土屋孝元のお洒落奇譚。大和撫子には緑色は似合わないの?

(2011.06.01)

ニュースでは 福島の事について、最近になってわかった事などと伝えていました。地球上に存在しない元素記号を持つ原子の火は、いったん何かが起きると大変なことになるのです。避難所で生活なさっている方達のことを思うと・・・・・・。あの日の前の日常に一刻も早く戻られる事を願うばかりです。

天気予報では梅雨に入ったようで、これから長い東アジア独特の気候にしばらくはお付き合いをするしかないのですね。この雨で思い出したのは、『青いパパイヤの香り』ベトナム映画でした。映像の美しさと音楽が素晴らしく、雨のシーンがまた、良いのです。たしか、今年公開された村上春樹さん原作の映画、『ノルウェイの森』の監督の作品だったと思います。この映画も色彩の美しい映画でした。

色についてのお話を少々。

色について自分が経験してきたことなどお話ししようと思います。

水彩教室にて生徒さん達を教えていて思うのですが、色彩感覚は基本的には生まれた時からその人独自の感覚が備わってるのではと思います。同じ花の色を見ても、それぞれ表現する色は微妙に違います。この絵はこういう目的で表現しているのだから、この色を使うと、というような意図時な表現をする生徒さんはいらっしゃらないので、使う水彩絵の具の色に、その人の色彩感覚が現れます。

日本には古来より、色を表現する言葉が多くあり、季節や、地方によっても様々な表現で表されています。「目に青葉山子規初鰹。めにあおばやまほとぎすはつがつお。」いまの旬の表現です。この青葉という表現の青とはブルーではなく、新緑の緑のことですね、日本では緑色のことをよく青と表現します。身近な例では、青信号と表現する信号機の色も、正確にはエメラルドグリーン系の色です、青ではなく緑ですね。

緑色の微妙な再現では4色印刷では難しい事も多く、僕も以前は特色を追加してもらい表現したりしたこともありました。この緑色は隣合わせの色により影響を受け、それらしい緑になったり、反対に濁った緑になったりするのです。緑色に限らず全ての色にも共通することがらでしょうか。

日本語には緑を表す言葉が多いのです。

浅葱色、萌葱色、浅緑、鶸萌黄、青竹色、松葉色、裏葉、柳葉、青磁、利休、山葵色、孔雀色、海松、山鳩色、木賊、緑青、白緑、山藍摺、まだまだあるとは思いますが、日本には緑を表す言葉は多いのです。よく言われる事ですが、一般的に日本人には緑色は似合わないと言われます。これは緑色の補色に、黄色から肌色ぐらいの色があたるからです。これも最近ではどうでしょうか、髪の色も多種多様ですから緑の似合う金髪の大和撫子も街には沢山いることでしょうね。補色の色同士を隣合わせるとハレーションをおこしたり、濁らせたりしていまいます。先ほどの例では、緑色の服は顔色をくすませ、濁った肌に見えるので、似合わないというのでしょう。

自分の例ですが、水彩を描く時にはまず黄色、黄色系の薄い色を描きます。描くというよりも置くという方が正しいかもしれません。苺や林檎などの赤が鮮やかな果物には効果的ですね、下地の黄色が透けて見え隠れして上に乗せた赤を印象的にしてくれます。印刷指定の色でいうとM100%ではなくY80%+M100%ぐらいの赤です。

絵の具で近いものはウインザーレッドです。この赤はナポレオン時代のイングランド陸軍の制服の赤ですね。今ではバッキンガム宮殿の近衛兵の制服に残っています。次にブルーの薄い色を置きます。(配置します。)この黄色とブルーが完全に乾いてから、(この完全に乾くのが重要で、技法的にはわざと色を滲ませることもありますが)自分が描く対象物に色を描いていきます。最後の仕上げには、影の部分のポイントに、わざと強い色、ペルシャンブルーとか、インディゴブルーとかの濃い色を水をあまりつけずに描きます。

最後の最後なので、一部分に描く程度にしなければなりません。
描き過ぎると全体を台無しにしてしまいますから。

 
 
 

『ノルウェイの森』DVD  2011年6月22日発売 ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント