大幅ボリュームアップして徳島県立近代美術館にて開催。『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』

(2010.04.27)

雑誌『平凡パンチ』や『アンアン』『ブルータス』などの先進的なアートディレクターとして、また、『くろうまブランキー』や『ぐるんぱのようちえん』『たろう』シリーズをはじめとする人気絵本作家として多彩な創作活動を繰り広げた堀内誠一(1932~87年)。さらに彼は世界各地を旅し、多くのイラストや絵手紙を残した「旅行家」でもありました。

本展では、「デザイン」「絵本」「旅」の三つの側面に焦点を当て、堀内誠一の生涯にわたる活動の変遷をたどりながら、その全貌に迫ります。

「ローランサン」(1987年創刊予定 マガジンハウス)目次試案ほか ©Seiichi Horiuchi ©Hearst Holdings, Inc.

昨年、東京・世田谷文学館で回顧展『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』が開催されたことは記憶に新しいですが、本展覧会はその巡回展というだけはありません。展示作品の点数が倍ぐらいになっていて、大幅にヴォリュームアップしているのです。絵本原画や旅のイラストなどが特に増えて、倍くらいになっています。
 
 

『ぐるんぱのようちえん』原画 こどものとも110号 西内ミナミ作 福音館書店 1965年 ©Seiichi Horiuchi
『おおきくなるの』原画 こどものとも99号 堀内誠一作・絵 福音館書店 1964年 ©Seiichi Horiuchi

 
マガジンハウスの壁画の複製や、堀内誠一さんがデザインを手がけたTシャツ、堀内氏によるレイアウト用紙なども多数展示します。

 
旅のイラスト(アンアン連載のものなど)やアエログラム(航空書簡)。そのうまさや味わいにはしびれます。

福音館書店編集部宛アエログラム「フランス、パリ、モンパルナスの眺め」 1974年3月11日消印 ©Seiichi Horiuchi

様々な雑誌のADの仕事は、うまさやかっこよさだけではなく、素朴なものもミックスされて、魅力的です。若い才能(たぶん有能も普通の才能も)を見出して引き出していく人間性もすばらしいと思います。

本展覧会の展示は、斬新な切り口を出すというようなかっこをつけず、てらわず、オーソドックスにやろうと思っています。いろんな顔を持つ20世紀の稀代のクリエーター 堀内誠一さんを、愛を込めてドンとトータルに伝えたいと思っています。

関連イベントもたいへん興味深いものになっています。

たとえば5月9日の特別対談『都築響一×堀内花子 堀内誠一を語る クリエーターとして・父として』は是非おすすめ。世界をはい回る稀代の快男児・都築響一と、長女・堀内花子が、堀内誠一を語りつくす120分です! 乞うご期待。

また、来場者には、最後のガリ版印刷者ともいわれる坂本秀童子(さかもとしゅうどうじ)氏(坂本謄写堂、徳島)製作のチラシ(ガリ版)を配布します。
 

ベロ イン コート・ダジュール『アンアン』第7号(写真/立木三朗 モデル/ベロニク・パスキエ)平凡出版 1970年

 

マガジンハウス社屋壁画の前の堀内誠一さん(1983年)

●関連イベント

特別対談『都築響一×堀内花子 堀内誠一を語る クリエーターとして・父として』
2010年5月9日(日)13:30~15:30
徳島県立近代美術館 徳島県立近代美術館ロビー(2階)
観覧券が必要(一般600円)
申込不要
http://www.art.tokushima-ec.ed.jp/imgdoc/h-taidan.pdf

 

『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』

2010年4月29日(木祝) – 2010年6月13日(日)
徳島県立近代美術館 展示室3
徳島市八万町向寺山文化の森総合公園内
9:30~17:00
Tel. 088-668-1088
月休(ただし5月3日を除く)、2010年5月6日(木)
『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』よみものHP

筆者プロフィール

友井伸一(ともい・しんいち) 

徳島県立近代美術館 専門学芸員

大阪府堺市出身。1989年 神戸大学大学院芸術学芸術史専攻修了。1989年  徳島県の文化の森建設事務局。90年から徳島県立近代美術館学芸員。西洋近代美術担当で、ピカソなどの展覧会をしましたが、ほかにも、本と美術や、音楽と美術などのテーマで企画展をしてきました。陸上(砲丸投げ)、柔道、ラグビー(フォワード)をやってきたので、わりと体育会系。お酒が好きです(特にビール)。徳島の路上ミュージシャンががんばっているのを、ほろ酔いでよく聴きに行ったりします。本展覧会の準備で上京して、堀内誠一さんの長女の花子さんや関係者の方たちと飲みに行くのがとても楽しみでした。

最近、スキューバダイビングを始めました。初心者ですが、いつかはパラオやタヒチにいってみたい。