『SARAVAH 東京』こんにちは。- 6 – やっと出ました、未来型。

(2010.11.15)

牧村憲一さんと津田大介さんの書いた『未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか―』という本が出ました。

(中公新書ラクレ刊)私も早速読ませていただいている途中です。この30年来、私たちが感じていた音楽の仕事の大きな変遷を非常にわかりやすく説明してくれているのはうれしいですし、では今はどうなのか、これからはどうなるか。と言うところの予測も、希望があってとても良いです。ぜひ、音楽のプロになりたい人、もうなっている人読んでください、お勧めです。


『未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか-

本の中で牧村さんが一人(インディーズ)レーベルを始めるとき参考になった、と言ってくれているのがわれわれの会社『SARAVAH(サラヴァ)』です。バルーの書いた『男と女』『白い恋人たち』『水の中の輪』『パリのめぐり合い』イヴ・モンタンがヒットさせてくれた『自転車』などの安定収入で、新人のアバンギャルドな音楽を作っていく。アバンギャルドは10年20年すると、スタンダードになって、又、今度は安定収入を生む。という時代のトップの切り込み隊長をしながら、傷を最小限にとどめる。やり方は、インディの理想でした。しかし、一方、営業ができないし、レコードの在庫は抱えるし、経営的には苦労続きでした。ところが今は、在庫も営業マンも取次ぎも入らないのです。

まさにわれらの時代がやってきた! われわれレーベルはかつての製造業から情報産業へと移行しつつあるのです。情報産業って、何? と言えば、やはり良い情報を提供できることでしょ? だから又振り出しに戻れる=じゃ~ん! 「感動の音を届ける」と言うSARAVAH創立の志。いわば『サンバ・サラヴァ』の決意です。もちろん群雄割拠、ネット上では千万単位の音楽情報があふれている。その中で生き抜くのは大変なチャレンジですが。音楽に品質があれば、そして今を感じるものであれば、ネットの厳しいふるいの網に濾されちゃうことなくちゃんと残りますよ。

 

ライブハウスも群雄割拠

CD販売はだめだが、ライブハウスは儲かる、と言う、嘘のような統計があって、どんどんライブハウスができていますが、これは、実は儲かりません。300人以下の場所で、アーチストを搾取しないで、お客さんをちゃんと扱おうとしたら、これは儲かりません。はっきりいって儲かりません。ただし今の資本主義の範疇では、の話です。今の企業ってどこでも資本投下から半年でリクープ(回収)した上利益が出ないといけない。と言うようなきちきちの考えです。また、儲からなくてはいけない。と言う強迫観念に犯されています。でも文化産業において、儲かるとはなんでしょうか。

 

儲かる=続けること

ITの一部の人たちがドカーンと儲けて、あれれというまに消える。あれは儲かったのか? 社長が大金を手にした? So what? 興味ないです。文化産業は違います。続けることで価値が出てくるのです、その価値は、ITのドカーン、より地味ですが、もっとエレガント、おしゃれです。

お味噌やお酒の会社で100年以上続いているのあります。日本って長寿企業が多いらしい。文化産業もそうありたいです。夏目漱石を出版した出版社が、それで今は携帯小説も出すけど、現代詩も出す、みたいのだったら、かっこいいじゃあありませんか。続けることで文化的資産を増やしていくのです、文化はさびしがり屋ですから、仲間が増えると力が増して、時間も経つとますます力が増して、気がつくと、ムーブメントとか、(白樺派とか実存主義とか、あるじゃありませんか)何とか派。とまで呼ばれて金字塔が建っちゃったりできるのですよ。そこまで行けば、文化産業の担い手としては涙が出るほどうれしい。

余談になりますが先日、新国立美術館で『マン・レイ展』がありました。福のり子さんのすばらしい熱意で集めた資料の数々で、初めてマン・レイの仕事と彼を取り巻くシュール・リアリズムの人たちの様子がまるで今ここにいるように追体験できました。彼らのやっていることって当時としてはめちゃくちゃで、全然市民権など得ていない。アングラ中のアングラです。でもすごーく遊び心一杯で楽しんで、何より自分たちを信じている。だから彼らの幸福感が太陽みたいに輝いて(それが写真から感じ取れました)仲間は一杯集まって、みんなわいわい映画作ったり、変なオブジェ作ったり。それが50年したら新国立美術館で展覧会、ですからね。

そうは言っても、お店が回るためには商売しますよ。それで働く人たちに、ちゃんと給料が払えて、お客さんが楽しめて、アーチストが育てば、これは儲かったと言うこと。ご心配なく、ちゃんと儲けるつもりです。文化的儲け方で、ね。いろいろ考えておりますのよ。ふふふ……。

 

マイア・バルー à パルコ劇場 2週間後にせまる! 

