シノエリの美術巡礼中 – 8 - ミッフィー誕生55周年!!『ゴーゴー・ミッフィー展』直前インタビュー。

(2010.04.12)

2010年は様々な意味で節目の年であり、記念すべき年です。平城京遷都1300周年の年だし、長谷川等伯没後400年、ショパン生誕200年。なんてめでたい年でしょう!各地でそれに合わせた展覧会やコンサート、イベントが開催されるようで、文化的に充実した年になりそうです。

そして2010年はミッフィー誕生55周年の年でもあるのです!

この度ミッフィーの誕生55周年を記念し、松屋銀座にて『ゴーゴー・ミッフィー展』が4月22日(木)から開催されることになりました。この展覧会は2011年までに全国約10会場を巡回するそうです。

『うさこちゃんのおじいちゃんへのおくりもの』

Illustrations Dick Bruna
© copyright Mercis bv,1953-2010
www.miffy.com

それに合わせ、今回私シノエリこと篠原英里は、ディック・ブルーナ・ジャパンを訪れ、ミッフィーとその作者ディック・ブルーナの魅力についてインタビューしました。インタビューに答えて下さったのは、社長の鐵田さん、デザイン部の相生さんと堺澤さんです。

ミッフィーに囲まれながら、ディック・ブルーナの世界にどっぷりと浸りました。

 

ミッフィーの思い出

日本でうさこちゃん、ミッフィーを知らない人はいないでしょう。そして誰もが、ミッフィーの思い出を持っているのではないでしょうか?
私がミッフィーと聞いてまず思い出したのは、アニメーションのミッフィーでした。「アニメ ブルーナの絵本」のミッフィーです。長沢彩のゆったりとしたかわいいナレーションが、とっても印象深く残っています。そしてなんといっても、あのテーマソングが忘れられません。
『えほんのとびら、ひらいてみましょ。みんなで1、2、3!ページをめくり、おはなしのーくにへー♪ミッフィーミッフィーミッフィーちゃん♪』
この曲が流れると「あっ、ミッフィーがはじまる!」と思うのは私だけではないはず。

なんだかとっても懐かしい気持ちになります。
このテーマソングは世界共通!英語はもちろん、韓国語もあるのだとか。
韓国語のテーマソング、聴いてみたいですね。

 

ディック・ブルーナってどんな人?

さて、ミッフィーを生み出したディック・ブルーナとはどんな人物なのでしょうか?インタビューに答えて下さった鐵田さん、相生さん、堺澤さんは口をそろえて
「とっても素敵な方です。」
とにっこり微笑んで言いました。それぞれにブルーナ氏との記憶を思い出しているようです。

ディック・ブルーナ ©Peter Boer

ディック・ブルーナは1927年のオランダ生まれ。出版社『A.W.ブルーナ&ゾーン社』を経営するブルーナ家の長男でした。会社経営の後継者として期待されていましたが、本人はアーティストになりたいとずっと思っていたようです。やがて、会社が出版する『ブラック・ベア』シリーズのペーパーバックの装丁をするようになり、1953年にはじめての絵本『りんごちゃん』を出版します。これが絵本作家としてのスタートでした。そうして次から次へと装丁と絵本創作に取り組みました。なんと、1950年代~1970年代の間に約2000冊もの装丁デザインをてがけたというから驚きです! 3、4日に1つのデザインを仕上げていたという計算になります。この時期に会社のマークである「くま」をデザインし直し、『ブラック・ベア』が生まれました。ブルーナ氏のデザインは単純かつ大胆で、ぱっと目をひくインパクトがあります。今回の展覧会では当時のポスターや書籍も展示されるので、グラフィック・デザイナーとしてのディック・ブルーナを見ることもできます。

さて、そのディック・ブルーナですが、現在もオランダで創作活動を続けています。ほぼ毎日、自転車でアトリエへ行くそうです。とっても元気なんですね。
ブルーナ氏の人生や現在の生活について語る鐵田さんは目をキラキラさせていました。彼のような生活に憧れているのでしょう。

 

ミッフィーはアート?

