女性のための、元気になれる俳句34 選・如月美樹 寒玉子狂ひもせずに朝が来て 岡本眸

(2009.01.19)
 

 寒中の鶏卵は、ことのほか栄養価が高いらしい。また、この時期は産卵期でもある。というわけで、「寒卵」は冬の季語である。ニワトリは一年中同じ割合で卵を産むのだと思っていた私には、驚きの季語だった。スーパーには、いつでも卵が10個パックで並んでいるご時世だ。
 掲句は、淡々と同じ日常が続いていることを静かに詠んでいる。眠りにつくとき、次に目覚めるという保証はどこにもない。眠ってしまったら、次に目覚めるのはどこか知らない世界なのではないか、という恐怖が、子供の頃の私を、眠らないようにと努力させた。
 何事もなく昨日と同じ朝がやってくるのだ、という暗黙の了解が、わたしたちの日常とやらを成り立たせている。大人になるということは、鈍感になっていくということなのかもしれない。朝食のために、平気な顔して卵を割ったりして。掲句初出『二人』(1979)。