『コイズミ国際学生照明デザインコンペ』陽と影が同時に存在する照明。ハンガリーのペーテル・トロニが “Nissyoku/日食”で金賞受賞。

(2010.07.27)
金賞を受賞したペーテル・トロニ。1987年生まれ。モホリ・ナジ芸術大学インダストリアルデザイン科3年。 

毎年、年に1回開催されている『コイズミ国際学生照明デザインコンペ』という、照明のデザインコンペティションをご存じでしょうか? 『コイズミ国際学生照明デザインコンペ』は照明機器具、販売会社コイズミ機器主催の世界の学生を対象にした照明機器デザインコンペです。

今年で23年目ということは……金賞を受賞されたペーテル・トロニ(Peter Toronyi)君が産まれた年と同じ年月が経ったということですね! 時の経つのは、早いものです。私的には、23年前も今も…………あまり変わりの無い生活をしているような???(私の話はさて置き!)7月20日、第23回目で初めて授賞式と作品を拝見して参りました。

国内537点、海外277点の814点中、入賞作品は、金賞・銀賞・銅賞・佳作 計:21点 (Web審査による最優秀・優秀も含む)。海外からは、アメリカ・イギリス・イタリア・カナダ・韓国・シンガポール・スウェーデン・台湾・中国・ドイツ・ハンガリー・フィンランド・フランス・ポーランド・ルーマニア の学生が参加されたそうです。

また、Webの審査員は建築家・デザイナー・ジャーナリスト・アーティストなど、世界146名の方が審査し、最優秀賞・優秀賞の上位4点を選出。

その中から、数点の受賞作品をご紹介致します。

まずは、今年のテーマ
『あかりのあかりを求めて…………地球を大事にするあかり―光と陰影が生み出す新時代のフォルム―』

“光と影が生み出す”というテーマの総称が、まさに金賞受賞のペーテル・トロニ君の作品で表現されているようです。

ペーテル・トロニのコンセプトのひとつに「日本人の文化に合う」ということが挙げるれていました。
23歳の彼から見た「日本人の文化に合う」作品が、この『日食』なら……日本って……。

「なんという神秘的な国なのでしょ~!」

と、なんだか嬉しくなってしまいました♪

 

金賞、Web 優秀賞 日食』ペーテル・トロニ(Peter Toronyi)作
 

ペーテル・トロニ コメント

『日食』は形を変化させることにより、様々な光の演出を提供してくれます。このため、他の照明と異なり飽きにくく、3年でその価値を失い廃棄されてしまうというようなことが回避できると考えます。

 

この照明は太陽光パネルにより得られた電力をコンデンサーに蓄積することで機能します。1回の充電で5WのLEDを最高で半年間使用することが可能です。
『日食』は私たちが身を置く空間を照らすためではなく、雰囲気を演出することを意図しています。全ての照明が読書を可能にするようなものである必要はありません。生活の中で使用する照明の多くは機能に特化しており、ショートしたりその寿命が尽きたとしても、我々の心に感動や悲しみを残すことはありません。
『日食』はムードライトであり、毎日使うものではありません。

しかし、誰かがこのライトを点けるということは、その人の中にライトが生み出す光への意図的な欲求があり、心がその雰囲気を必要としているからに他なりません。これは、使用者の心がモノとリンクすることを意味します。もし、全ての製品がこのように人の心とリンク可能になれば、この大量消費社会で「ゴミ」という表現をなくせると思います。

素晴らしいコメントですよね! 受賞式でのスピーチは、日本語で皆さんにお伝えしました。その後のインタビューでは、ハンガリー語、英語でお話をされ、会場からは「スゴイ!」という声が聞こえて来ました。
展示しているブースでは、実際に充電したLEDを取りつけてくれて見せて頂きました。

使用していない時は、まん丸な球体です。LEDを装置して、サイドの部分をずらして、光を外に漏すという仕組みですが……本当に『日食』が出来上がって来ました。それはそれは、幻想的な美しさです。

 

銀賞 『香』イ・キュヒョン  チョ・ヘウォン 作
 

イ・キュヒョン&チョ・ヘウォンコメント

線香からそっと……香りが広がっているのを見たことがありますか。香りの効果は線香が燃えて出てくると、一般的に人々は考えます。しかし線香の先端には、燃焼による光も存在するのです。

 

もし、この光がゆっくりと10分間点灯しているとしたら、意味がちょっと変わってきますよね。部屋を繊細な香りで満たすのにつかわれる線香が、部屋を柔らかい光で充たすのです。
こうして、照明の新しい方法が生み出されます。

私はこの作品を見た時、今……まさに、お香の香りが漂ってきそうな感になりました。ショーケースがなければ、鼻を近づけていたかもしれません。
写真でみるよりも実際は、長く40㎝前後はあったかと。1本1本が独立していますから、写真右上のように1本ずつ使用することも出来るようです。LEDのおかげで、耐久力も断然アップ!“青白い光”に癒されます。

