観客の目も刺激するMaerzMusik、 ベルリンの現代音楽祭で 日本の被災者に祈りをこめた演奏。

(2011.03.31)
1917年にイタリア未来派のルイージ・ロッソが考案した楽器イントナルモーリ(騒音と機械を合わせた造語)を奏で、ジョアン・ラ・バーバラと『ストレーション』を初演する16名はマジック・マジック・オーケストラ。指揮はルチアーノ・チェーザ。
© Performa / Paula Court

今井慎太郎作曲&プロデュース、Figures in Motion(動く姿)では琴を弾く指の動きが数秒の時間差でスクリーンに映写される。ギターで言うレフのような効果が、映像から生じる。 © Kai Bienert

© Kai Bienert

2011年3月11日の震災は深い悲しみをもたらしました。その影響は測り知れませんが、世界の芸術関係者にもアートを通した支援の輪が広がっています。たとえば、ドイツ演劇界では被災地域で復興に貢献する演劇人の活動に対して、支援が計画されています。このプロジェクトについては、具体的な内容が決まり次第あらためてお伝えします。

今回の「演劇ダンス道」ではベルリン在住のライター、Yumiko Uraeのレポートを送ります。浦江由美子さんはCasa Brutusはじめマガジンハウスの雑誌にも協力、ベルリン在住17年の間 に多くの文化イベントを経験。そのなかでも驚くほど刺激された催しが、今年10周年を迎えたベルリン発コンテンポラリー・ミュージック・フェス、“メルツ・ムジーック”(3月の音楽)。3月18日から27日の期間で1万人の観客を集め成功をおさめた同祭には、パフォーマンス集団ダムタイプの音楽を担った池田亮司、東京で企画されたR.ルパージュ演出のシェイクスピア作品『テンペスト』で自ら作曲した音楽を生演奏したマイケル・ナイマンなど、舞台芸術に縁の深い音楽家も数多く参加。最先端音楽の祭典のフレッシュな報告を、どうぞ。

マイケル・ナイマン・バンドの演奏によるジガ・ヴェルトフ作ドキュメンタリー映画「地球の6分の1」(1926)
© Kai Bienert
素晴らしいキューレション!オーガナイザーのマティアス・オスターヴォルト。
© Kai Bienert

現代音楽のイベントを献身的にプロデュースして来たマティアス・オスターヴォルト。彼のキューレションで10年前にスタートしたコンテンポラリー・ミュージック・フェス、メルツ・ムジーックは今年「新しい音楽、新しい場所、新しい観客」というモットーで全ての公演が大入り、総勢1万人の集客という記録的な結果を生みました。
2011年は「音と画像、動き」をテーマに掲げた、目と耳のための音楽祭。ビジュアルを意識した演奏や映像、フリッツ・ラング監督『メトロポリス』をはじめとする古い映画にコンテンポラリー・ミュージックを伴奏させる試み、池田亮司の「データマティック2.0」に代表されるマルチメディアを駆使した最先端の音……、足を運ぶたびにコンテンポラリー(同時代に生きるもののための)・ミュージックの幅広さ、可能性の大きさを知らされました。
今年から各パフォーマンスがそれぞれの特性を生かすために、市内の各所で行われたのも魅力アップの要因でしょう。面白い会場としてはベルリンで最も人気の発電所の廃虚にあるクラブ、ベルグハインや、シュプレー川と運河のポンプ作業に使われていた建物で2006年にパフォーマンス・レビューとしてスタートしたラディアル・システム。廃虚となっていた建物を新しい創造の発表の場として再生させているベルリンならではの試みです。
今年は日独国交150周年ということもあり、多くの日本人アーティストも招待されました。最終日のラディアル・システムでのコンサート後にはオスターヴォルトと演奏家が日本の被災者のために祈る気持ちをこめて、特別にほぼインプロで「さくら」を演奏してくれました。芸術は国境を越える、音楽は言葉が通じない私たちをひとつにしてくれる、ということを改めて実感させてくれる熱いフェスでした。

2012年のMaerzMusikは3月16日〜25日まで。
現代音楽祭の会期が近づくと、詳細はベルリン・フェスティバルのURLで読めます。2011年音楽祭の写真や動画などが下のサイトに掲載されています。インタビューはドイツ語ですが、紹介文やプログラムは英語で読めますよ。
http://www.berlinerfestspiele.de/de/aktuell/festivals/02_maerzmusik/mm_start.php