シノエリの美術巡礼中 – 1 - 『第15回 秘蔵の名品 アートコレクション展 〜日蘭通商400周年記念〜 栄光のオランダ絵画展』はクラシカルな作品からコンテンポラリィな作品まで刺激的に並んでいます。

(2009.08.11)

皆様、はじめまして。篠原と申します。どうぞよろしくお願いします。 さて、今回紹介致しますのは、ホテルオークラ東京にて開催されている『第15回 秘蔵の名品 アートコレクション展 〜日蘭通商400周年記念〜 栄光のオランダ絵画展』 です。

フィンセント・ファン・ゴッホ 『雪原で薪を集める人びと 』吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

この展覧会はホテルオークラ東京のメセナ活動の一環として、1994年に始められたものです。今回は日蘭通商400周年を記念し、17世紀から現代までのオランダ美術が一堂に会しています。オランダのアムステルダムに本拠地を持つINGグループや、オランダ銀行、オランダ外務省が所蔵する作品も展示されており、さらにアムステルダム国立美術館からレンブラント・ファン・レインの作品が、国内企業からはフィンセント・ファン・ゴッホの作品が出品されています。

絵画というのは一作品のみを鑑賞する楽しみ方もありますが、他の作品と見比べて鑑賞する方法もあります。展覧会やギャラリーといった場所で私たちが作品をみる際には、多くの人が後者の鑑賞方法をしているのではないでしょうか。また、比較しているとは意識していないにしても、並んだ複数の作品をみる時には必然的に、前に見た作品のイメージを引きずりつつみていくことになります。したがって、どの作品がどういった順番で同じ空間に並んでいるかということは非常に重要なのです。この展覧会では「オランダ」をキーワードとして、17世紀のクラシカルな作品から現代のコンテンポラリィな作品までが集結しており、今日ありがちな同じ地域・同じ時代でまとめられた展示空間に比べて、鑑賞者に対して非常に刺激的な空間となっています。

一つの壁に並べられたゴッホの4作品を、距離をとって一度にみると気付くことがありました。この4作品はいずれも初期のもので暗い色調が特徴的であり、宗教的で社会主義的な雰囲気があります。労働者の貧しい生活と、宗教家を目指したゴッホの思想が、その暗い色調に表れているようです。しかし、『雪原で薪を集める人びと』の背景に描かれた鮮やかで印象的な朱色の太陽や、『静物、白い壺の花(薔薇ほか)』の鈍い色調の画面に浮かび上がる淡くオレンジがかったピンクの薔薇といった要素の中に、私は見え隠れする希望のようなものを感じたのです。こうしたことは矢張り、一度に見ないと中々実感できにくいことです。

レンブラントの作品は、非常に彼らしい明暗のついた作品がそろっていました。明と暗を基準にした構図の作りこみ方は意匠的で、著名な作品の模写銅版画を買いあさった勉強熱心なレンブラントの成果が感じられます。

また、私が特に気になったのはラオル・ハインケスの『静物』(1935年)です。“魔術的リアリズム”と呼ばれる、モティーフを緻密に描いていながらも幻想的な特徴を持つ絵です。この作品をみて私が思い出したのは江戸時代の画家・伊藤若冲でした。若冲は非常に緻密な鳥の絵を描いていますが、それは写実性を感じさせながらもどこか現実離れした印象を与える作品であり、“魔術的リアリズム”という表現がぴったり合うように思います。このように離れた場所・離れた時代にも関わらず通じ合うような作品を見出すと、人間の表現の根本はもう何万年も変わっていない普遍的なものなのではないか、と思はずにはいられないのです。

皆様、是非一度、この展覧会に足を運んではいかがでしょうか?

入口に置かれた看板が目印です。
オープン初日テープカット後、和やかな雰囲気が漂う。 財団法人大倉文化財団 理事長、大崎磐夫、名誉館長山崎豊治、株式会社ホテルオークラ 代表取締役会長松井幹雄、オランダ銀行総裁ナウト・ウェリンク、駐日オランダ王国 特命全権大使 フィリップ・ドゥ・ヘーアING Bank N.V.,東京支店 カントリーマネージャー インヨー・ヴァン・ヴァスベルグ、第一生命保険相互会社代表取締役会長森田富治郎 財団法人大倉集古館 館長大倉喜彦など(敬称略)

チャリティーイベント“アートは世界のこどもを救う” 〜日蘭通商400周年記念〜

『第15回 秘蔵の名品 アートコレクション展 栄光のオランダ絵画展』
レンブラント、ゴッホ、そして現在。
栄光のオランダ絵画展 400年にわたるオランダ芸術の継承から新たなヴィジョンへ

期間:2009年8月4日(火)~8月30日(日) 会期中無休
時間:10:00~18:00(金曜日 10:00~20:00)最終入場30分前
※ただし開催初日8月4日は12:00~20:00、最終日8月30日は17:00まで
会場:ホテルオークラ東京「アスコットホール」(別館地下2階)
入場料:当日)一般 1,200円、大学・高校生 1,000円、小・中学生 無料
    前売)一般 1,000円、大学・高校生  900円、小・中学生 無料
問い合わせ:ハローダイヤル Tel.03-5777-8600

http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/event/art09/