リブロ・トリニティ – 16 - 『ハハ、お元気ですか めぐろのY子より』めぐろのY子著

(2010.03.23)
~著者+編集者+書店スタッフ3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

めぐろのY子 著

『ハハ、お元気ですか めぐろのY子より』

めぐろのY子 著
『ハハ、お元気ですか めぐろのY子より』 (中経出版刊)


■ 著者より

めぐろのY子

イラストレーター

東京生まれ。多摩美術大学日本画科卒業。
ゲーム会社勤務の後、現在のデザイン事務所に移る。イラスト、デザインを主な仕事とし、週に一回女子高でデザインの講師をしている。夫(かんちゃん)と2人暮らし。休日は溜まった家事をこなすか、ゴロゴロするかの二極化している。趣味はアメリカのTVシリーズを見ること、秘湯めぐり、そして「親孝行プレイ」。
幼少時、年子の弟の衣類と見分けをつける為に、母が「Y子 Tヤ」とマジックで名入れをしたのがY子呼称の始まり。小さい時はずっと坊ちゃん刈りで男の子に間違われていた為、反動でずっとロングヘア。それを邪魔だからと頭にクルクルクルと巻いて留めてる様が今のY子ヘア(茶ダンゴ)の元々である。

ハガキに描いてハハに送ったら、喜ぶこと喜ぶこと。

母が脳梗塞で左半身マヒになっちゃったんです。最初は全然動けない程、重篤でした。大好きな母の苦悩を遠くから見ているのは本当につらかった。自分は無力だ、と痛感しました。

一時は命もあやぶまれた母との日常を残しておきたくて、なぐり描きの様にコマ割りメモしてたのが、めぐろのY子の起源です。それをハガキに描いてハハ=母に送ったら、喜ぶこと喜ぶこと。嬉しかったなあ。母が喜ぶと父も喜ぶ。弟も喜ぶ。それが嬉しくて、一時は毎日のようにあれやこれや描いては送っていたものです。

そのハガキを私の会社の上司が見ていて、「ブログにしてみなよ!」とすすめられました。そんなこんなでブログにアップし始めたのが丁度3年前です。時はビリーズ・ブート・キャンプの大ブーム時。ビリー入隊記をブログにアップしたら一気に読者が増え、いきなりブログランキングで1位になっちゃったんです。毎日何千人もが見にきてくれる。ビックリしました。せっかく人が集まるんだから、みんなでブートキャンプをしようよ、とイベントをしたり、どんどん生活が変わっていきました。

それまでマンガとか描いたことはありませんでした。でも、母は喜んでくれるし、ブログを読んでくれてる人達がもっと楽しいコメントをくれたり、面白くて仕方がなかった。夢中でブログをアップしてました。そのウチに、楽しいことだけじゃなく、辛いこと、苦しんだことも徐々に描くようになっていきました。そんな駄ブログに皆さんがすごく親身になってコメントをくださるんですね。人とのつながりの素晴らしさを実感し始めたのもこの頃です。

そして、書籍化のお話をいただきまして、3年間のエキスに新作を加え、一冊の本となりました。
校正で何度も何度も読み返すのですが、自分で描いたものなのに、何度も同じ所で笑っちゃう。同じ所で泣いてしまう。不思議な本です。自分のことだからなのか、なんなのか、これはホントに原因不明です。
読者の方々から一言ずついただいたのですが、それを含め「人と人とのつながりの大事さ」というものに自分なりに感動してるのかもしれないです。私が伝えたいのは「人生、楽しんだモン勝ち!」とか「角度を変えて見ればすべてコント」とかそんな感じでしょうか。最近では転んでも「ネタができた!」ってものすごいプラス思考になれまして、これもブログのおかげです。

 

 

著者の会社の社長より

絵葉書を、郵便ポストに投函する係をしていました。

浅野 啓太郎(あさの・けいたろう)

1964年、大阪生まれ。
若くして起業。1996年に現在のデザイン事務所を設立。
矢沢永吉氏をこよなく愛し、カラオケではE.YAZAWAしか歌わないという変わり者。桜が咲く時期には、毎日お花見に行くという感性も合わせ持つ45歳。