このライブハウスをやる物件を見つけたのが7月の半ば。丁度、同じころにパルコ劇場で初、劇場コンサートが決まりました。

私の会社『ラミュゼ』はマイア・バルーの製作プロデュースをしています。SARAVAHレコードで積み重ねてきた知恵は、さっきも書いたように、自己規制をなくし、もっとも自分のやりたいことを表現してもらう。と言うことです。それが次の時代に残るに必要な要素です。そして心強いのが「どんべい」こと永田 純さんです。

細野晴臣さんの下で仕事を始め、矢野顕子さん、大貫妙子さんのマネージャをやってきた彼が、マイアのマネージメントをしてくださるし、先ほどの本を書かれた牧村さんもスーパーバイズしてくださっています。これほど足並みそろった考え方で、アーチストと共に進んでいくレーベルはなかなかありません。

マイア・バルー初のホールコンサート@パルコ劇場は2010年11月27日(土) 16:30開場 、17:00開演 出演はマイア・バルー(vo / fl / g / per)、
鬼怒無月(g)、渡辺亮(per)、忍田耕一(trombone)、Abu(b)、
駒澤れお(per)、ゲスト: 熊谷和徳(tap)前売4,200円(全席指定・税込)

私たちはヒットがほしいのではありません。(やっぱ欲しいけど……)ヒット以上のヒットが欲しいのです。線香花火じゃなくてずっと燃え続けるろうそくの火、人を暖め続けられるような楽曲が欲しいのです。

そういう大人の妄想をよそにマイアは自分の音楽の世界で羽ばたこうとしています。彼女は親の放浪に付き合い舞台や楽屋が遊び場で、バーデン・パウエルの膝でピアノを教わったり、ダニエル・ミルのアコーデオンで遊ぶ、という環境で育ち、知らないうちにグルーブ感を叩き込まれてきました。

それらのいわばDNAをどのように彼女の音楽として開花させるのか。これからが見ものです。今回パルコ劇場のみならず、パルコの企業キャンペーンに起用されて、テレビCMにも出たり、急に忙しくなっている彼女ですが、パルコ劇場では、初顔合わせ、タップダンスの熊谷さんもゲストで出演。きっと面白いパフォーマンスを見ることができると思います。

マイアは現在、『パルコ』のコーポレートキャンペーン『Love human.PARCO』に起用されています。11月3日よりテレビCM第2弾が放送中。『パルコ』のWEBサイト http://www.parco.co.jp/parco/love_human/でもその動画が見れます。CMに合わせて作られた新曲『微笑みとハンマー』絶賛配信中! 限定盤CDも発売中。 2010年11月19日(金)18:00〜『パルコ 渋谷店』クリスマスツリー点灯式にも登場。渋谷パルコ・パート1 公園通り広場 特設会場にてミニライブとスペシャルゲストによる
トークセッションあり。

 

またもや問題が……

そんな、楽しい夢を見ているうちに、『SARAVAH 東京』で今度は電気と照明の問題が持ち上がりました。店のハードな部分は建築の相澤さんにおまかせしてありました。で、彼女からは、「ライブハウスの専門ではないので音響と照明はお願いできますか?」と言われていて、戸川昌子さんの店『青い部屋』を以前リニューアルで立ち上げた、ソワレ君にお願いしたのですが彼は、「はい大丈夫。」ということだったので、みんな安心し切っていたのですが、そろそろ図面をください。と相澤さんに言われて、ソワレ君は結構平気で「まだ待ってください。」との返事。それもそのはず、ここには大きな言葉の誤解があったのです。

ソワレ君は音響や照明器具を工夫して安く買ってくる。と言う意味で任せてください。と言っていたのです。それで、まだ開店まで間があるのでゆっくり見ますと言う意味で待ってくださいと言っていたのです。ところが、相澤さんは電気の量やら熱量の計算、配電盤からコードをいかに引くか、何センチの直径のコードを何本どこに通すか、コンセントはどこに何個か。などなど、ハード面、音響と照明の設備設計の話をしていたのです。

で誤解が埋まらないまま、時間はどんどん経ち、「もうもうタイムリミットなので図面をください。」と言われたときになって全員びっくり! 唖然! やっと、恐ろしい誤解に気がつきました!! 

「え? 僕図面は引けませんよ、相澤さんが設計なさるのではありませんか?」

「え? 私は照明と音響はお任せしていいですか? と聞いたとき、はい。とおっしゃったので、何もしていませんよ。だったら仲間の専門家に頼めたのですが、今はもう間に合いませんよ。」

全員絶句!  
This is it!  
It is The恐怖! 

これでは12月開店に間に合わない! 真っ暗な中でろうそくを灯して開店ですか? それ、ありえません。

そこで、連休の週末、知り合いの海藤さんの事務所にお助け電話をしました。
「ええ? まだやってないの? どうすんの?」と呆れられながら汗かき、汗拭き、説明して海藤事務所さんに何とか図面を引いていもらいました。いやあ、大変だ!  

手作りでやりたいと言う気持ちがあっても、電気の工事などは、やはりプロの人に入ってもらわないと、どんなバトンを通すか、どんな配線をするか、なんともわかりません。

クライシスでしたね~あの週末は。今はなんとかエアコンやダクトと照明のバトン、吸音材がぎっちり寿司詰め状態で仲良くならんだ天井の絵が出来上がりました。ふ~

開店まであと25日、いよいよ熱を帯びてきた『SARAVAH 東京』の現場でした。

 

 

 

『SARAVAH 東京』のホームページがオープンしました!
 http://www.saravah.jp/tokyo/