from 山形 - 12 - 7夜に渡る山形ビエンナーレの音楽イベントのすべてを紹介。

(2014.08.07)
七尾旅人 in FUKUKOU LIVE
七尾旅人 in FUKUKOU LIVE
 

この秋、山形を舞台に開催される新たなアートの祭典「山形ビエンナーレ」。前回はプログラムディレクターの宮本武典さんに、ビエンナーレの全体像を伺いました。そのユニークなコンセプトには、ビエンナーレに対する期待が大きく膨らみますが、この芸術祭のもうひとつの特徴として、充実した音楽プログラムがあります。今回は山形ビエンナーレ、音楽部門ディレクターの岩井天志さん(映像ディレクター/東北芸術工科大学准教授)に主に音楽部門について伺いました。

 
山形ビエンナーレ、音楽部門インタビュー

石郷岡(以下:石):岩井さんよろしくお願いします。前回は宮本さんに山形ビエンナーレの意義、全体像を伺いましたが、岩井さんにとってのビエンナーレの意義を教えて下さい。

岩井(以下:岩):このビエンナーレの特徴は、山形にある東北芸術工科大学が主催するということにあると思います。開学して今年で23年になりますが、この大学は山形市、山形県をはじめとした、東北という地域に根ざし、そこに暮らす人々と一体となる活動を一貫して行ってきました。これは、実戦的な教育とも繋がりますし、市民や県民と一緒に成長していくという喜びがあります。震災以降、その活動は一層大きく、深くなっていきました。このビエンナーレのプログラムディレクターである宮本さんを中心に、被災地へ学生と市民を乗せたボランティアバスを毎週走らせたり、南相馬の子供たちを招いて毎年ワークショップを行ったりなど、この3年間の活動は本大学のビジョンをより鮮明にするものになったと思います。縁の下の力持ち的な活動といいましょうか、地道に東北を支えてきた三年だったと思います。そして今年。そろそろちょっと一息ついてもいいかなと。この3年間一緒に支えてきた東北の人達と、労い、振り返り、語り合うささやかなお祭りがあってもいいんじゃないかなと。日常を忘れ、アートを通して人々が出会い、笑ったり、驚いたり、涙したりする場をみんなで創っていく、そんな1ヶ月になればいいなと思っています。そして、「また2年後ね!」と挨拶し、それぞれが日々の営みに戻っていく。リフレッシュして明日へとまた一歩踏み出す。私たちやアーティストはその場を用意するだけで、ビエンナーレに来てくれる皆さんが主役です。お祭りってそういうものですよね。

山形ビエンナーレ、音楽部門ディレクターの岩井天志さん(映像ディレクター/東北芸術工科大学准教授)
山形ビエンナーレ、音楽部門ディレクターの岩井天志さん(映像ディレクター/東北芸術工科大学准教授)

:はい、そうですね。お祭り、したいですね(笑)。ではこのビエンナーレに音楽部門を組み入れることになった経緯、音楽部門の目的、そして方向性を教えて下さい。

:先ほど話した震災後の活動で、わたしも微力ながら音楽による復興活動を行ってきました。震災の2ヶ月後、この年の入学式は1ヶ月遅れて5月に行ったのですが、その数日後に大学で『FUKUKOU LIVE』というライブを企画しました。奇跡的にも震災で命を落とした学生は一人もおらず、そのことが嬉しかったのと、終わりのない船出=復興活動への団結式といいますか、学生へエールを送り、気持ちを一つにすることができないかと思ったのです。ライブは七尾旅人さんとDE DE MOUSEさんにお願いしました。その時のライブは本当に素晴しいものでした。音楽の力を改めて実感した一夜になりました。その後も、山形、仙台、東京、南相馬などで行い、その活動がビエンナーレに音楽部門を組み入れるきっかけになったのだと思います。お祭りには音楽は不可欠です(笑)。一日かけて展示やイベントに参加していただいた一日の終わりに『音』を楽しんでいただく夜を7夜用意しています。今回はビエンナーレで行う音楽ライブですから、通常の音楽イベントや音楽フェスとは一線を画すものにしたいと思っています。アートとしての音楽を体験してもらうことは勿論、音楽×映像、音楽×ドローイング、音楽×ダンス、音楽×パフォーマンス、など音を超えたプログラムを構成しています。また、出演者の方達には『東北』や『山形』が感じられるパフォーマンスをお願いしています。『縄文の祭祀』、『山岳信仰』、『洞窟』、『民謡や民話』などをテーマに内容を考えてもらっていますのでビエンナーレでしか観られない特別なライブになると思います。

