『SARAVAH 東京』こんにちは。- 10 - 開店しました。世界に誇る日本の職人!

(2010.12.13)

12月10日、奇跡的に、開店いたしました。いやあ~本当に感心したのですが、日本の施工やさん、職人さんの責任感の強さは世界一だと思います。これがもしフランスだったら、と思うとぞ~っとします。たぶん6カ月は開店が遅れたでしょう。フランスばかりではありません、聞くところによれば、ほかの国でもそうらしいのです。日本にいると当たり前と思っているかも知れませんが、時間を守るとか、エラーをしたら謝る、すぐ直す。とかいうことは、驚くべきことなのです。今回の開店のための工事で、何度も夜中までかかって納期を守ってくれました、本当にありがたいです。

2010年12月10日(金)プレ・オープニングパーティーの模様。

私のフランス20年体験で、2回大きな工事をしましたが、田舎の家をリフォームした時の話、なぜか最初からトイレが詰まるのでクレーム入れました。逆に変なもの流したでしょ。とか疑われたあげく、結局トイレの配水管が地面に埋まった形だけとって、下水につながっていなかった。というお粗末な話でした。考えられますか?  そういう水道屋さんって。どうしてそんなすぐばれるサボタージュをするのか意味不明です。

もう一回の経験はパリのアパートのリフォーム。一応我が家は音楽家の家なのでピアノがあります。ホコリを被るといけないので、養生をしてください。と言ったのに、無視されて、すごいホコリの中に家具も楽器も置かれていました。しかもあやまらず、自宅で家族はものを書いたり作詞しているのに、職人はでかい音でラジオかけっぱなし、くわえ煙草でお仕事です。文句を言うと、一切来なくなるし、んもう信じられない。ストレスで頭おかしくなりそうでした。

と言うわけで不幸な体験ばかりしてきたので、なおさら日本人のプロ意識の高さに大感激しました。フランスの彼らは自分たちは労働者階級で搾取されていると思い込んでいて(日当は3万円でも)個人的に階級闘争しているのです。お前らのために働かせられている我々は犠牲者である。というメッセージを全身で発信しています。でもそれって違うと思います。第1そう思うことで自分を卑しめている。思い出すとカッカしてくます。

でもこの国で、そういうしっかりした職人さんや建築の方の努力に支えられて、やっとできた『SARAVAH 東京』で、昨日、音を出して、人が歌い、お酒を飲んで、もう、交流の場が始まっていました。

嬉しかったのは友人たちが駆けつけてきてくれたことはもちろんですが、Twitterを見て来てみました。とか牧村さんと津田さんの『未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか―』を読んでこの場所を知りました。とか、まったく初めて出会う方たちが来てくれたことです。

『SARAVAH 東京』エントランスにて。

 

 

清水靖晃とマイア・バルー

建築の方に集中していてブッキングのほうはソワレ君任せにしていたのですが、私、1月には2つ大変興味深い催しをします。

清水靖晃さんと出会ったのは1982年、立川直樹氏がプロデュースした『ポーレン(Le Pollen)』と言うレコードをピエールが作った時でした。当時『マライア』として既に有名だった靖晃さん(以後やっちゃんと呼びます)はアルバム『ポーレン』に美しいメロディーを提供してくれました、『括弧』と言う歌をピエールが書き下ろし、ピアノの演奏もやっちゃんでした。

そのあとのアルバム『シエラ(Sierras)』ではシンフォニーオーケストラの編曲をした『地球を綱渡り(
Sur Le Fil)』という曲。『括弧(Parenthese)』がすごく小さい世界:夜中にふと目を覚まして、町の音やアパートのエレベーターのあく音などに耳を澄ます、その半睡半醒の時間を点描画的に描いた作品なら、『地球を綱渡り』は反対に地球を部屋にしてしまおうというスケールの大きな作品です。モントリールがリビングルームで東京は庭、と言うように、自分は放浪者であり同時に定住者である。と定義しているバルーならではの詩です。オチが、「でも壁はいらない、特にベルリンのはね」。と言っているのが印象的でした、その4年後には本当になくなってしまったのですから。

