”の心をきっとご理解いただけるものと、思っています。

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■読者より

森下満智子(もりした・まちこ)

飛騨高山生まれ。10年間のゼネコンOLを経てイタリアへジュエリー留学。ブライダル・ジュエリーデザイナー、ファッションジュエリー企画を経て現在は外資系企業のOLをしながら気ままなジュエリー作家。バロックパールとシャンパンとロックが三度の飯よりも大好きな夢見るジュエリー職人。

ワインはお好きですか? 映画はお好きですか? じゃあ読まなくちゃ! な一冊

「ワインは好きだけれど、難しいことは判らない。赤でも白でも美味しく飲めればそれでいいじゃない?」。。。という実践派にも、「やっぱりワインはテロワールを知ることから。ボルドーのシャトーは1級から5級まで全部暗記しています!」。。。というウンチク派にも、どちらのタイプの方にも楽しく読んでいただける一冊ではないでしょうか。

青木先生は私のシャンパンの師匠ですが、映画にも造詣が深かったのですね。なんと幼稚園児の頃からの映画ファンだったとは! 存じませんでした。
ワインを劇中の重要な小道具として上手く使った映画の数々を紹介しているこの本にはトリビア的な要素が満載です。「あの映画のあのシーンで飲んでたのは、実はこのワインなのよ」な~んて、楽しくおしゃべりを盛り上げること確実な情報で溢れています。

映画で使われたワインと同じ物を購入して、お家でゆっくりDVDを見ながら味わってみる。なんていう楽しみもありますね。誰かにワインをプレゼントする時に、『映画でワイン・レッスン』を参考に選んでみるのも良いかも。一緒に映画のDVDもセットにして贈ったらステキでは!!

“ワイン・レッスン”というタイトル通り、エピソードの紹介だけでなくワインに関する説明もしっかりと盛り込まれているので勉強にもなります。本格的にワインを学びたい方の入門書としても使えますね。専門用語も沢山出てきますが、本文下の注釈でその意味がすぐにわかるようになっているから知識のない方でも大丈夫。

私が大好きなシャンパンはテタンジェの『コント・ド・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン』なのですが、このメゾンのシャンパンは『ニキータ』で使われているそうです。あいにく、まだ映画を見ておりませんので、早速DVDを借りてこなくちゃです!

あ、そうそう!
「ワインはあまり飲まないけれど映画は大好き」という方にも、この本をきっかけにワインに親しんでいただければいいですね。

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