文翔館議場ホール
文翔館議場ホール

:さてその音楽部門には非常に多才なメンバーが招聘されていますが、アーティストに期待すること、彼らを選択した動機を教えて下さい。

:そうですね。非常に素晴しいメンバーが集まってくれました。このビエンナーレの主旨を理解していただき、場を創ることの出来るアーティストにお願いしました。1年以上かけて、人選を繰り返し行い、妥協をしないキャスティングを心がけました。そして7夜とも全く『色』の違うライブにしたいと思い、プログラムを構成しました。みなさんプロ中のプロですから、わたしの期待など遥かに超えるパフォーマンスをしてくれるのは間違いありません。このビエンナーレに参加することを心待ちにしてくれていますし、それぞれがそれぞれの想いを持って山形に集まり、120%の力を出してくれる方達です。その意味では7夜全部を観てもらいたいなあと思います。交響曲のような、といいますか、7夜観て初めて全貌が解るといいますか(笑)、そんな気持ちでプログラムを組んでいます。

:本当に素晴らしい、豪華なラインアップですね。では出演アーティストを大まかに紹介していただけますか。

:音楽部門招聘アーティストは総勢24名。

第一夜(9/20)はビエンナーレのオープニングの夜に行います。『洞窟の祝祭』をテーマにビエンナーレのアーティスティックディレクターである荒井良二のライブペインティングにテニスコーツのアコースティックライブ、トンチのスティールパンのソロ、川村亘平斎の影絵、山形の音楽家、高取信哉の音響が入れ替わり立ち替わりでセッションを行います。親子や家族連れで観て欲しい幕開けの夜です。

  • テニスコーツ
    テニスコーツ
  • トンチ
    トンチ
  • 川村亘平斎
    川村亘平斎
  • 山形の音楽家、高取信哉
    山形の音楽家、高取信哉

第二夜(9/21)、第三夜は山形ブラジル音楽普及協会のオーガナイズでお贈りする『音に浸る夜』です。第二夜は中島ノブユキのピアノソロと青葉市子のギターソロ。そして2人のセッション。2人とも類い稀な才能の持ち主であり、じっくりと音楽を楽しむ一夜になります。

  • 青葉市子
    青葉市子
  • 中島ノブユキ
    中島ノブユキ

第三夜(9/23)は畠山美由紀&ショーロクラブ。震災以降も東北で様々なライブを行ってきた気仙沼出身のシンガーソングライター、畠山美由紀と卓越した技術の弦楽ユニット、ショーロクラブが山形にブラジルの風を運んでくれます。

  • 畠山美由紀
    畠山美由紀
  • ショーロクラブ
    ショーロクラブ

第四夜(10/11)はライブの本質であるインプロビゼーションで構成する、『アートと音を体感する夜』。自作の楽器を操り、音とは何か?を追求する音のアーティスト、鈴木昭男と世界中で活躍するドローイングアーティスト、鈴木ヒラクが初めて共演します。もう一組は、ノイズ、映画音楽、NHKあまちゃんの音楽からプロジェクトFUKUSHIMAまで、その才能を余すところ無く発揮し続ける音楽家、大友良英と日本を代表する詩人、映像作家である巨人・吉増剛造のセッションを行います。