やっちゃんとのお付き合いは日本でのレコーディングにとどまらず、その後もずっと続きます、なぜなら彼はパリに引っ越してきたからです。パリで、無名であった彼はよく街でサックスを吹きました、それでもちろん彼の才能ですからあっという間に映画監督や作曲家に目をつけられて活動が始まったのですが、まだ街でやっていたころ、流しのアコーデオン弾きでジャッキー・フォーと言うすごく個性的なアルザス人とのライブレコードをSARAVAHで出しました。たしか「ノスタルジーカフェ」と言うタイトルでした。その時ジャケット写真を撮ったのがガストン。そこに確か豆のように小さい赤ん坊のマイアも写っています。このガストンが私とピエールにロベール・ドアノーを紹介してくれたのです、そのお話はまた次回書きます。

 

 

マイアが大好きなやっちゃん

彼女は「ママン」と呼んでいた愛犬ライカに乗っかって哺乳瓶を一気飲みしていたころから、やっちゃんは大好きなお友達で、小学校の時の日記帳にはドレッドヘヤーにしたやっちゃんの似顔絵がでてくるし、大人としてではなく、お友達として遊ばせてもらっていました。

大きくなって自分が音楽をするようになってからは尊敬する大先輩として自分の音楽を時々聞いてもらう関係でした。そこでエチオピアの音楽を教えてもらったり、ネオチンドンかぼちゃ商会に入るためにサックスを安く買うつてを教えてもらったり、先生を紹介してもらったり。でも一緒に音楽をしたことは一度もないのです。

 

 

音楽の実験室

今年から始めたのですが『マイア・バルーのオープンファクトリー』と称して『アップリンク』で月に一度、一人のゲストを呼んで、1対1の音楽の出会いの実験を企画しています。だいたい打ち合わせは1回もしくは0回で、アドリブです。まさに実験に立ち会う面白さで、2つの個性がぶつかり融合して新しい音ができるその場に我々は立ち会うことができます。大きなステージではゆるされない揺らぎ、迷い、大胆な試み、のすべてを試してしまう場でもあります。それはアーチストにとって試練でもあり思わぬ一面を自分でも発見できる場でもあります。そんな創造の場に立ち会うわくわくが大好きで毎回通ってくださる人たちもいます。

今回からは『SARAVAH 東京』で、「実験」をします。そして第1回目がやっちゃん。2人のクリエイティブな狂気が炸裂してかなりすごいことになりそうです。歴史に残るセッションになるかも知れません。1月の15日です、これは逃せません。

 

 

連載の最後に

今まで10週間拙い文章を読んでくださってありがとうございました。『SARAVAH 東京』は開店いたしましたが、これからは開店準備ではなく、開店した店でも様々な出来事をリポートできたらいいなと思っております。アーチストがこのような小さいライブハウスで表現者として爪を研いで行くいうことはどういうことなのか、かれらの気持ちになって一緒に考えていきたいのです。

ネットで何でもできそうな時代にあえて目と目、手と手を合わせることによって得られるもの、それは情報量の多さではなく、自分の五感による確実な手応えだと思います。ちょっと昔まで人類はすごく少ない情報量で生きていた。でも、実はそれは量の違いではなくて質なのではないでしょうか。ひとつの眼差しでネットで得られる100倍の情報を得ることができるのかも知れません。その人に受け入れる気持の用意があるなら。ネットもいいけど、バランスを取りたいですね。

これからが本番です。

 

 

 

 

『SARAVAH 東京』マイア・バルー+清水靖晃

期日:2011年1月15日(土)18:00開場 19:00開演
料金:前売り3500円当日4000円(ドリンク別)
予約/問合せ:contact@saravah.jp

※クリックで拡大

 

 

『SARAVAH 東京』
Tel. 03-6427-8886
東京都渋谷区松濤1丁目29-1 渋谷クロスロードビル B1
http://www.saravah.jp/tokyo/