リブロ・トリニティ – 22 - 「日本で2番目に高い山」はなぜ話題にならないのか? ヒットを生み出す18の「バズの法則」杉本 和隆 著

(2010.10.06)
~著者+編集者+書店スタッフ3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

杉本 和隆 著

「日本で2番目に高い山」はなぜ話題にならないのか? ヒットを生み出す18の「バズの法則」

「日本で2番目に高い山」はなぜ話題にならないのか? ヒットを生み出す18の「バズの法則」杉本 和隆 著 1,365円(税込み)


■ 著者より

杉本 和隆 (すぎもと・かずたか)

(株)トライポッド代表パブリシスト

1997年、格闘技イベント『PRIDE』に創立メンバーとして参加。広報・マーチャンダイジングを担当する。
2007年に株式会社トライポッドを設立し、スポーツやエンターテインメント企業、ベンチャー・中小企業のマーケティングPR活動をサポート。Yahoo!トップニュースやスポーツ新聞裏一面ニュースなどマスコミとクチコミの話題をつくり出すバズPRを展開している。

PR・バズという一見難しそうに感じる内容をどのように読みやすく。

本を出版してみたいと思うようになったきっかけは、数年前からPR・広報のセミナーをやるようになって、自分が知っている話題づくりのノウハウを面白がって聞いてくれる人がいることに気が付いたからです。

とはいっても初めてのことですので、まずは周りの人で出版関係者がいないか聞いてみたり、ツイッターで書籍関係者をフォローするといった地道なことをしていました。ある日、ツイッターでフォロー返しがあった人に出版を希望していることを伝えた結果、「ご相談、いつでもご遠慮なくどうぞ」と返信してくれたのです。

協力をしてくれる方が現れてからはあっという間で、出版企画書を送ってから約2週間ぐらいで出版することが決まりました。それも大手出版社のマガジンハウスでしたから、「ホント?」という感じでとてもうれしかったことを覚えています。目標を持って情報発信していくことが大切だということを痛感しました。

実際に本を執筆することになってから考えたことは、PR・バズという一見難しそうに感じる内容をどのように読みやすくするかということでした。セミナー参加者と話をすると、「PRってなに?」「話題をつくるってどういうこと?」という方が多く、いろいろなビジネスで役に立つものなのに一般的にはまだ浸透していないと感じていたからです。PR、バズの本というと専門用語や図解を多用した難しい本が多いのですが、この本では「ソフトバンクのお父さんはなぜ犬なのか?」「パリス・ヒルトンはなぜ非常識なのか?」といったみなさんご存じの身近な実例を使うなど、宣伝業界の人ではなくても気軽に楽しんで読めるように工夫しました。

ですが、書き初めはどうしても日頃から使っている専門的な表現を使ってしまい、編集者に指摘をしてもらいながら何度も書き直したり、難しい文章は削除したりして、読みやすくするのに苦労しました。原稿が書き終わったころには約4キロぐらい体重が痩せていたのには自分でもビックリです。この本がきっかけでもっと多くの人に話題のつくり方やPR・広報というものに触れてもらえればと思っています。

また実際に「どうしたらビジネスが話題になるのか?」と真剣に考えている人々にも手に取ってもらいたいです。この本で紹介している18の「バズの法則」は話題づくりでもっとも重要な〝アイデア〟を浮かびやすくまとめていますので、きっと役に立つと思います。そして、ヤフーや新聞、テレビなどで話題のニュースとして紹介されたり、あるいはブログやツイッターなどで自分のビジネスが話題になったりすることは何ともうれしいものなのです。そんな楽しさをあなたにも体験してもらいたいと思っています。

八重洲ブックセンターのフェアの様子。

このページの先頭へ ▲

■書店スタッフより

八重洲ブックセンター本店2階佐藤 公紀(さとう・こうき)

書店暦19年、ビジネス書1年半。良いと思った本を工夫して展示して、それが予想以上に売れたとき、仕事に醍醐味を感じます。好きな本のジャンル日本の大衆文学ビジネス書。好きな作家・作品橋本治、「桃尻娘シリーズ」、村上春樹『羊をめぐる冒険』、宮部みゆき『模倣犯』。趣味は多重録音、ボーリング。

話題を待つのではなく、仕掛けるのだと気付かされた。

ビジネス書担当者から、「面白いタイトルの本が出たよ」と言われて、手にしたのが本書との出会いです。日本で2番目に高い山……、「聞いたことあるような、無いような」、「知ってなきゃおかしいのに知らない」という事実に、まず愕然としました。しかも、まわりで答えられる人が1人もいない。私の知り合いがみんな低レベルなのか、知らなくても仕方が無い理由があるのか、それが知りたくて読み始めました。

