深瀬鋭一郎のあーとdeロハス 『コネクト・ウィズ・エブリシング』オーストラリア現代美術館で、宮島達男 最大の回顧展が開催中!
(2016.12.23)ウェブダカーポ (WEB dacapo)『深瀬鋭一郎のあーとDEロハス』も今回が第44回。最後の執筆となります。読者の皆様には、2008年から8年余りご愛読いただき、誠にありがとうございました。これほど長い連載は、他誌も含めて初めての経験で、編集担当の皆様にも大変お世話になりました。執筆を通じ色々な気づきがあり、筆者にとっても大変有意義な時間でした。
さて、2016年11月3日から2017年3月5日まで、オーストラリア現代美術館(Museum of Contemporary Art Australia
筆者が代表を務める深瀬記念視覚芸術保存基金が東京都現代美術館へ寄託している宮島達男作品『Life Face Vol.3』20点も展覧会に貸し出されて、展示されています。筆者もクリスマスから新年にかけてオーストラリアのシドニーに滞在し、12月27日の午前中あたりに観覧する予定です。館内で見かけたら、声をかけてくださいね。
■展覧会情報
題名:Tatsuo Miyajima – Connect with Everything
会場:Museum of Contemporary Art Australia
日時:開催中~2017年3月5日(日)10AM~5PM(木曜のみ9PMまで)
住所:140 George Street, The Rocks NSW 2000, Australia
料金:大人$22、コンセッション$17、12~18歳$12、家族(大人2人+子ども3人)$56、11歳以下無料
電話: (02)9245-2400
公式ウェブサイト
宮島達男の作品は「それは変わりつづける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」(Keep Changing, Connect with Everything, Continue Forever)という3つのコンセプトに基づき、LEDやデジタル・カウンターなどを使用した作品で仏教的な死生観などを表現したものです。
覧会のプレスリリース等では、こうした説明がなされることが多いのですが、今回、現代美術に全然興味もない何人かに「なぜこんな時期にシドニーに行くの?」と問い詰められ、筆者は「貸出した収蔵作品が展示されている」とか「作家と20年来の付き合いがある」などと説明しながら、「宮島達男作品をもっと簡単に説明するとどうなるのか」と考えました。「どんな作品を貸し出しているの?」とか「どんな作品を作る人なの?」という質問に対して、写真を見せながら筆者が説明したのは、以下のような内容です。
宮島達男が作品に用いる個々のカウンター・ガジェットやデジタル・カウンター数字は、生きる時を刻む、または死に向かってカウントダウンする、ひとりひとり人間の暗喩(メタファー)なのです。今回の回顧展で展示されているハイライトのひとつが、『Time Train to the Holocaust』(2008)が、『Counter Coal』(2008)の外周を走る作品ですが、ここでカウンター・ガジェットは、列車に乗っている人々や鉱山で働く人々のメタファーとなっています。生きるために働く人々の周りを、死(ホロコースト)に向かう人々が乗る列車が走っていく対比となっているのです。
宮島達男は1986年に東京芸術大学大学院修士課程を修了し、本格的な古典活動を始めましたが、初期の個展『来るべき未来のエス』秋山画廊(1986年)などで、宮島達男は、精神分析学上の概念である人間の本能エネルギーが詰まった超自我(Es)を表すものとして、発光ダイオードを用いました。これを原点として、今日に至るまで30年間、カウンター・ガジェットは宮島達男作品の主要な表現手段として用いられ続けています。
今回の回顧展を企画したオーストラリア現代美術館のチーフ・キュレーター、レイチェル・ケント女史が19年前にヘイワード・ギャラリー(ロンドン)での宮島達男個展『ビッグ・タイム』(1997年)を観覧し、「いつか宮島展を」と思っていたことが今回の回顧展に繋がったとのこと。以前、宮島達男アトリエで作家と深瀬記念視覚芸術保存基金の収蔵作品(約100点)検討の相談をしているときに、ヘイワード・ギャラリーから展覧会出品のオファーの電話がきた偶然もあって、今回の回顧展は、実は筆者にとっても、因縁浅からぬものとなっています。
これだけ良く企画された大規模な回顧展ですから、日本やイギリスも含め、オーストラリア以外の国々に巡回できれば、多くの人が観覧できて良いと思います。関係諸機関に是非ご検討いただきたいところです。では、読者の皆様、長らくお付き合いありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!