女性のための、元気になれる俳句43 選・如月美樹 スープに浮ぶ灯すべて乱してさくらの夜 桂信子

(2009.03.23)
 

 特別な意味なんてないのだ。桜の咲く夜。晩餐のスープに映る幾多の光。それをスプーンですくうとき、すべての灯が乱れたというのだ。ただそれだけのことを詠んだにすぎない。しかし、この句が想像をかき立てて止まないのは、「浮」「乱」「夜」といった文字から受けるイメージ、そして何よりも、それがいつでもない、「さくら」の夜だった、ということによる。
 開花宣言があった。日本人が心乱され、浮き立つ、短い日々が到来する。掲句初出『晩春』(1967)。