読めば、なるほどと、思うことばかりで、一気に読み終えました。さすが、あの「プライド」を立ち上げたメンバーの1人だけあって、説得力が違います。

この本には、良いものをつくった人が、それを社会に広めるためのノウハウ(=「バズの法則」)が書かれています。

せっかく良いものを作っても、売れなければ、それは社会的損失になります。本書が書かれた動機はそこにあると思います。読み進めていくうちに、30年くらい前のインタビュー記事を思い出しました。ブレークしたばかりのRCサクセションの忌野清志郎さんの記事です。「俺たちはいい曲を作っている。売れなければレコード会社のせいだ」といった内容だったと記憶しています。

当時は、私はRCサクセションを「不良でかっこいい」イメージで見ていたので、「また悪いこと言って」といった程度の感想しか持ちませんでした。しかし今考えてみると、あの「スローバラード」をはじめ、名曲が次々と廃盤になった後の再ブレークだったからこそ、あのような投げやりとも取れる発言をしたのではないかと、ふと思い出しました。

コンテンツを売るためにメーカーがすべきことのひとつは、話題になるのを待つのではなく、積極的に仕掛けて話題にすることだと気付かされました。

良いものを作ったら、是非この本を参考にして、大きなバズを起こして下さい。
(2番目に高い山の答えは「はじめに」にあります。)

このページの先頭へ ▲

■編集者より

マガジンハウス 書籍部北原 徹(きたはら・とおる)

ファッションディレクター、そしてファッションカメラマンと八面六臂の活躍する手書き原稿と、ネガプリントをこよなく愛する着倒れバカ一代上級者。『anan』『POPEYE』編集部を経て書籍部へ。

魅力づくりの方法があり、それを話題にするまで持ち上げる、演出の法則がある。

水が冷たかった。
夏なのに、その公園のトイレの手洗いの蛇口をひねって出てきた水はあまりに冷たかった。
公園の出口に「昭島市は、都内で“唯一”ミネラルウォーターが飲める」というような(つまりぼくのうろ覚えなのだけれど)張り紙があった。

この水は羨ましいなあ、と思った。
地下70メートルからくみ上げる水が、毎日水道から出てくるなんて!この街はペットボトルを買う必要がないじゃないか!
“魅力”というのは、意外と単純なものである。昭島市にほとんど興味を持っていなかったぼくが「都内で唯一ミネラルウォーターの飲める“市”」なのだと聞いた途端、俄然「いいかも!」となってしまうくらい単純であり、単純な魅力ほど強く残る。
水はその街の環境を語る。
もちろん、昭島市は環境のいい街なのだろう。だけれど、この街の“いい部分”を紹介するのに“環境の整ったすばらしい街”と謳われていたら、ぼくは昭島市に興味を持っただろうか?
「都内で唯一」

この言葉には、自信が見え隠れする。東京で1番おいしい水が飲める街なのだと。
ミネラルウォーターが蛇口から飛び出てくる街、昭島市。
ミネラルウォーターの風呂に入れる街、昭島市。
ミネラルウォーターで顔も洗える街、昭島市。
街のスナックも“ミネラル”いらずである。
人であれ、モノであれ、企業であれ、魅力を伝えることは大切である。そこにはまず、“魅力さがし”がある。
人に言っても恥ずかしくない。それどころか胸を張って言える部分をより具体的に、より説得力を持つように演出する。
持っている“魅力”が人に伝われば、今、ぼくが原稿用紙に向かってしていることをするのではないだろうか?(ちなみに原稿用紙に書いています。)
つまり、“話題”にするのだ。

極端な話かもしれないが、この原稿を読んで、昭島市の土地購入を決める人がいるかもしれない。
知らなかったコトを知って、人の中に衝動が走ることはよくあることだ。
買おうかな……買うのやめようかな……、と思っている人に、ダメ押しのひとことが耳から入る。
「都内で唯一、水道がミネラルウォーター」なのだと。レアな土地に住む特別感。それはまるでヴィンテージの501で作られた家に住むような感覚(どんな感覚だ!?)。
つまり、「話題」には、モノを「売る」力がある、ということなのだ。
『「日本で2番目に高い山」はなぜ話題にならないのか?』の中には、魅力づくりの方法があり、それを話題にするまで持ち上げる、演出の法則がある。「話題」という“パワー”がモノを売る瞬間を知っている筆者だけが語れるエッセンスがこの本に詰まっているのだ。

原稿はクリックで拡大します。

このページの先頭へ ▲