アートニュース Fromミュージアムカフェ – 13 - 阿修羅に負けるな? 九州国立博物館『聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝』では謎多きチベット密教の逸品を紹介。

(2009.04.23)

世界的に大きな注目を浴びてはいるけれど、日本ではまだあまりなじみのないチベット文化を紹介する展覧会が九州国立博物館で開催中。日本初公開となるチベット自治区、河北省承徳にある世界文化遺産に登録された宮殿、寺院や博物館などからの名品がやってきます。

ダマルパ坐像 チベット 16世紀 ミンドゥリン寺

平均標高4000mを越え、ヒマラヤ、クンルン、カラコルムなどの山脈に囲まれたチベット高原。チベット文化圏とは、現在のチベット自治区だけではなく、中国の青海省、四川省、雲南省などにも広がっています。

9世紀初め、最澄や空海によって中国から漢訳経典や図像とともに日本へ伝えられた密教(インド中期密教にもとづく天台宗や真言宗など)とは異なり、10~11世紀頃再び仏教を受け入れたチベットには、インド後期密教からの強い影響が見受けられます。必要不可欠な存在である仏像や仏画において、チベットの仏達は独特の姿形をした尊格として立ち現れます。日本の仏教図像と違うその姿形はとても新鮮なものとして日本人の目に映るのではないでしょうか。

世界遺産を含むポタラ宮、ノルブリンカ、チベット博物館を中心とするチベット自治区内の寺院や博物館から出品された珠玉の作品群からは、チベット密教美術独特の表現をみせる仏像や仏画、経典類、密教法具、チャムと呼ばれる密教舞踊会に用いられる仮面や衣装などが並びます。ポタラ宮といっても馴染みのない人でも、歴代ダライラマの宮殿だったといえばその宮殿の位の高さがうかがえるのでは? そんな宮殿のコレクションのなかでも、門外不出とされてきた国宝級の文物が来日した今回の展覧会。

その選定には中国政府とチベット自治区が日本の専門家の要望に応えて揃えてくれたという初公開作品ばかり。日本とは異なる視点での世界観は作品の外観からも手に取るように伝わってきます。日本の国宝に相当する国家・級文物36件を含む123件で、チベット文化の変遷をひも解くことができます。日本の仏教図像とはちがう、チベット独特の文化、宗教観を体感できますよ。

 

『聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝』

期日:2009年4月11日(土)~6月14日(木)
会場:福岡・九州国立博物館
料金:1300円(一般)ほか
問い合わせ TEL: ハローダイヤル 050-5542-8600

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