開放的な空間に様々な表現が混在
『文化庁メディア芸術祭』開催。

(2014.02.07)

会場は建築家 中村竜治さんによるデザイン。カテゴリーにとらわれない新時代の到来を感じさせるものになっています。写真中央下に向かって糸が弧を描きます。
会場デザイン一新!
開放的な空間でいろいろな表現形態が混在。

国立新美術館にて開催中の『文化庁メディア芸術祭』。アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門で作品を公募、新しい表現形態であるメディア芸術について優れた作品を選出、展示しています。応募総数は昨年のより大幅増の4,347点。今年は海外からの応募が国内を凌ぎ、世界的な認知の高まりを示しました。

17回目を迎える今年は、これまでのように会場を4つの部門に仕切ることはせず、広い空間を開放的に使用。天井からは無数の糸が一方向に向けてに貼られるというユニークな空間デザインになっています。建築家の中村竜治さんによるデザインで、会場を斜めに横断する糸は重力によって自然な弧を描き、中央が低くなっているその下に作品が展示されています。その自然が作った曲線と人間が作ったいろいろな表現形態が混在していることを感じてほしい、とは文化庁メディア芸術祭事務局の阿部芳久さん。

阿部さんによると今年はエンターテイメント部門大賞受賞の『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』や同じく優秀賞受賞『The Big Atlas of LA Pools』のように、既存のデータを表現に応用した作品が各ジャンルで目立ったとのこと。各ジャンルでの傾向は アート部門:社会的メッセージが強いもの。マンガ部門:キャリアや国籍を問わず、さまざまなテーマの多様な作品が受賞。エンターテインメント部門:社会環境にともなうエンターテンメントの変化を示すもの。アニメーション部門:挑戦的な商業アニメの作品、短編アニメの多様化 が見受けられたとのこと。

■応募作品総数 4,347作品(うち海外 83カ国、2,347点)
1997年のスタート以来過去最高の応募数。アート部門 メディアインスタレーション、インタラクティブアート、映像、グラフィックアート、ウェブ、メディアパフォーマス 計2,482 作品、エンターテインメント部門 ゲーム、映像、ガジェット、ウェブ、アプリ 669 作品。アニメーション部門  582作品、マンガ部門 609作品が応募。


アート部門 大賞  『crt mgn』(メディアインスタレーション) カールステン・ニコライ(ドイツ)©2013 Carsten Nicolai. All rights reserved. 人間が普段の生活では感じることができない電磁波を視聴覚できる装置。床の2台のテレビモニターには室内で光るネオン管が映っている、その上を往来する鉄棒には磁石がついており、モニター上を通るたびに画面の映像は歪む。そしてアンテナがその磁界の反応をとらえ音響信号に変換、音響機材から音が鳴る。ニコライさんいわく自然の中に共存する美しいものを視覚化、自然に対する好奇心を啓発したい、とのこと。


功労賞 阿部修也 日本のメディア芸術に大きく貢献した人物に贈呈される功労賞の今年の受賞者は4名。写真はナム・ジュン・パイクとの共作で知られるエンジニアでアーティストの阿部修也さんの展示。『パイク・アベ・ビデオ・シンセサイザー』(69年~)を再現したものでアナログ機械からの信号を一定の法則で変換して画像として表示させています。アート部門 大賞受賞のカールステン・ニコライさんはこの作品にインスパイアされてオマージュ作品を製作、それが今回の受賞作品のベースになっています。カールステン・ニコライと阿部修也の作品が対峙して展示されていることに注目。


エンターテインメント部門 大賞 『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』(映像、ウェブサイト、メディアインスタレーション、サウンド)菅野 薫、保持 壮太郎、大来 優、キリーロバ ナージャ、米澤 香子、関根 光才、澤井 妙治、真鍋 大度(日本、ロシア)©Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. 1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した世界最速ラップ1分38秒041”の走行データのグラフから、当時のエンジン音、早さを再現。


エンターテインメント部門 優秀賞 『燃える仏像人間』(劇メーション)宇治茶(日本)©2013 moerubutuzouningen-seisakuiinka 紙に着彩で描かれたキャラクターや風景を動かして作るアニメ「劇メーション」の手法で語られるのは京都の寺を舞台にした怪奇なラブストーリー。『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』フォアキャスト部門にエントリー、チョンジュ国際映画祭、『ドイツ・フランクフルト ニッポンコネクション映画祭』招待作品。


