Shibuya Tourbillon ~17~ ホドロフスキーのドローイング、ダガタトーク 日本初公開 アヴァンギャルドな夏 イルフェショーアツコバルー!

(2014.06.04)
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アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン・ホドロフスキー『愛は死より強く』
2人のホドロフスキーの愛が結晶した。
1月から私がコンタクトを続けていたカルトの巨匠、ホドロフスキーとその妻。やっと話がまとまり、85歳になる今でもみずみずしい創作力を見せつける彼と画家である妻パスカルと共同制作したドローイングシリーズを日本で初めて展示販売することになった。これはかなりすごいこと。パチパチ! 

老人と若い妻。 

1967年から5年間メキシコの新聞に週1回のリズムで発表された漫画、『パニックものがたり』の資料を見た妻が面白いからまた描いてみたら。と勧めたことから2人3脚で始まったのがこのアートプロジェクト。「僕たちは子供が作れないから、これらは2人の子どもなんだよ」とパリの自宅で語った。「だから大切で売れないようにバカ高い値段をつけたのさ。」と言ってアレハンドロは笑っていた。

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アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン・ホドロフスキー『ハッピーエンド』
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アレハンドロ・ホドロフスキー メキシコの新聞に掲載された漫画『ファビュラスパニカス(パニックものがたり)』
 
カルトの巨匠と東洋の画家。

「生れた時から僕はアーチストだったのさ、それでずーっと一生アーチストだ。それ以外したことがない。」と語る彼だが、その一貫した世界観がドローイングにもはっきり出ている。「僕の世界は煉獄だ、彼女の世界がそれを救ってくれている。」というように、人間の闇や矛盾を扱うテーマに、ベトナム出身の画家で水墨画を思わせるような透明感のある絵画を作るパスカルが静かな美しい色を付け悲しくも美しい作品に仕上げている。映画『リアリティのダンス』で彼女は衣装デザインも担当している。

『二人のホドロフスキー 愛の結晶
アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン・ホドロフスキー
ドローイング展』
会期:2014年07月17日(木)~9月21日(日)
料金:500円(ワンドリンク付)

会場:『アツコバルー arts drinks talk』
営業時間:水~土 14:00 ~ 21:00 、日~月 11:00 ~18:00
定休日:火
夏季休暇 : 8月12日~19日

ダガタ、自分を突き詰めて得られたもの
追加イベント決まりました!

アントワーヌ・ダガタの展覧会が始まって1週間がたった。ざわざわした気持ちになってほしい。と私が書いたように、来場者の反応は様々で興味深い、入った瞬間に「無理です」と言ってUターンした女性。バーカウンターに無言で手をついて固まっている人。涙ぽろぽろこぼす人。とにかく無関心ではいられない。私たちの一見自由で豊かな社会の同じ空気を吸っているのに、肉体を晒し、無数の男性の欲望のはけ口になり、自分を傷つけずにはいられない若い女性たちがいる。

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『アツコバルー arts drinks talk』にて6月30日(月)まで開催中。『アントワーヌ・ダガタ 「抗体」 展』より。© Antoine d’Agata / Magnum Photos

 

「性は彼女らを蝕み同時に開放する。」と彼が書くように、しかしなんと高い代償を払って解放されるのだろうか? また作家自身も10年にわたるホームレス生活の中で、ドラッグと暴力により死に損なった時にカメラというメディアを得て今まで溢れかえっていた何かに蛇口が見つかった。という。あふれかえる暴力と悲しみ、彼はその中に暮らし、彼女たちと性交し、極限状態で人が見せる束の間の優しさを慰めに生きてきた。そして命の続く限り、それを続けるという。

暴力に出会いに旅に出るひと。
自傷してアートにする人はいるが、彼ほどのフットワークで世界中の危ない場所に暮らし、多くの人に会い、他者の暴力に身をさらすアーチストはほかに出会ったことがない。13歳で売られてきて1日平均15人の客を取らされていたベトナムの女性、自分の赤ちゃんが死んだ翌日から売春させられた女性。彼はそういう人たちを助けるわけではない。ただ話を聞き、痛みを分け合い、褥を分け合う。そしてカメラはシャッターを切る。それっていいの? なんかひどくない? でも、それが彼の人生で、別に彼女たちを利用したわけでなく、自分はいまだにホームレスである。彼の中にある大きな欠乏が彼を漂泊に駆り立て、場末の娼婦の腕の中でだけ安らぎを得ることができるのだ。

