Shibuya Tourbillon 〜4〜 ピエール・バルー来日公演、オフ・ニブロール ……何が原点で何が進歩なの?
それぞれの人間と詩と遊び。

(2013.05.22)

311後のアートを考えるギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』。音楽、ダンス、演劇、トーク……さまざまなジャンルのイベントで常に新しいカルチャーを発信するライブハウス『サラヴァ東京』。渋谷から文化の旋風を巻き起こしたいと考える両店のオーナー アツコ・バルーさんのコラム『Shibuya Tourbillon(シブヤ・トゥルビヨン)』。今回はビエール・バルー ライブ、開催中の『off-Nibroll (オフ・ニブロール)展』などなど! 

ピエール・バルー『サラヴァ東京』にて
1年ぶりのライブ。

ピエール・バルー来日公演@サラヴァ東京。それにしても、この幸せ感ってなんだろう? もう今年79歳、昔の甘美な声は出なくなったし、端正な姿もない。あえて練習やリハーサルを拒否するものだから、音程をはずすわ歌の出だしは間違える。舞台そでに控えている私はそれだけでハラハラものだが、そんなことを優に乗り越える圧倒的な存在感がある。毎日ライブハウスで聞いていてミュージシャンがとちると内心不愉快。「もっと練習してから出てほしいよね」と思う。でも彼を見ていると関係ない。どうして? 練習じゃないならどうすればよいステージができるの?


ピエール・バルー来日公演より。©2013 by Peter Brune

バルーのステージは人の心を温める。詩人だから? しかし鍵は彼の生き方にあるのかもしれない。定住せずにテーブルについて食事をすることもない。一足の靴を穴があくまで履き、旅の荷物は歯ブラシ一本というスタイルで今でもやっている。「自分に正直に。」をここまで徹底している人を知らない。そんな稀有な生き方、彼は作品のみならず人生丸ごと詩なのだ。自分がほかの人と違うのはそこ。それを感じてもらうために作為をすべてそぎ落とすのであろう。これは免許皆伝の術である。


ゲストに小野リサを迎えた。2013年5月10日『サラヴァ東京にて』©2013 by Peter Brune
『アツコバルー arts drinks talk』では
『off-Nibroll 展』開催中。

振付家・矢内原美邦を中心に映像作家、音楽家、美術作家とともに国際的に舞台作品を発表するダンス・カンパニー『Nibroll(ニブロール)』 からスピンアウトした高橋啓祐と矢内原によるユニット『off-Nibroll(オフ・ニブロール)』。その映像+ダンス+リーディングのイベントが『アツコバルー』で開催中。

崩れていくビル。落ちてゆく人間、火を噴く建物。オオカミの群れが走り回る大通り。黒い塊は増殖してまるで放射能汚染が広がるのを可視化したようだ。グリーンと黄色のしゃれたテキスタイルデザインみたいな画面に映るのはそんな破滅の動画。その前ではダンサーが踊り俳優たちは町の風景を語る。様々な高さの足台に上り降り「高さが違うと見える風景が変わる、」と言い続ける俳優たち。リーディングの開かれた本に町の風景が映り、町の風景に彼らの影が映る。俳優の黒い服にきれいな緑と黄色の街が破滅していくのが見える。

震災前に作られた映像だというが、平穏な街に何が起こるかわからない。という想像が今や本物になってしまったことを悲しく思う。一方、壊れた生活、壊れた街でまさに立ち位置が違うと新しい風景が見えてる。ってことを体験した私たち。どんな風景なの? 描いてみましょうよ。ある意味、私たち来るべき世界でもう歩きはじめたのですから。

『off-Nibroll (オフ・ニブロール)展』
会期:2013年5月15日(水)~26日(日)
会場:『アツコバルー arts drinks talk』
展示期間中のパフォーマンス公演 5 / 18(土)、24(金)、25(土)、19:00

