『第16回文化庁メディア芸術祭』
2月24日まで開催中。

(2013.02.14)

過去最高の応募作品総数
3,503点から厳選した受賞作品。

メディア・アートの祭典『文化庁メディア芸術祭』が国立新美術館で開催中です。

『文化庁メディア芸術祭』は、新しい表現形態であるメディア芸術について、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰し、鑑賞機会を設けるというものです。

メディア芸術(メディアアート)というととかく技術の革新性が問われる作品と思われがちですが、ウェブ、紙媒体、映像、パフォーマンスと、バラエティに富んだ表現形態で知的好奇心を刺激する新しさ、豊かなメッセージ性、深い内容持った作品が集結する、他に類を見ない芸術祭になっています。

今回の応募作品総数は3,503作品、昨年度の1.3倍、1997年のスタート以来過去最高数となりました。アート部門はインタラクティブアート、メディアインスタレーションなど計1,802 作品、エンターテインメント部門はゲーム、映像作品、ガジェット、ウェブなど741 作品。アニメーション部門は劇場用、短編、テレビなどのアニメで502作品、マンガ部門は458作品の応募がありました。そのうち海外からは過去最高の71ヶ国から1,502作品がエントリー。年を重ねるごとに海外からの応募が増えているといいます。

今年は作品ひとつひとつに大きくスペースをとるなど、より見やすい展示となっています。

アート部門

大賞はスイスのCod.Act (Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD) によるミュージックパフォーマンス『Pendulum Choir』。9人のアカペラ・シンガーと18の油圧ジャッキからなるオリジナル合唱作品。シンガーたちは直立の体をマシンで制御されながら歌う。新人賞はイタリアのAuayola メディアインスタレーション『Strata #4』など。ルーベンス、ファン=ダイクの教会絵画における構図、色彩の規則性を研究、立体3Dに置き換え、巨大ディスプレイで表示したもので古典作品と最新テクノロジーの融合がエキサイティング。新人賞は韓国 YANG Wonbinによるメディアインスタレーション『Species series』ほか。ファストフード店のドリンク容器、壊れた折たたみ傘、まるめた新聞片……など、一見するとゴミ箱行きの物体のように見えるが実はひとりで動けるロボットであるという『Species series』は、なぜかせつないポエジーを感じさせる作品。審査委員会推薦作品は間部令子・ベンフィ杏里沙・新井貴の東日本大震災チャリティー音楽配信ウェブ『ヒバリ~震災義援音楽配信プロジェクト~』、佐野友紀『ほんの一片』ほか。『ほんの一片』は大震災によって生まれた瓦礫を等身大の写真に撮って油彩したもの。胸に迫る現実感がある。


左・アート部門 大賞 のCod.Act (Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD) cCod.Act『Pendulum Choir』の設計説明。右・新人賞 イタリアのAuayola によるメディアインスタレーション『Strata #4』ルーベンス、ファン・ダイクの教会絵画の構図、色彩の規則性を研究、立体3Dに置き換える。

左・YANG Wonbinによるメディアインスタレーション『Species series』右・審査委員会推薦作品 古屋和臣『My Sputnik』。衛星と同じ視点で作者自身の家族を撮影。
エンターテインメント部門

大賞は真鍋 大度・MIKIKO・中田 ヤスタカ・堀井 哲史・木村 浩康らの『Perfume “Global Site Project”』テクノ・ポップグループ『Perfume』の世界デビュー記念プロジェクトでウェブ、ソースコード、パフォーマンスまで包括する大計画となっています。オフィシャルサイト立ち上げ後、サイト上でオリジナル楽曲と振付のモーションキャプチャーデータをフリーで配布、ソーシャルコーディングサービス GitHub上にはデータを使用するための機能拡張やサンプルコードを用意、プログラマーによる二次創作を推奨しました。これにより世界各国500以上のプロジェクトが生まれるというインタラクティブにファンもクリエーターも楽しめる作品となりました。新人賞は、IDPWによる『どうでもいいね!』ほか。『どうでもいいね!』はウェブブラウザ『Chrome』の機能拡張で、SNSサービスFacebookの「いいね!」ボタンを一度でまとめて全部クリックできるというものです。「いいね!」ボタンクリック数を競い合う昨今の風潮を一考させる批評性に溢れた作品です。