エンターテインメント部門審査委員会推薦作品 『フォンタ(FONTA) 』(ウェブサイト)本多 大和/泉 聡一/市川 葵/割石 裕太/佐々木 晴也/矢吹 遼介 (日本) ©KAYAC All Rights Reserved. SNSのアカウントでログイン、ひとりが一文字作るエンターテインメントサイト。ほかの人が作った文字を見たり、自分が作ったフォントをダウンロードできます。
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エンターテインメント部門審査委員会推薦作品 『ボケて(bokete)』(ウェブサイト)鎌田 武俊、和田 裕介、平山 剛、イセ オサム、新甚 智志 (日本) ©2013 Omoroki.Inc, All Rights Reserved. 写真でひとことボケる、エンターテインメント・サイト。お題の写真にボケる、ボケを評価する、お題の写真を投稿することができます。

エンターテインメント部門 新人賞 『ゼゼヒヒ』(ウェブサイト)、津田 大介(日本)©neo-logue.inc ソーシャルメディアと連動した投票・意見表明サービス。メディア・アクティビストとして活動してきた津田 大介さんのメディア・アート作品。SNSのアカウントでログインし設問に対して2択で意見を選び、その理由を記述して投票。原発問題など政治問題からテレビ番組までタイムリーな話題が設問になっている。

エンターテインメント部門審査委員会推薦作品『ラピラスバグ(lapillus bug)』(ガジェット)河野 通就、星 貴之、筧 康明 (日本) ©KONO Michinari/HOSHI Takayuki/KAKEHI Yasuaki  単なる食品サンプル皿ののように見えますがよく見るとお皿のまわりをせわしなく飛び続けるショウジョウバエが!? ハエのように見える黒い小さいものは、実は発泡スチロール片を超音波で飛ばしているもの。光やものに反応して動くという芸の細かさ。


アニメーション部門 大賞 『はちみつ色のユン』(ドキュメンタリー・アニメーション)ユン/ローラン・ボアロー(ベルギー/フランス)©Mosaïque Films – Artémis Productions – Panda Média – Nadasdy Film – France 3 Cinéma – 2012 韓国からベルギーへ養子に行ったユン。その自伝マンガをもとにドキュメンタリー映画監督のローラン・ボアローと共同監督、手描き、3Dアニメ、実写8ミリ映像など多彩な手法で表現。白い肌でも黒い肌でもないはちみつ色をしたユンの生活の中での違和感、疎外感を描きます。写真は原作者・監督のユンさん。


マンガ部門 大賞 『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8―』荒木 飛呂彦(日本)©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/SHUEISHA 19連載28年目を迎えた「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの第8部。ジョジョリオンの舞台 M県S市杜王町のモデルは作者の荒木飛呂彦さんの出身地でもある宮崎県仙台市。書き進めている中で起こった東日本大震災は作品に入れざるを得なかった、と荒木さん。シリーズそれぞれの主人公たちにはなんらかの血のつながりがあり、先祖代々親から子へ引き継がれるものがテーマ。

パフォーマンスやアニメ受賞作品の上映は、サテライト会場の東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックスでも行われます。

例年のごとく、シネマート 六本木ではマンガ部門のすべての作品を閲覧できるマンガライブラリーも開設。サテライト会場の東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックスでは期間中には受賞者によるトーク・イベントも開催。

2月9日(日)13:00~は東京ミッドタウン・タワー 5F インターナショナル・デザイン・リエゾンセンターでは『文化庁メディア芸術祭』がサポートするクリエイターたちによる発表会『メディア芸術クリエイター育成支援事業 成果プレゼンテーション』も。

公式ホームページでスケジュールをチェックして出かけてみてください。

『第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』

会期:2014年2月5日(水)~2月16日(日)

入場料:無料

メイン会場:国立新美術館

所在地:東京都港区六本木7-22-2

時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで

休館日:2014年2月12 日(水)
サテライト会場

・シネマート六本木 東京都港区六本木3-8-15 マンガライブラリー 10:00 ~ 19:00、2 月 12 日(水)は休日

・東京ミッドタウン 東京都港区赤坂9-7-1

・スーパー・デラックス 東京都港区西麻布3-1-25 B1F
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会