シノエリの美術巡礼中 – 2 - 『追悼 赤塚不二夫展 〜ギャグで駆け抜けた72年〜』

(2009.08.28)

皆さん、こんにちは。篠原です。
今回は松屋銀座にて開催されております『追悼 赤塚不二夫展』をご紹介したいと思います。

『ひみつのアッコちゃん かがみの国のおつかいの巻』表紙用カット
1971年5月1日発行(虫プロ商事 ベストコミック増刊号)©フジオ・プロ

赤塚不二夫氏は日本を代表する漫画家であり、その名と作品を知らぬ人はいないでしょう。『天才バカボン』、『おそ松くん』、『ひみつのアッコちゃん』に描かれた個性あふれる魅力的なキャラクタは、その作品を見たことがない人でも知っているはずです。ですから、偉大なる漫画家赤塚不二夫氏が昨年8月に逝去された際には日本中がその悲しみにくれました。今回は、その赤塚不二夫氏を偲んで開催された展覧会です。

『おそ松くん』カラー漫景「ギャハー!!  まんがグランプリ」
『少年サンデー』1968年6月16日 25号掲載 ©フジオ・プロ

展覧会の会場を訪れると、まず会場に飾られている贈呈された花の多さに圧倒されました。赤塚不二夫氏がどれほど多くの人に愛された漫画家であったのかが感じられます。また、会場内に漂う陽気で楽しい雰囲気にあっというまに呑まれました。これほど陽気な空気の漂う展覧会を私は知りません。

写真はクリックで拡大します。

『天才バカボン』「実物大のバカボンなのだ」より。『少年マガジン』1973年6月3日 24号掲載 ©フジオ・プロ
ありし日の赤塚不二夫。撮影/和泉 繁
『天才バカボン』「実物大のバカボンなのだ」より。『少年マガジン』1973年6月3日 24号掲載 ©フジオ・プロ

展覧会では、未発表の「トキワ荘時代の写真」と「原画」や、「デビュー前の作品」が展示されています。さらに、著名人が「シェーッ!」のポーズをとった写真と、有名漫画家が自身のキャラクタに「シェーッ!」をさせた絵が並んでおり、ミニシアターでは新旧のアニメ作品が日替わりで上映されています。キャラクタが描かれたチョコレートやガムの包み紙、ふりかけの袋までありました。まさにファン必見の展示ですが、赤塚不二夫作品を読んだことのない人も充分楽しめる展示構成となっています。

展覧会エントランス。
赤塚ワールドのキャラが溢れる会場。
連日大盛況です。

この展覧会を訪れて最も感じたことは、会場の演出・デザインの秀逸さです。会場全体が、来場者を赤塚不二夫ワールドへ誘う装置として効果的に働いていました。赤や青のライト、壁に埋め込まれている湾曲した鏡、二次元からするりと抜け出したかのようなキャラクタのパネル、そして遠くで聞こえる雑踏の声。会場内には時折「シェーッ!」が響きわたり、思わず笑いました。漫画の原画が多く展示されており、私はそれを全て読んでしまいました。実は赤塚不二夫作品を読んだのはこれが初めてでしたが、本当に面白かったです。何故これほど人気があるのかが納得できたように思います。

思わず長時間見入ってしまった原画も、展示方法は単純に並べられているだけではありませんでした。真っ直ぐ壁に並んでいた額がいつのまにか少しずつ下がりだしたかと思うと、やがてがたがたと斜めに掛けられるようになり、90度回転している原画もありました。そうした少し変わった演出が会場にはたくさんみられましたが、これが赤塚不二夫漫画の持つ雰囲気に見事にマッチングしていたのです。まるで自分が漫画の世界に入り込んだかのような気持ちになったほどです。

みなさんごいっしょに「シェーッ!」

うすた京介 ©スタジオジレッタ
さくらももこ ©さくらプロダクション
ちばてつや ©ちばてつやプロダクション
やなせたかし ©やなせたかし
弘兼憲史 ©弘兼憲史/講談社
高橋留美子 ©高橋留美子
村田雄介 ©村田雄介/集英社
鳥山明 ©BIRD STUDIO
藤子不二雄Ⓐ ©藤子スタジオ
吉田戦車 ©吉田戦車
美水かがみ ©美水かがみ/角川書店
「シェーッ!」の家元みずからも。©フジオ・プロ
『花』。棺桶で花に囲まれる赤塚不二夫。

追悼 赤塚不二夫展
~ギャグで駆け抜けた72年~

開催日:2009年8月26日(水)~9月7日(月)
会場:松屋銀座 8階大催場
時間:10:00〜20:00(入場は閉場の30分前まで、最終日午後5時閉場)
会場:東京・松屋銀座 (約2年間で全国有名百貨店、美術館を巡回予定)
入場料:一般1,000円、高大生700円(税込)、中学生以下無料
問合せ:松屋銀座 03-3567-1211(大代表)
公式HP:http://www.fujio72.com/