ミッフィーをアートだと言うと、首をかしげるかもしれません。ミッフィーは絵本のキャラクターです。しかし、ディック・ブルーナが絵本を描く姿勢や方法を知ると、「それはアートだ!」と言いたくなるのです。

ブルーナ氏は1つの絵を描くにあたってトレーシングペーパー100枚分の下絵を描くこともあるといいます。なんというこだわり!下絵ができたら、次に画用紙に清書をします。トレーシングペーパーを上から重ね、硬い鉛筆で下絵をなぞって画用紙の表面に輪郭線の溝を作ります。そしてこの溝にそって絵具で描いていきます。この時、細い筆で少しずつ、少しずつ何時間もかけて点を描くように輪郭線を描くのです。ミッフィーの絵をよく見てみてください。その輪郭線はけっして一気に描かれたものではないことが分かるはずです。
そうして丁寧に描かれた輪郭線を、透明のフィルムに焼きつけます。さあ、次に色を決めていきます。

ディック・ブルーナの絵本は、色もシンプルで特徴的です。この色もこだわりの一つ。輪郭線の黒の他に、赤、青、黄、緑、灰色、茶色の6色を使います。この色だけでブルーナ氏の絵本だと分かってしまうほど特徴があり、どことなく、デ・スティルを想起させる色使いです。色は特別に染めた色紙を切り抜いて決めています。切り絵の手法は装丁でも使っていました。ブルーナ氏はマティスに影響を受けたといいますが、そういえばマティスも切り絵の作品を作っています。
また、絵だけではなく、文も考え抜いたものです。韻を踏んだ、短くて分かりやすい文です。ぜひオランダ語の絵本もチェックしてみてください。
このように、線も色も文も考えに考え抜かれて絵本が作られているのです。
ですから、ミッフィーは可愛らしいキャラクターであると同時に、アート作品でもあると思うのです。

 

変化し続けるミッフィー

今回のインタビューで驚いたのは、ミッフィーが少しずつ、しかし確かに変化し続けていることです。指摘されるまで気付かなかったのですが、耳や顔の形、体の大きさが変わってきているのです。年毎に見比べてみると一目瞭然!
どのミッフィーに一番親しみを感じるかどうかで、年齢がわかりそうなくらいです。

『うさこちゃんとどうぶつえん』(第1版) 絵本 1955年

Illustrations Dick Bruna
© copyright Mercis bv,1953-2010
www.miffy.com

考えてみると、55年間もミッフィーを描き続けているのです。親子三代でミッフィーに親しんできた家族もいるほど。少しずつ変わってきているけれど、いつもミッフィーはミッフィーでした。
若者もその父母も祖父母もミッフィーを見ると懐かしく感じるというのはなんだか不思議な感じです。

 

ミッフィーとともに

最後にインタビューに応じて下さった3人に、それぞれディック・ブルーナとミッフィーの魅力を教えていただきました。
堺澤さんは「ブルーナさんの人柄に惚れました!」とのこと。誰に対しても穏やかに応じるその姿に感じ入ったそうです。そのような人柄だからこそ、あのような優しい絵本ができたのでしょうね。

相生さんは、ブルーナ作品の「シンプルだからこそ深く、飽きないところ」が好きだと言いました。同じ黒い点の目とバッテンの口なのに、ミッフィーはとっても表情豊かです。シンプルだからこそ、ミッフィーの気持ちがよく伝わってくるのです。

鐵田さんは、「2,3才の頃におばあちゃんと読んだ『うさこちゃんとどうぶつえん』のオウムの絵が忘れられない。そんな記憶から郷愁も伴って、一番思い入れのある絵です」と素敵な思い出を教えて下さいました。実際にそのオウムの絵を見せていただきましたが、オウムは強い色彩と大胆な構図で描かれており、「忘れられない」という言葉に納得しました。

あなたは、ミッフィーと聞いて何を思い出すでしょうか?
いつも、こどもたちのそばにいるミッフィー。
松屋銀座で、ともにミッフィーの誕生55周年をお祝いしませんか?

 

ゴーゴーミッフィー展限定『キラキラ・ミッフィー』ストラップ(全5色)各5,250円

『ゴーゴー・ミッフィー展』

2010年4月22日(木)~5月10日(月)
松屋銀座 8階大催場

開催時間:午前10時~午後8時 入場は閉場の30分前迄。(最終日午後5時閉場)
主催:朝日新聞社
後援:オランダ王国大使館
企画協力:ディック・ブルーナ・ジャパン、Mercis bv
協賛:フジパングループ、KDDI、フェリシモ、ぶるーな倶楽部
協力:福音館書店、講談社
入場料:一般1,000 (700)円、高大生700 (400)円、中学生以下無料。( )内は前売料金
チケットぴあ (Pコード764-035)
ローソンチケット(Lコード32500)にて販売
問合わせ:松屋銀座
Tel. 03-3567-1211(大代表)

ゴーゴーミッフィー展HP http://www.asahi.com/event/miffy
松屋銀座HP http://www.matsuya.com