オノ・ヨーコ展『灯 あかり』
小山登美夫ギャラリーにて開催中。

(2011.12.20)

震災という大打撃を受けた日本に、灯。
作品を前に行われた記者会見の模様。

東京・小山登美夫ギャラリーにて、オノ・ヨーコ展『灯 あかり 』が開催中です。

オノ・ヨーコはこの夏、広島市現代美術館にて、現代美術の分野で人類の平和に貢献した作家に贈られるヒロシマ賞を受賞したことを記念しての個展を開催。広島、長崎が被曝という大惨事から立ち直った歴史を踏まえた作品、さらには今年の地震、原発問題へ直面する日本への強いメッセージを伝える作品を発表。12月10日、『灯 あかり』展オープニングに合わせて本人が会場に来場、記者会見が開かれました。

テーマは、震災という大打撃を受けた日本に「灯」をもたらす作品。

7F会場には、暗闇の中、閉ざされがちな迷路をゆくと辿りつける「光」の場所『灯への道』。そのまわりには透明に微かに発光しているかのような家族を思わせる人型『ミエナイ人タチ』。トップライン(履き口)から血が滴るハイヒールとその影『血のハイヒール』などの作品群が展示。

6Fの会場では、「夢」など、未来を感じさせる文字の書がダイナミックに描かれ、中央には3月11日2時47分で止まっている時計、蓋のないお屠蘇セットと高台、塵に蝕まれた扇風機、レコードプレーヤーなどのインスタレーションが「ヤスダキク」と書かれた毛布の上に展開されています。記者会見は6F会場、作品を前にして行われました。


ダイナミックな書。© 2011 by Peter Brune


暗闇の中、浮かび上がる人型。© 2011 by Peter Brune

記者会見はインスタレーションの前で行われました。© 2011 by Peter Brune
一点の希望を自分の心に携えて、
目標に向かっていくこと。

Q オノさんの創作のテーマは、愛と平和がテーマです。今回の作品もそうでしょうか?

A 作品のテーマというのはそのたびに違うものです。私の生活、人生、社会を反映したものになります。今回の作品のインスピレーションは今、私たちが直面している非常に辛い出来事の、そのあとのこと。心のヒダには明るいヒダ、暗いヒダがありますが、バランスをとって、どうにかそこから抜け出ていこう、ということです。

Q 扇風機、時計のインスタレーションは? 

A 今回の東日本大震災の被災地である仙台郊外を訪れ、瓦礫に埋もれてしまったこれらの日用品を使っていたお家の方々に了承を得て掘り起こしたものです。持ち主であった方々の家族が、これらを見た時の気持ち。その気持がまた、今の私たちの気持ちであると思うのです。掘り起こしたものに手を加えるのではなく、そのままの方が尊敬の念を持っているということを伝えられると思いました。

これらの品々が助かったことはうれしいこと。持ち主の方の家は倒壊して何も残っていない。私も第二次世界大戦を過ごしたり、ずいぶん色んなことのあった人生を生きて来ました。失くしたものもたくさんあります。当時、私が小さかった時のものがまだ残っていたとして、それを私が見たら、さぞうれしかったろうと思うのです。過去というのは完全な形で残っているものではなく、いつも必ず何か少しづつ残っている。その残った少しのものによって、当時のこと、その時の感情なども思い出すこともできるのです。私たちも、これ(作品)によって、3.11のことを考えていきたいと思うのです。


被災地からの品々が並ぶインスタレーション。

Q 作品のイメージを具現化する時の考え方、プロセスについて教えてください。

A 自分でこうしよう、というものではなく、私の感情に従ったことです。3.11が起こった時、私はNYにいて、とても辛かったです。3.11に起こったことだけで済むのではなく、それからどんどん色んなことが、もっとひどいことがわかって来てしまった。

そういう時にどうしたらよいか? 私は広く多くの人々を元気づけたかった。それには自分が来ることが一番だと考えました。私が身体がここに来ること、身体でコミットすることが一番の元気づけになると。言葉で元気づけるとか、そういうことではなく、身体がそこに来るということは、言葉によるコミュニケーションとは全く違うと思います。

Q 迷路のようなところを通り、光を辿っていく素晴らしい体験ができる作品ですが、小野さんにとっての光とはズバリ?

昔、関東大震災で、まわりを火の海で囲まれてしまった女優の森律子さんは、幼い子供の手をとり、彼方に小さく見えた一点の青い空を目指して歩いて行った、といいます、そして私の祖母の家にたどり着いて助かった、と。そのように、私たちも一点の希望を心に携えて、目標に向かって立ち上がって行くことが大切です。辛いところにいることは飛躍の前程です。座ってなかったら立ち上がることはできません。みんなでがんばりましょう!


ハイヒールからは血が染み出している。© 2011 by Peter Brune

下にはハイヒールの影が。© 2011 by Peter Brune

オノ・ヨーコ 展
灯 あかり

期日:2011年12月10日(土)〜2012年1月28日(土)
場所:小山登美夫ギャラリー 東京
住所:東京都江東区清澄1-3-2-7F (丸八倉庫ビル)
TEL:03-3642-4090
営業時間:12:00〜19:00
定休日:日、月、祝
*冬期休廊 12月25日(日) 〜2012年1月4日(水)
http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/yoko-ono-light-2011/


3月11日2時47分に時を刻むのをやめた時計などのインスタレーションの後ろには力強い「夢」。