6年前より、Y子さんがお母様に描いた絵葉書を、郵便ポストに投函する係をしていました。丁度、私の帰り道に目黒郵便局があったのですが、道すがら「今日のネタはどんなだろう?」と毎日楽しみにしていました。
毎日の投函係というか盗み読み係は、この内容をブログに掲載すると地方から出てきている人や、嫁いでしまった女性などが、実家にいるお母さんを思い出して、親孝行のきっかけになるかもな~と思い、Y子さんに提案してみたのです。

3年前、Y子さんは個人的な内容をブログ掲載することに躊躇していましたが、掲載し始めると、ブログ読者の反響の大きさに驚き、勇気づけられクセになったようです。

今回の書籍化にあたり、今までのブログを読み直すと、過去に読んだことのある話なのに、何度も泣いてしまいました。
泣いている自分が恥ずかしくなり、文字校正は赤ペンを持ってトイレに引きこもり行ないました。

自分自身が書籍に登場するのは始めての体験のため、ちょっぴり恥ずかしいので、家族には内緒にしています。
本の中では、かなりコミカルなキャラクターになっていますが、本当は物凄く紳士なつもりです。
最近は、次回作に繋がるように、本書の販売促進の広報マンとして、走り回っております。
応援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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■書店スタッフより

有隣堂アトレ目黒店倉田 裕子(くらた・ゆうこ)

有隣堂アトレ目黒店で文芸書と新書を担当しています。
この店に異動して1年半、長蛇の列にもめげず、レジに並んでくださるお客様に感謝の毎日です。
天気の良い休日には飼い犬の黒パグを連れて多摩川べりで読書、がお気に入り。
ジョギングやサッカー、トランペットや発声練習に精を出す人達を眺めるのも楽しいですよね。

行間(?)を読ませてくれる脱力系のイラストと周囲の人達への優しい眼差し。

初めてこの本のタイトルを見たとき、ハハ=母という変換ができませんでした。
恥ずかしながら「笑い声」なのかと。

さて、そんなまっさらな状態から読ませていただきましたが、これがほのぼの面白い。
日常生活の中で起きた可笑しな出来事や発見って上手く人に伝えるの、なかなか難しかったりしますよね。
本書はそれを見事にクリア。

脱力系のイラストで、行間(?)を読ませてくれるんです。

お母様を含め周囲の人達への優しい眼差しをも感じられ、時にホロリ。
大人気ブログというのも納得です。

お母様に対するY子さんの愛をしっかり確認し読み終えたところで、私にはやはり、ハハには「アハハって笑おうよ」というメッセージにも感じられます。

同じ目黒の空の下、今日もお茶目な時間をすごしてるだろうY子さんを思い浮かべつつ。

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■編集者より

中経出版宮脇 みちこ(みやわき・みちこ)

1974年生まれ。大学卒業後、ソフトウェア開発会社に入社。システムの開発に携わる中で、ものづくりへの姿勢を教わる。一方、かねてより興味のあった出版についてできれば、その仕事をやってみたいと思い、転職活動を開始。中経出版に入社。ビジネス書、恋愛エッセーなどの編集にかかわる。

『モテ本!』著者の藤沢あゆみさんからオススメを受け、すっかりハマリました!

本の出発点は、2008年「めぐろのY子より」のブログを拝見したことです。『モテ本!』著者の藤沢あゆみさんより、「すっごい面白いブログがあるから見てみて!」と教えていただき、ブログを拝見すると、私はすっかりはまってしまい、この面白さをぜひ、読者に! と書籍化を画策するようになりました。

ただ、私が出産することになり、それから1年以上の歳月がながれました。復帰のめどがたったので、産休中にブログから「企画を立案させてもらえませんか?」と連絡させていただきました。そのとき、興奮して言葉足らずだったのですが、Y子さんは、大変、丁寧に優しく対応してくださったことを覚えています。

読者の方にぜひ、この本を読んでもらいたいと思います。辛いことがあっても、なんか笑えてきます。辛い日常をひととき忘れられると思うからです。現実をひととき、忘れることが、辛いことを受け入れる“すきま”を作ってくれると考えます。

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