スズカツさんが女性のセリフを書く。
新作、『シスターズ』

5月24日『サラヴァ東京』では、定期公演となった気鋭の演出家「スズカツ」こと鈴木勝秀の公演が。スズカツさんいわく「僕はこれまで基本的に自分の中にいるスズカツAとスズカツBの会話を書いてきた。それでZAZOUS THEATER時代から、男芝居ばかりを書いてきたわけである。女性しか登場しない本を書いたのは、1990年に自転車キンクリートのために書いた『ミュート』1本。そのとき役者(!)だった鈴木裕美に、あるセリフを「女はこんなこと言わない」と言われたのがトラウマになったのか?んなわけない。単に僕に女芝居をオファーするような奇特な方がいなかったということだ。

宇宙のすべてが一人の人間の中にあるなら、当然、僕の中にも”女”がいる。それも複数いるはずである。どんなやつらなんだろう?しばらく部屋に籠って話を聞いてみるか──というわけで、今回は「自分の中の”女”と向き合う」という企画なのである。もっとも現在の自分の考えを書けば、あとは英介さんと千葉さんが僕の中の”女”を見せてくださるはず、と相変わらず他力本願な気持ちではいる。」

坂東玉三郎は「どんな女性をモデルにして演じているのですか?」という質問に「自分の中にいる女性を出そうとしている」と答えたという。男目線で男に都合のいい女の話にワタシ心底うんざりしています。ゲイ以外の男性によって女性の真実が描かれたのをまだ見たことないです。スズカツさん、期待してます。

『鈴木勝秀(suzukatz.)-130524/シスターズ』 
日時:2013年5月24日 (金) 開場 19:00 、開演 19:30 start 
会場:『サラヴァ東京』
料金:2,500円(1ドリンク 付)
出演:篠井英介、千葉雅子
予約:サラヴァ東京HP 予約フォーム、または 電話03-6427-8886

セミトラ(半透明)を透明にする試み、
セミトラ「SOC.HOP(ソック.ホップ)」展

そして月末5/31〜の『アツコバルー』の展示は、広告、デザイン、メディアアートなどの領域を越えて活躍する『Semitransparent Design(セミトラ)』によるもの。10周年を迎えたセミトラが、初めて個人名での作品を披露します!

□柴田祐介「アップロードとダウンロードの境目」

日記の投稿閲覧により生じるパケットのアップロードとダウンロードのデータ的な境界を展覧会会場に設置し、そこだけで見られる個人の私的な日記を閲覧するという行為を通して見に来た人自身が「アノニマスな存在」であることを認識するような作品になれば面白いなぁと思います。



□高津直孝「言葉 / 解像度。」

日々、様々なかたちで私たちをとりまく言葉は
どのように人に届いているのか、あるいは届いていないのか。
自分の手を離れていった言葉はどのように映るのか、扱われるのか。
それらの考察をもとにした言葉の解像度/整合性などをめぐる作品。



□柏木恵美子「o.m.f.m. op.01」

(なるべく)自分のことは自分でまかなっていく o.m.f.m.シリーズ。
見られるための光が足りなくなると、導電インクで描かれたグラフィックを介し、自らに明かりを灯すポスター。その光はけっして十分なものではないかもしれないけれど、(なるべく)自分のことは自分で。プロトタイプを展示します。

□有本誠司「Tシャツの原板」
ARMY、NAVY、gotham city、カレッジ、photo、velvet underground など

まだまだほかにもでてきそう……ただいま準備中。かなりぶっとんだ面白い展示になりそうです。

『セミトラ「SOC.HOP(ソック.ホップ))」展』
会期:2013年5月29日(水)〜 6月9日(日) 
会場:『アツコバルー arts drinks talk』
オープニング・レセプション:5月31日(金)19:00 ~21:00
プロム・パーティ(出展者トーク):6月1日(土)15:00 〜 18:00 

『アツコバルー arts drinks talk』
TEL:03-6427-8048
所在地:東京都渋谷区松濤1-29-1 渋谷クロスロードビル 5F
営業時間:14:00〜23:00 
休館日:月、火
入場料:1ドリンク (500円)

『SARAVAH 東京』
TEL. 03-6427-8886
所在地:東京都渋谷区松濤1丁目29-1 渋谷クロスロードビル B1