女性のための、元気になれる俳句38 選・如月美樹 氏素性なくて美し春灯 吉屋信子

(2009.02.16)
 

 小説家である信子が、俳句もよくするようになったのは、戦時中に小説を発表することを禁じられたときからだという。掲句には、「某妓を見て」とある。酒席を楽しませてくれる芸妓は、その場限りに咲く幻の花のようなもの。氏素性がないから美しいといっているのではない。氏素性という、人間の俗性に最も深く関わるものを放棄することで、人は聖性を獲得し得るのだ。
 春のふわりとあたたかい灯の下で、誰の娘でも、誰の妻でも、誰の恋人でもないとき、あなたは何者ですか? 掲句初出『吉屋信子句集』(1974)。