女性のための、元気になれる俳句77 選・如月美樹 冴返る夜やトルソーに叫び声 大野今朝子

(2010.02.16)
 

このところの気候は、まさに「冴返る」。春を迎えたのに寒さがぶり返すことだ。トルソーとは「手・足・頭部を欠くかあるいは省略した胴体だけの彫像」(大辞林)。掲句は、白く、顔のないその彫像が叫び声を上げている、という。
トルソーが置いてあるのは、なにも学校の美術室だけとは限らないが、私はそう受け取りたい。夕刻、忘れ物を取りに行ったときの学校の、昼間とは違った恐ろしい雰囲気を思い出す。深夜となればなおさらだろう。春なのにしんしんと冷える夜だからこその感覚を詠んだのだ。
この句が作られた年代は手元の資料では定かではないが、トルソーの出てくる句はほかにも多く見つかる。もの言わぬ人体が、詩情をかき立てるのだろうか。