女性のための、元気になれる俳句58 選・如月美樹 無花果の暗き深紅を煮つむべし 黒田杏子

(2009.09.08)
 

この季節、無花果(イチジク)の実が八百屋の店先(スーパーの野菜コーナー?)に山積みされている。残念ながら自然の状態で木になっている無花果を実際に見たことはないが、あの実を見ると、いつもエロティックだなあと思う。フレンチやイタリアンの店でイチジクを使った季節のデザートが供されるのも今ごろ。煮詰めてジャムを作ったりもする実なのだ。
この句では、イチジクの深い紅色のみに注目して「煮詰むべし」と言い放つ。視点をぎりぎりまで絞って表現することによって、無花果という果実の存在、そしてそこにいるはずの作者をくっきりと際立たせている。掲句初出『一木一草』(1995)。