池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALK顔が見えてくるからおもしろい!
部屋はその人そのものだ。

(2008.06.11)

 以前から、人の住んでいる家にとても興味があった。しかし、なかなか他人の部屋をのぞく機会はないのが現実。せいぜい友人の家に行くくらいだ。その欲求は、『anan』のインテリア特集を眺めることで解消していた(『anan』の特集には、おしゃれに住んでいる人の部屋がたくさん載っているので楽しい!)。

 編集者になってからは、実に多くの人のご自宅や事務所を訪れる機会に恵まれるようになった。打ち合わせで行くだけではなく、実際に取材をすることもある。ふだん、その人が友人にも見せることはないだろうな、と思うプライベートなクローゼット、ベッドルーム、バスルームなどを見せていただくのは、気が引けるけれどおもしろくてたまらない。

 読者だった頃は、インテリアを勉強するために『anan』を見ているつもりだった。岡崎京子さんの漫画の中にも「私、『anan』のお部屋みたいに暮らしたーい!」という女の子のセリフがあったことを覚えている。私ももっと大人になったら、おしゃれで生活感のない部屋で暮らしたい、と考えたものだ。

 ところが、仕事でたくさんの部屋を見て回っているうちに、インテリアそのものに関心があるのではないことがわかってきた。私は、人の暮らしぶりに興味があったのだ。よく、本棚を見るとその人の頭の中がわかる、という言い方をするが、部屋の佇まいは住む人のパーソナリティーととてもリンクしている。そのことに気がついてから、さらに人様のお宅を訪れるのが楽しくて仕方がなくなった。

 最近、西麻布の高級マンスリーマンションを訪れる機会があった。家具付きで、身一つで入居できる。メゾネットタイプの約100平米の部屋は1階にダイニングキッチンとダイニングスペース、2階にベッドルームがあって、賃料は月90万円。昔、憧れた、おしゃれで生活感のない部屋そのものだ。
 しかし、私はこの部屋にまったく心を動かされなかったのだ。なぜならそこには、誰かが生活しているという痕跡が一切なかったから。

 写真家・編集者である都筑響一氏の『TOKYO STYLE』は、東京に住む100 人の若者の小さいごちゃごちゃとした部屋を撮影した写真集だ。1993年の発表時、「誰がこんな普通のアパートの写真を見るだろうか?」と著者は思ったというが、そのリアリティは圧倒的な共感をもって受け入れられた。その意味が、最近、ようやくわかるようになった。

 リアルな人の暮らしがありのままに見える部屋。多くの人がこの写真集を面白いと感じたように、私もまた、人の暮らしぶりが染みついた部屋への興味が増すばかりだ。そして、「これは私のパーソナリティなんだから!」という言い訳をして、今日も私自身の部屋は一向に片付く気配がない。

 さて、いつかあなたのお部屋、見せていただけませんか?

ライフスタイルデザイナーの<a href=\"http://patricejulien.com/\" target=\"_blank\">パトリス・ジュリアン</a>さんのご自宅兼事務所。

ライフスタイルデザイナーのパトリス・ジュリアンさんのご自宅兼事務所。古い一軒家を改装して実に素敵な住まいに仕立ててある。これは、好みでない材質の壁をアンティークのついたてで上手に隠し、間接照明でさらに雰囲気を出したところ。

これもパトリス・ジュリアンさんのキッチンの食器棚。あえて、すべて見せる方法が新鮮。

グラフィックデザイナーのWさんのご自宅。ロンドン在住時によく訪れたギャラリーの階段のデザインが気に入って、どうしても家の中に再現したかったのだそう。

ファッションブランド『hLam』のレディスのデザイナー、グン・ヨハンソンさんのアトリエ。イタリア・ピエモンテ州のビエラという街にある。1950年代の農家を改築したという、緑に囲まれたアトリエは、小さな体育館くらいの広さがあった。うらやましい! ちなみに映っているのは私です。

西麻布の高級賃貸マンスリーマンションのダイニングスペース。確かにおしゃれだけど……。