土屋孝元のお洒落奇譚。バルタザール・ミッシェル・
クロソウスキー・ド・ローラから…。

(2011.05.02)

 


西洋絵画史上で好きな作家をあげるとすると。



国立新美術館にて『シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―』を見る。
トリスタン・ツァラ、アンドレ・プルトンらのダダの宣言から、第一次大戦、第二次大戦、を経てアメリカへ移る頃までの展示で、ダダイズムを俯瞰して見る事ができ、ダダとは……。と、わかり易く理解できるものでした。マックス・エルンスト、キリコ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、ポール・デルボー、ピカソ、ポロック、ピカビア、ハンス・リヒターなどの近代絵画史上、名だたる作家が並んでいてさすがポンピドーセンター収蔵の作品群です。


西洋絵画史上で好きな作家をあげるとすると、一楽二萩三唐津ではないですが、1 に「バルタザール・ミッシェル・クロソウスキー・ド・ローラ」2に「ジュルジョ・モランディ」3に「コンスタンティン・ブランクーシ」ですか。これは、その時の気分とか、季節とかでは変わらずに本質的な部分でも好きな作家で、これに、サイ・トゥーンブリーやマーク・ロスコ、ルーカス・クラナッハ、ドナテルロ、ティツァーノ、モネ、ディフィ、ときりなく続きます。


昔 読んだ自伝にて、ある作家が言った言葉ですが、「シュルレアリスムとは、一体なんだろうか」とこんな意味の事を書いていました。その作家とは20世紀のいろいろな絵画運動を近くで見てきていて、それでも画風を変えず具象表現の中で制作を続けた画家であり、噂によると薔薇十字団騎士とも? 偏執的少女趣味的要素などもあり、一言では伝えにくい作家です。


彼の名は、「バルタザール・ミッシェル・クロソウスキー・ド・ローラ伯爵」。通称バルテュス。ポーランド貴族出身の作家で、原画の点数が非常に少ない事でも有名です。
かなり歳の離れた日本人の奥様がいて、お嬢さんが一人、奥様は節子・クロソウスキー・ド・ローラ伯爵夫人。現在はバルテュス財団名誉会長でもあります。

 

バルテュスの風景画と少女の絵シリーズ。

夫妻はスイスアルプスにあるヨーロッパ木造建築としては最古、最大級のグラン・シャレーに住み、着物や日本文化をこよなく愛し、以前、東京で開かれた生前(惜しまれつつ2001年に亡くなりました)のバルテュス写真展にては、篠山紀信さん撮影の晩年のポートレイトで紋付袴姿でした。同じく篠山紀信さん撮影のパレット写真では、バルテュスの絵の具の組み合わせやアトリエ風景を見る事が出来、たいへんに参考になったのを覚えています。

僕は彼の風景画と少女の絵シリーズが好きです。この少女のシリーズは、シエナ派の影響があるとか、ないとか。個人的には、クラナッハ工房制作のイブ像やビーナスにも通じるかな、と……。バルテュスを語るうえでは、彼の兄、ピエール・クロソウスキー・ド・ローラ、の事も簡単に触れなくてはなりませんね。彼は小説家、画家、翻訳家であり、ニーチェやサドの翻訳は 有名なものがあります。
彼の絵(鉛筆画)は独特で、少年と修道士が描かれていて、性的虐待をイメージする画風を嫌う方が多いでしょうか。昔、パリにて、その鉛筆画画集を手に入れました。

詳しくは、みなさまお調べ下さい。

同じく具象画の作家で、生まれた街から出ないで創作を続けた画家、「ジョルジュ・モランディ」。アトリエから見える窓からの風景とテーブル上の瓶や構成物のみを描き、作品にした事で知られています。
モランディ独特のグレートーンは大人の色気という感じで、嫌いという人は少ないのではないでしょうか。同じ静物を描き続けるエネルギーは尊敬に値するものです。僕はモランディの水彩画のほうが好きですね。

最後に「コンスタンティン・ブランクーシ。」彼はルーマニア系の彫刻家で、「イサム・ノグチ」や、ある時期「アメデオ・モディリアーニ」の師匠でもありました。金属彫刻や大理石、木彫などでアフリカのプリミティブなイメージを連想させる作品から、研ぎ澄まさせた造形美のものまで幅広く制作しています。
僕は彼の彫刻の台座が好きで、作品を見るたびにほんとうに感心するのです。


彫刻とは、台座も含めて完成品であり、その台座が力不足なら、彫刻全体が完成されないと思うので、ブランクーシの台座のセンスは、その彫刻とのマッチングでは近代作家の中では一番だと思います、あくまでも、私感ですが。


真鍮無垢の作品に大理石と木製の台座、大理石の作品に同じく大理石、大理石に木材、真鍮無垢の作品に真鍮の円盤、その下に大理石、そして木材等、色々な組み合わせで作られています。最近、ポンピドーセンター近くに、ブランクーシのアトリエが当時そのままに再現されたと聞きました。

これは、ブランクーシが書き残したメモのまま、制作途中や台座までも、再現させたようです。ブランクーシは外食をせず、アトリエにて食事をするのが好きで、友人を招いては、ステーキなど焼いたと伝えられています。


ポートレイト写真を見る限り、作業着の幅広パンツにセーター姿で白髪白髭で仙人の様な風貌で、それも好きなところです。少し特殊な趣味かもしれませんが好きな作家達でした。あくまでも奇譚ですから、あしからず。


 
 
 

シュルレアリスム展
―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―
http://www.sur2011.jp/