深瀬鋭一郎のあーとdeロハス上海滞在のコツと上海アート事情。

(2010.01.27)

バンクーバー・オリンピックの次のビッグ・イベントは上海万博です。3月頃から国内でも広告や報道が増え、万博気分が盛り上がってくることと思います。今年は万博見物も兼ねて上海に行かれる方も多いと思いますので、初めての方のために、まず上海滞在のコツを紹介しましょう。

不夜城の上海・南京東路。

上海では大部分の人が英語・日本語とも話せないので、中国の簡体字で記載したタクシー運転手に見せるための「行き先カード」や、観光客のための中国語(または上海語)入門書を用意するとスムーズです。ホテルなど自分の滞在先のカード等は確実に携帯するようにしましょう。また地下鉄(上海地鉄)は新線の工事がどんどん進んでいるので、最も新しい路線である万博会場の東端を縦に縦断する地鉄7号線が掲載されたガイドブックや地図を選ぶ必要があります。

地下鉄、タクシーとも乗り方を覚えれば快適です。地下鉄の主要駅には観光客向けのガイドさんがいて、乗り方を教えてくれます。言葉がほとんど通じないことを除けば、街は日本の大都市と大差ありません。簡体字から元の漢字を推測すれば、何が書いてあるかも大体理解できます。物価は東京の3分の1。高いレストランではなく、地元の食堂やコンビニを使えば、滞在費はおそろしく安あがりです。
深瀬の渡航でも、宿泊代や間違えて入ってしまった高級レストランを除けば、1日1000円で生活できました。
 

上海当代芸術館の入口には巨大な金色の犬が!
泰康路藝術街。

上海が初めての方でも判り易いアート・スポットは、上海市の中心、人民公園の中の上海美術館や上海当代芸術館(上海現代美術館、MoCA)でしょう。人民公園は東京でいえば銀座中央通りのような繁華街、南京東路の西の端にあり、公園の下に地下鉄人民広場駅があります。上海美術館の建物は、元は1933年に上海競馬場のイギリス人専用クラブハウスとして建てられたもので、上海図書館として利用されていましたが、2000年に美術館として生まれ変わったものです。そこから5分ぐらい歩くと、今度は総ガラス張りの建物、上海当代芸術館が現れます。
2005年にオープンしたばかりです。

人民公園から南へ3kmほど下った泰康路藝術街「田子坊」も大人気です。田子坊とは、画家の黄永玉氏が、戦国時代の逸話を集めた書物「戦国策」に登場する芸術家「田子方」の名をとり、アーティストが集う場所(坊)という意味で、泰康路210弄につけた名前です。実は現地の人はあまり田子坊と呼ばないので、泰康路(タイカンルー)と言った方が、とおりが良いです。 上海にはアーティストのアトリエを集めた地区「創意園区」が50以上あり、多くは古い工場や倉庫を改造したものですが、田子坊は狭い路地の街で民家と商店と工房が軒を並べています。本格的な現代美術ギャラリーは少なく、むしろ、エスニックレストラン、雑貨屋、肖像画制作スタジオ等が目立ちます。
 

4M50の巨大な人物像。
紅坊の入口を入って右に彫刻センター。

本格的な現代美術のギャラリー密集地と言えば、「M50創意園」(上海市普陀区莫干山路50号)が有名です。1937年に建てられた紡績工場などを改装したもので、アトリエ、ギャラリー、スタジオ等、150のアート施設が集積し、中国から初めてバーゼル・アートフェアに参加したShang Art Galleryなど有名なギャラリーもあって、世界的に注目されているアート・スポットです。地元では莫干山路(モーガンシャンルー)と呼ぶととおりが良いです。公共交通機関の便が悪く、どの駅からも歩くと遠いので、タクシーかバスを利用すると良いでしょう。最近は観光バスの順路にもなるほどの賑わいぶりです。

2008年秋にできたばかりのM50を超える規模の新しいアート・スポットが、「紅坊国際文化芸術社区」、略して「紅坊」(Red Town)です。最寄りの駅は、地鉄3、4号線の虹橋路駅で、上海市長区淮海西路570号にあります。その入口すぐ右に「上海城市彫塑芸術中心」(Shanghai Sculpture Space)があります。社区の中心には大きな彫刻庭園(Sculpture Garden)があり、それを大きな現代美術画廊やアトリエ、小規模画廊の集合ビルなどが取り巻いています。素敵なカフェもあり、ここは本当に洒落ています。現在上海のアート・スポットの中で一番おしゃれなのではないでしょうか。

「威海路696号」(通称ウェイハイルー)は、これまで紹介したアート・スポットほどエスタブリッシュされておらず、観光客がわざわざ行くほどではありませんが、映像系のスタジオやギャラリー、アトリエ等、静かで雰囲気の中に雑多でインディーなゾクゾク感がある、昔の東ベルリンやイースト・ビレッジを彷彿とさせる場所です。なお、M50や田子坊も昔はそういう場所だったと言いますが、観光地化が進み、定期観光バスが立ち寄る場所となってしまっていて、もはやアンダーグラウンドの雰囲気は薄れてきてしまっています。

威海路696のアンダーグラウンドな雰囲気。人物は筆者。

創意園はどんどん増えており、これらのほかにも、最近、上海万博会場のすぐ北(中山南路497号)に旧工場・倉庫22棟をリノベートした大規模な「老碼頭創意園」がオープンしたほか、98創意園(上海市静安区延平路98号)など、いくつもの創意園があります。皆さんも、探検してみてくださいね。