16日(金)放映! 『マイケル・サンデル 究極の選択』大震災特別講義。

(2011.04.13)

大学史上最多である、14,000人を超える受講者数を記録。

東日本大震災が起こってから早くも3週間が経ちました。被災された多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。依然として被災地の状況は深刻な物であり、ニュースを見る度に心が痛み、この記事を書いている今も、被災地の一日も早い復興と、日本の明るい未来を心から祈っている次第です。

しかし、日本は世界が尊敬する、とても強い国です。人と人とが助け合い、きっと日本は更に強い国へと再建するでしょう。

さて、アメリカの名門ハーバード大学にはマイケル・サンデルという政治哲学の教授がいます。彼の教える授業は “Justice”—正義 

彼の講義はとても有名で、大学史上最多である、14,000人を超える受講者数を記録しています。そして、ハーバード大学は建学以来、初めて講義を一般公開することを決め、大学のホームページ http://www.justiceharvard.org/や、YouTubeで彼の講義を実際に聞くことが出来ます。日本でも、NHK教育テレビで『ハーバード白熱教室』という題で放送されており、オンデマンドで見ることも出来ます。

また、彼の著書である、『これからの「正義」の話をしよう ーいまを生き延びるための哲学ー』は、ベストセラーになっており、書店で見かけたり、ニュースで名前を聞いたりした事がある人も多いのではないでしょうか。

絶対的な答えはない究極の選択を投げかける。

個人的な意見ですが、本を読むよりも授業を実際に見た方がわかりやすいです。授業なんて聞きたくないと思われる方もいると思いますが、サンデル教授の講義は退屈しません。

サンデル教授の魅力は、その講義の面白さ。

質問をし、生徒に発言をさせ、ディベート上で授業を進める。日本では稀で、アメリカではごく普通の授業風景ですが。
日本とは違う、アメリカの授業を体験することも可能です。

前置きが長くなってしまいましたが、今回この記事を書いたのは、4月16日の土曜日、午後9時から73分間、サンデル教授が今回日本で起こった大震災に対しての特別講義を行い、それをNHKが放送するからです。詳細はNHKのホームページ『ハーバード白熱授業』で見られます。

彼の講義では、絶対的な答えはない究極の選択を生徒に投げかけ、哲学の深い話を進めます。そして今回サンデル教授は、日本が置かれている状況に対して「何をすべきなのか」という、絶対的な答えはない問いについて考えていきます。

サンデル教授は先程紹介した本の冒頭で、2004年夏にフロリダを襲ったハリケーンチャーリーを例に挙げ、その時おこった便乗値上げについての議論をしています。

水のペットボトルが1本1000円。宿泊施設が通常の4倍の値段を請求。家の屋根から木を2本除去するのに230万円の請求。

便乗値上げは必要か、不必要か。

道徳的に考えたら、窮地に立たされている人の弱みに付け込んで得をしようとするのは間違っています。しかし、経済的に考えると、被災地では品物の価値が上がるため、それに伴って値段も上がった。ただそれだけのことなのです。興味のある方はぜひ、テレビでサンデル教授の授業を見るか、本を読んでみてください。

では、日本の場合はどうでしょうか。

今回、日本はハリケーンチャーリーよりも多大な被害を負いましたが、大々的な便乗値上げはおこっていません。小規模な窃盗や詐欺はありましたが。しかし、被災者の人からお金を取り、得をしようとしている業者はいないでしょう。様々な人が、様々な場面でお互いを助け合っていると私は感じます。

サンデル教授は、この様な日本人の高貴な態度、強さに対し、とても感銘を受けています。そして、もし日本以外で同じ災害が起きていたとしたら、便乗値上げはもちろん、暴動や窃盗などが起こる事はほぼ間違いないだろうと言っています。

東京大学で講義をしたこともあり、日本にも馴染みのあるサンデル教授。4月16日にどのような事を話すのか、とても興味深いです。見る価値は十二分にあります。

今回の地震で、日本列島各地が揺れました。

しかし、日本人は強い。

日本人の芯は、決してこの地震で揺らいではいないでしょう。

東日本大震災から約1ヶ月後の4月16日、土曜日の夜を、サンデル教授と共に「今を生き延びる為の哲学」について考えてながら過ごしてみてはいかがでしょうか。

*書籍
 『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』
 早川書房
 マイケル・サンデル=著
 鬼澤 忍=訳
2,415円
*テレビ
マイケル・サンデル 究極の選択 大震災特別講義
NHK総合
2011年4月16日(土)21:00~(73分)放送予定