土屋孝元のお洒落奇譚。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで
『ロトチェンコ展』を見る。
(2012.04.07)
『ロトチェンコ・彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児展』
友人の授賞式へ向かう途中、銀座にて『ロトチェンコ・彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児展』を見る。
アレクサンドル・ミハイルヴィッチ・ロトチェンコ:ロシアンアヴァンギャルドまたは、ロシア構成主義とも言われる一連の作品を残した作家集団の1人です。彼の雑誌広告、ポスター、パッケージデザイン、写真などに彼らしいデザインセンスと当時のソ連やプロパガンダ広告の様子がうかがわれました。
今見ても斬新なデザイン、タイポグラフィ、で赤と青の二色でも十分に表現できるのだなと感心させられます、いまは何でもパソコンで出来てしまうので恵まれすぎかもしれませんね。この時代、飛行機が登場し、デザイン要素としても面白い素材表現でロトチェンコが制作した航空会社の雑誌広告やポスターには独特の飛行機が登場してメインビジュアルの一つになっていました。
他の作品にもこの飛行機がたびたび登場してきます、彼にとってはプロペラが回る様子やフォルムが面白かったのかもしれません。
彼はモノクロ写真でも同じようなイメージで撮影していて、そのトリミングや構図にて構成主義的な人物の集合写真や建物の陰影にて構成した写真など いまも新鮮な表現です。
イメージに統一感ある展示方法。
銀座の『ggg ギンザ・グラフィク・ギャラリー』にはこの日が最終日にもかかわらず、大変な人出でなかでも年齢層の若いデザイナーか学生さん達が真剣な表情でロトチェンコの作品群を見ていたのが印象的でした。
彼らにとってはデザインを志す頃にはパソコンがあり、Photoshopで写真を加工したり、フォントも自分で一から作ることはなく……、イメージはインターネット資料やストックフォトの中から探すという感じではないでしょうか。
一歩譲って、まだ構成やカタチの外形ラインやフォルムは良しとしましょう、色についてはパソコンのIllustratorやphotoshopがあれば、カラーパレットより選ぶだけで大抵の色の組み合わせは完成されてしまいます、僕達の学生時代にはポスターカラーやガッシュで色を作り自分なりの微妙な色彩を競うように表現していたのとはずいぶんと違います。
まあ、使えるものは上手く使えば良い訳でこのために最近の人達に色感が悪い人がいるとは言い切れません。
ロトチェンコは自分の広告作品を制作するにあたり簡単な下書き、エスキースを描いています、その完成度の高いエスキースを見てみるとだいたいの仕上がりの様子がイメージできています、このエスキースやラフスケッチ作業は自分の考えをまとめる為には役にたち、漠然としたイメージを手を動かすことでまとめていくのには必要な手順だと思うのですが、如何でしょう。
会場の展示方法もロトチェンコ風と言いますか、イメージも統一感があり面白かったですね。少し前になりますが2001年にも庭園美術館にてこのロシアンアヴァンギャルド展があり見たことを思い出しました。
庭園美術館自体、アールデコを代表する建築物で旧明日香の宮邸ですが、その建物と展示されていたロシア構成主義の作品群のコラボレーションはほどよい調和で今でも印象に残る作品展の一つです。
ロゴタイプも
ロシアンアヴァンギャルド風にしてみました。
これはまったく個人的な趣味ですが、僕はアールヌーボーよりもアールデコを好みます、どちらかが劣るとは思いませんが、好きな作家を並べると一目瞭然ですか?
ブランクーシ、イサムノグチ、モディリアーニ、ドローネー、ディフィ、レジェ、カッサンドル……小村雪岱(こむら・せったい)。
小村雪岱? と言うかたもいらっしゃるでしょうが、最後の雪岱は個人的にアールデコ的かなと思うのです、表現された画面構成や直線の多用された背景の新聞小説の挿絵や泉鏡花の装丁など、雪岱は一般的には新版画に分類され酒井抱一、鈴木甚一、など江戸琳派の継承者とも言われていますが……。話すと長くなりそうなので、本題に戻りロトチェンコは写真や印刷物をコラージュした技法の作品にも見応えがあるものがありました。
僕も色々と参考にさせていただいていて最近使用する自分のロゴタイプはロシアンアヴァンギャルド風かもしれません、ヘッドライン画像、ご覧ください。
このコラムが出る頃には展覧会は終わっていることでしょうが、どこかで作品集や写真集など見ていただければと思います。