女性のための、元気になれる俳句51 選・如月美樹 紫陽花の醸せる暗さよりの雨 桂信子

(2009.07.01)
 

 俳句は短い。しかも季語を入れるという約束もある。つまり、17音しかない中で、無駄なことは言えないということだ。俳句においては、何事も断定した方がいい。たとえば、ひとむらのアジサイの醸す、うっすらとした暗がり、雨はそこから始まったのだ、というように。そして、そう言われれば、まさにその通りでしかないような気がしてくる。
 今まで見えていた世界が、全く違うものに見えてくる。それが“詩”の役割だ。不況だから、生活に必要ないからといって、私達が切り捨ててきたものの中に、なにか大事なことを忘れてはいないだろうか? 私にとってはたとえば、それが俳句という“詩”なのである。
 たった17つの音の中に無限の世界がある。おもしろいじゃないか。時はまさに梅雨。雨はいやだなあ、とは考えず、アジサイのうすくらがりをじっと眺めて、雨はここから生まれてきたのだという作者の「断定」を思いだし、楽しんでみる、そんなひとときは、やはりかけがえのない、自分だけの時間だ。掲句初出『晩春』(1967)。