女性のための、元気になれる俳句64 選・如月美樹 肌寒と言葉交せばこと足りぬ 星野立子

(2009.10.26)
 

いきなり寒くなった。私の周囲には体調を崩す人が多いけれど、みなさんはいかがだろうか。掲句、知人か、道ですれ違った人か、あるいは家人か。「肌寒くなりましたねえ」「ええ、本当に」と挨拶を交わしている情景。それだけで気持ちが通じ合うのだ、という。

「肌寒」という季語は、今のような時期のぞくっとする寒気を体感的にいう言葉で、実感がこもっている。思えば日本には、季節や天候を表す言葉が数多くあって、それがあいさつになるという美しい習慣がある。何と言葉をかけていいかわからないなら、「肌寒くなりましたね」と、ひとこと、言ってみるといいんじゃないか、と思う。それはコミュニケーションという大げさなものではなく、“ふれ合い”だ。作者生没年1903〜1984。