新人賞はミュージシャン 永野亮『はじめよう』のミュージック・ビデオほか。新井風愉による『はじめよう』は、モデルの体の上部と下部を別々に撮影してつなげ、独特の浮遊感を作り出しているシンプルで不思議感な映像。審査委員会推薦作品は宇田道信による新しい楽器『ウダー』など。『ウダー』は円柱に螺旋状に巻かれたロープを押すと音が鳴る未来的なのかアナログなのかわからないインターフェースを持つユニークな作品となっています。


左・エンターテインメント部門大賞は真鍋 大度・MIKIKO・中田 ヤスタカ・堀井 哲史・木村 浩康らの『Perfume “Global Site Project”』 右・新人賞ウェブ作品 IDPWの『どうでもいいね!』。

右・新人賞 ミュージシャン 永野亮『はじめよう』のミュージック・ビデオ。新井風愉による。体の上部と下部を別々に撮影してつなげ、独特の浮遊感を作り出している。

アニメーション部門

大賞は大友 克洋の短編アニメ『火要鎮』 。振袖火事と呼ばれた『八百屋お七』『明暦の大火』を題材に作られた浮世絵絵巻のように美しい作品。優秀賞はジョージ秋山、さとうけいいちの劇場アニメ『アシュラ』。水彩画を動かすことをテーマにSDとCGIを融合、かつてない深みのある画面を創りだしている。そのほか柔らかでみずみずしい人物、自然風景の表現が美しい劇場アニメ、細田守による『おおかみこどもの雨と雪』など。新人賞はテレビアニメモンキー・パンチ、山本沙代『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』ほか。『ルパン三世』原作に忠実なキャラクター造形、斬新な物語構成が話題を呼んだ作品です。


左・大賞受賞作 大友 克洋『火要鎮』 cSHORT PEACE COMMITTEE  右・新人賞 モンキー・パンチ、山本沙代『LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜』
マンガ部門

大賞ははじめてフランス語圏作家が受賞。ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンのバンド・デジネ(ベルギー・フランスなどフランス語圏の漫画)『闇の国々』。芸術的な洞察に富んだストーリー展開と、1ページに1週間かけるという緻密な絵で描く現実世界と紙一重の異次元のお話。審査委員会推薦作は作者自身が監督、映画化されて話題を呼んだマルジャン・サトラピ『鶏のプラム煮』など。
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左・マンガ部門 大賞作品『闇の国々』 より。ブノワ・ペータース フランソワ・スクイテン 訳:古永 真一、原 正人©2008, 2009, 2010 Casterman, Bruxelles All rights reserved. 右・ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテン。

パフォーマンス作品やアニメ作品の上映は、サテライト会場の東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックスでも行われます。シネマート六本木にはマンガ部門のすべての作品を閲覧できるマンガライブラリーも開設。期間中には受賞者によるプレゼンテーション、シンポジウムなども多数開催されます。詳しくは公式ホームページでスケジュールをチェックして。

『第16回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』

会期:2013年2月13日(水)~2月24日(日)
入場料:無料
メイン会場:国立新美術館
所在地:東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
休館日:2013年2月19日(火)

サテライト会場
・シネマート六本木 東京都港区六本木3-8-15
・東京ミッドタウン 東京都港区赤坂9-7-1
・スーパー・デラックス 東京都港区西麻布3-1-25 B1F

会場詳細:http://j-mediaarts.jp/venues?locale=ja
主催文化庁メディア芸術祭実行委員会
協力シネマート六本木、東京ミッドタウン、スーパー・デラックス