●
作家在廊
『ダガタと飲もう、語ろう。アントワーヌと arts drinks talk』

2014年6月5日(木)19:00~21:00 
写真集をお買い上げの方は作家がサインします。※映画『AKA ANA』の上映はありません。

●トーク
『アントワーヌ・ダガタとじっくり話そう』

2014年6月26日(木)17:00~18:00
『AKA ANA』上映
19:00~20:00、トーク
20:00~21:00 写真集販売・サイン会

*『AKA ANA』の上映時間が通常と変更になります。
*予約 電話 03-6427-8048 / メール ab@l-amusee.com
お名前・人数・希望時間・お電話番号をお知らせください。

まだまだいた! ぶっ飛び作家、中島由夫。
「近年、具体美術協会やハイレッドセンター、工藤哲巳など、1950年代から60年代前半にかけて日本の現代アート界を賑わした作家たちの展覧会の開催が続いています。しかしながらそれらは当時の芸術活動の広がりのほんの一部であり、未だ戦後日本の現代アートの全容が語られているとは言えません。」という文章で始まる企画書を持って来られたのはアーチストの嶋田美子さん。

「1963年、最後の読売アンデパンダン(東京都美術館)で、中島由夫(当時23歳)はアンビート1の仲間や糸井寛二(ダダカン)とハプニングを行い、その過激な表現が社会的注目をあびましたが、当時の日本の美術評論家たちからは評価されることはなく、またこれまでも戦後現代アート史に登場することはほとんどありませんでした。これは日本のアート史において大きな欠落であり、現在のアートシーンへの影響も過小評価されていると言わざるをえません。」以上中島由夫シンドローム展実行委員会(小坂真夕、嶋田美子、入澤久子)展覧会のフライヤーから。

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ダダカンと言えば、都築響一さんの『独居老人』に登場する全裸で逆立ちをする裸儀の方。90歳になってもハプナー現役の猛者である。

10代から他のアーティストたちとハプニングを行い、24歳(1964年)で単身海外に活動の地を求めて旅立った中島由夫を軸として、国内外のアーティストとのコラボレーション、メールアート、やコミューン創世などの活動を振り返り、彼と日本の現代アートの歴史的価値を問い直すものです。という展覧会が開かれる。
 
中島は集団就職で上京して働きながら美大受験の準備をしていたが、1日でクロッキー帳をすべて使ってしまうほど絵を描きたい欲求が激しくて、ほかの受験生やのちに入った美大の中で浮いてしまう。そんな時にハプニングの面白さに出会う。「そこにいる人が息をのんで立ち止まる。それがすごい自分自身への刺激になる。成功というのとは違う。満足感。とても強いもの。」*
何となく、面白いから、始まったハプニングでヨーロッパに衝撃をもたらす。

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1968年、工藤哲巳の誘いで5月、学生運動最中のパリに行き、近代美術館の前でパフォーマンス。

パリのポンピドーセンターの前でやったHARAKIRIでは(工藤哲巳もパリで腹切りショーをやった)「みんなが見る、体の目で見る。何かの新しいイマジネーションを体に訴える。新しい実験的な運動に飛び込んで、訳の分からないところから何かができてくる。テーマがないところに、何かが生れてくる。」* 

まさにハプニングの醍醐味というのはそういうものではないか? 今若い世代が60年代のアヴァンギャルドに興味を持つのは、効果を予想するアート、すべて筋書ができているような、企画書のようなアートにうんざりしているからなのではないだろうか?

筋書きのない爆発アート 中島由夫さんをアツコ・バルーarts drinks talkでも紹介します。ホドロフスキーがチリからパリに出てきて激しくアバンギャルドな演劇活動に。その数年後に中島はハプニングをおっぱじめ、一方、1962年生まれのダガタはJ・P・サルトル~アントナン・アルトー~セックス・ピストルズにはまり家を出た。そう、すべては繋がっている。どうしようもない衝動で人はことを始める、そして止まらない。そんな芸術は人生そのもの。そんな人生は芸術だ。

*中島由夫著、「love is all」 エコ出版2010年より

『中島由夫シンドローム展』

会期:2014年6月8日(日)~22日(日)
会場:宮城県仙台市『Turnaroud ギャラリー ターンアラウンド』 にて 

会期:2015年1月16日(金)~2015年1月26日(月)
会場:『アツコバルー arts drinks talk』

●シンポジウム
2015年11月17日(土)詳しくはまたHPにて発表いたします。

アツコさんのギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』

TEL:03-6427-8048
所在地:東京都渋谷区松濤1-29-1 クロスロードビル 5F
営業時間:イベントによって異なるのでホームページで確認

入場料:500円(ワンドリンク付)