リブロ・トリニティ – 14 - 『おいしい札幌出張 45の美味案内』小西 由稀著

(2010.01.08)
~著者+編集者+書店スタッフ、著者+書店販売員+読者……3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

小西 由稀 著

『おいしい札幌出張 45の美味案内 』

藤原和博 著
『おいしい札幌出張 45の美味案内』


■ 著者より

小西 由稀(こにし・ゆき)

札幌在住のフード系ライター

1968年、北海道の寿司屋の娘に生まれる。休みらしい休みを取らない働き者の両親を持ったため、家族全員の楽しみは旅行ではなく、おいしいものを食べること。エンゲル係数の高い家庭で育つ。
現在は北海道の食の現場を取材し、さまざまな媒体で情報を発信。ある時は畑に出かけ、またある時は漁船にも乗り込む。また別な日はレストランの厨房へ。料理や料理人だけではなく、産地や生産者、加工業者など、広く深く食の分野に関わることができるのが、北海道の面白さ。またその連携も北海道の魅力。読売新聞北海道版などに連載中。北海道フードマイスター。
北海道のおいしい時間

お店の温度や匂いまで感じられる札幌の食案内。

札幌という街は、人気の旅先であり、需要の多い出張先でもある。
昭和的な言い方をすれば、東京~札幌間は超ドル箱路線。経済が今ひとつ元気のない現在も、その位置づけは変わらない。

旅行客も出張者も、札幌で楽しみにしているのは、やはり食。
北海道中の海の幸、大地の幸が集まる札幌は、鮮度に頼ったお店ばかりではなく、そこを生かし、さらにおいしく楽しませる飲食店が多い。
特にフレンチやイタリアンは、同様のレベルであれば、他都市より札幌のほうが安く楽しめ、それだけに満足度が高い。
最近ではお目当ての食材、例えばホワイトアスパラ、ミルクラムの時季に合わせ、わざわざ来札し、料理を楽しむ人が増えている。

それだけ多くの人が食に期待を寄せ、訪れる札幌だが、食に特化した読み物は意外に少ない。
札幌の食の世界をより深く楽しめるよう、45軒のお店をエッセイ風に紹介したガイド本が本書である。
書きたかったのは、料理の話はもちろん、お店に流れる時間や店主の人柄、食材や産地の話、そのお店が立つ街角の雰囲気や歴史も…。ザ・ガイドブックではなく、札幌という街、そして旨しお店の温度や匂いまで感じられる読み物を目指した。

また本書は出張、それも出張の頻度に合わせ、お勧めするお店を選んでいるのが、新しい切り口。
はじめての人だとやはり魚介三昧、3度目ともなると、地元で評判のお店に挑戦したい頃。付き合いの後にひとりでふらり寄れるお店も知りたいだろう(と思う)。それぞれの立場で、求めるお店は違うものだ。
数ある札幌の飲食店の中から、出張者のニーズ、テンションに沿った「これぞ!」という45軒を、長年、北海道の食に携わってきた著者の目線でセレクトし、案内している。

札幌出張、あるいは旅行の予定がある方はもちろん、地元・札幌や北海道の方にも手に取っていただけると嬉しい。札幌の街を食べ歩く感覚で、ぜひご覧ください。

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■書店スタッフより

ジュンク堂書店 新宿店 旅行書担当大溝 誠(おおみぞ・まこと)

当店は、新宿という立地柄、幅広い年齢層のお客様が多いです。
こうしたお客様のご要望にお応えして旅行ガイドコーナーでは様々な旅の目的に合わせた商品を取り揃えています。

食と出張の美味しい関係。

出張での楽しみといえばやはり食事、そう考える方も多いのではないだろうか。
それも食材の宝庫、北海道は札幌への出張ともなればなおさら。
出張であってもテンションは上がろうというもの。

『しかし、時間の限られた出張中に札幌で何を食べるのか?』

そんな時にこの「おいしい札幌出張」はぜひ読んで頂きたい一冊。
初めての札幌、何度目かの札幌、日帰りの札幌、月イチの札幌、更には、つきあい後の一人呑みのお店や馴染みになりたいお店など、シーン別に45軒のお店が紹介されている。
グルメガイド本といえば料理と店のデータに終始しているものが多い中、こういった提案の仕方はとても興味深いしなんといっても実用的。慣れない土地を歩くにはこういった案内が心強かったりする。
札幌在住フードライター・小西さんのこだわりと地元愛に溢れた文章、札幌出身の写真家・岩浪さんの胃袋と想像力を刺激する写真で読み物としても充分楽しめる。

札幌といえば海鮮・ラーメン・スープカレーなどのイメージが強いが、道産食材を贅沢に使ったイタリアンやフレンチや郷土料理を食さずに出張を終えるのは勿体無いと思わせるこの一冊。

『さぁ、次の札幌出張は何食べる?』

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■編集者より

エイチエス株式会社斉藤 隆幸(さいとう・たかゆき)

北海道出身。
「まだ見つかっていない価値観」「まだ流通されていないモノ・ヒト・斬り口」を、独自の視点で表現することを主眼としています。
夕張医療センターの村上医師を描写した「村上スキーム」、事業再生を中小企業経営者視線の距離感で表現した「ひとりぼっちの社長のための事業再生」、札幌のシェフたちのインタビュー本「シェフズ・ノート」など。現在、おいしい札幌出張45軒をラリー中。

心の動きを中心に組み立てられた札幌の本。

本書は単なるグルメガイドではなくて、美味しいものの奥行きを表現する読み物を目指した。奥行きとは、素材や産地だけでなく、つくる人の個性や料理観、客層が織りなす時間の移ろいや街の匂いなどを、お店や食べ物と融合させることである。そうすると出張の肴は、仕事の語りと美味しいものの蘊蓄という、絶妙のコンビネーションになっているはずだ。料理の味付けにも似た繊細な文章タッチを、著者は主張し過ぎず表現したと思う。
また読者がお店に行く時の行動心理を汲み取ることに注力をした。
たとえば、カバーをやめてがんだれ製本にしたのは、「栞」としての機能を求めたことである。表紙裏に地図を掲載することで、地図を見ながらの行動を想定している。また本文内での地図は、単なるマップにとどまらず、近隣の目印と歩く方角を文字表現することで、土地勘のない人でも歩けるようにした。
さらに本文の章立ては、はじめての札幌出張、3回目の札幌出張など時間軸とその心の動きを中心に組み立てられた。できれば、読者自身が本書を能動的に応用して欲しいと思う。
たとえば、
契約締結の夜に祝杯をあげる札幌出張
クレーム処理も片付けた安堵の札幌出張
遠距離恋愛に隠れた札幌出張
などなど。ぜひ札幌にいらしてほしい。そしておいしい出張を味わってほしい。

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