  • 鈴木昭男
    鈴木昭男
  • 鈴木ヒラク
    鈴木ヒラク
  • 大友良英
    大友良英
  • 吉増剛造
    吉増剛造

第五夜(10/12)は、『縄文の祭祀』をテーマに『音とダンスと映像の夜』。ダンスカンパニー、BABY-Q主宰、振付・演出の東野祥子と音楽・演出のカジワラトシオ、映像の斉藤洋平の3名がビエンナーレの為のオリジナル作品を制作します。ゲストにビエンナーレ出演アーティストでもある山伏の坂本大三郎、BABY-Qのダンサーを迎え、プリミティブな祭りを繰り広げます。もう一組は極めて精度の高いテクニックを持つ天才ドラマー、JIMANICAとスペシャルゲストの共演。スペシャルゲストは誰か? 今は名前を発表できませんが、今からチケットを購入することをお薦めします。

  • 東野祥子
    東野祥子
  • カジワラトシオ
    カジワラトシオ
  • 斉藤洋平
    斉藤洋平
  • JIMANICA
    JIMANICA

第六夜(10/13)は世界的アーティスト、高木正勝のソロライブ『音と映像の夜』。数年振りとなる東北での本格的なライブになります。日々研ぎすまされていく高木正勝の音と映像はわたしたちの細胞が記憶している感覚にダイレクトに響いてきます。

高木正勝
高木正勝

第七夜(10/19)はビエンナーレクロージングライブとなります。『みちの奥の音 〜山形の未来、東北の未来〜』。3年前、震災直後に東北芸術工科大学で行った七尾旅人のライブは観る者の心を一つにしてくれました。ビエンナーレのクロージングは七尾旅人でないと務まらないと思い、再度お願いしました。3年間の様々な想いが思い出されるそんな一夜になると思います。オープニングアクトを務めるのは、七尾旅人にその才能を見いだされた新鋭、佐藤那美。2人のセッションで幕を閉じます。

  • 七尾旅人
    七尾旅人
  • 佐藤那美
    佐藤那美

そして、このアーティストたちと共に音を創りあげる音響/PAはWHITELIGHT SOUNDSYSTEMが担当します。日本屈指のサウンドシステム『田口スピーカー』で構成した純度の高い音をみなさんにお届けします。

:岩井さんのお話からすでに祭りの「熱」が伝わって来ます。私達がお手伝いする部分は、音楽単独ですが、普段はあまり観られないアーティストの共演があります。その他の部分は非常に総合芸術的で刺激的な構成ですね。ワクワクします。では最後に読者にメッセージをいただけますか。

:音楽ライブの会場となる文翔館・議場ホールは大正時代に創られた重要文化施設です。その建築と造型の美しさは一見の価値があります。かつてはここで舞踏会や正装したパーティも行われていたんだろうなあと想いを巡らすのもこのビエンナーレの楽しみの一つです。山形の歴史と時間を記憶しているこの空間で、未来に向けた新しい記憶を創っていけることをとても嬉しく思います。音楽部門は毎夜250名限定のチケット制(各公演3,000円)となっていますのでお早めの購入をお勧めします。

開催まであと1ヶ月とちょっと。お祭りを準備する悦びと興奮は一日一日高まってきています。みなさんとお祭りを体験できることを楽しみにしています。この秋はぜひ山形にいらしてください。スタッフ一同、心よりお待ちしています。

:岩井さん、長時間ありがとうございました。音楽部門に我々もお手伝いをさせていただくことをとても光栄に思います。

山形ビエンナーレ音楽部門のディレクターの岩井天志さんに伺いました。ますますビエンナーレへの期待が膨らみました。さてインタビューの中にあった様に、山形ビエンナーレの期間中の7夜に渡って、素敵なそして興味深いライブパフォーマンスが繰り広げられます。詳細は山形ビエンナーレ音楽部門のページをご覧下さい。またライブ鑑賞を含むオフィシャルツアーも企画されております。こちらは東京発着のバスツアーなので、首都圏の方はぜひチェックをしてみて下さい。

この秋は、山形へ。

● 山形ビエンナーレ音楽部門

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