 

銅賞 『KAI』十鳥 雄介 作
 

十鳥(トットリ)雄介コメント

このあかりは、光よりも陰影によってそのフォルムを現します。しかし、陰影は光によって生かされ、生まれるものであり、どちらが欠けても成立しません。

 

一方、人は様々なものに生かされ、人そのものが成立しています。そのことに目をむければ、いままで、そしてこれからの地球への見方が変わってくるのでは?というメッセージをこめて制作しました。

形は、生命の源である海に古来から生存する“貝”をイメージしました。

硬い貝殻のアンモナイト型のような形ですが、実際には柔らかいイメージが伝わって来ます。光を射すというよりも光を包み込むという感じの作品でした。

 

佳作、Web 最優秀賞 『潮流』カルロス・アルベルト ダニエル・レーリンツ 作
 

 

本選で佳作、Web審査で最優秀賞を獲得しました作品です。
「地球を大事にするあかり」のテーマに基づき、素材は竹を使っています。しなやかなカーブを作り出して『潮流』を表現しています。

カルロス・アルベルトは、日本には(アジアとしても)、初めて来日されたそうで、日本の感想は……
「礼儀正しくて、規則正しい国」というのが、第一印象だったそうです。

う~ん。そう見えているんですか……ハンガリーとは、全く違う国だとも言われていました(具体的なことは聞けなかったのですが、どう違うのか、興味津津です)
日本文化との融合とも言える作品を、これからも造って行ってもらいたいですね!

 
さて……
審査委員長 栄久庵 憲司氏をはじめ、錚々たる方々の審査により選ばれた受賞者へ贈るメッセージの中で。

栄久庵 憲司氏より……
『日食』という幻想的な現象は、人の手では決して成し遂げることができない。どうしたらその感動を表現できるか?というところに着目し、再現してみたいという“意欲”と“技術”の感激を受けました。

個々の作品からは、“光”とともに「遊ぼう!」という想いが伝わって、見ているだけではなく、実際に下げて置いて日常的に使ってみたいと思わせる作品でした。

授賞式に参加された、審査員の方々と学生の皆さん。「おめでとうございます」

 

また、審査員と表彰状のデザインを手掛けられた 葉 祥栄氏の言葉の中に、私も感銘を受けた言葉が……

「デザインの価値は、何年経っても古びることは無い」

心に響く言葉です。

「何年経っても変わらない」という表現のもう1ランク上、というか、もうひと想い深い表現が「古びることは無い」という、この言葉には詰まっているような感じがしました。

実は、私もデザイン美術科出身でして……尊敬する教授の言葉の中で

「表現は自由。だけど……時代に流されないモノを造り、想いを創る」

もう、かれこれ30年近くなりますが……未だに心に残っている言葉です。

学生の皆さんの作品を拝見しまして、照明機器の将来が楽しみになりました。
私的には……息子や娘の世代の皆さんですが(笑)、想像力と妄想力はまだまだ湧いてくるモノがあります(?)
と思っています。というか、願望しています。(ちょっと、弱気になって参りましたっ!)

 
どうかこれからも……
“あかりのありか”

を求めて、デザイン性が豊かで、且つ日常的に使えて、地球にやさしい照明機器をこれからも造り出していってください。来年の作品も期待大ですね!!

 
 

第23回『コイズミ国際学生照明デザインコンペ』入賞作品展

会場:KOIZUMIライティングショールームTOKYO
Tel:03-5687-0081
東京都千代田区神田佐久間町3-12 

・JR「秋葉原駅」下車、昭和通り出口より徒歩5分
・地下鉄日比谷線「秋葉原駅」下車、4番出口より徒歩2分
・地下鉄都営新宿線「岩本町駅」下車、A4出口より徒歩5分

 
2010年7月20日(火)~9月7日  
10:00~18:00 水休
入場無料 (8月12日~15日夏期休業)

 

 

第24回『コイズミ国際学生照明デザインコンペ』応募要項

主旨:照明文化の向上と若き人材の育成

:金賞(1点) / 賞状・賞金100万円
  銀賞(2点) / 賞状・賞金30万円
  銅賞(5点) / 賞状・賞金10万円
  佳作(若干数) /賞状・賞金
  (賞金は税込み)

 

応募テーマ:
「あかりのありかを求めて……
テクノロジーをいかす心のあかり―Heart of Technology」

   
人類の歴史はテクノロジーの進化の歴史でもあります。
テクノロジーの発達は新しいライフスタイルや産業をもたらし、便利な暮らしも   
実現可能にしました。高いテクノロジーを用いるとき、この世界への敬愛やモ
ラルがあるか否かは重要な要素です。LEDの登場によって照明のデザイン
は新しい時代を迎えています。新光源というテクノロジーを見極め、あかりの
本質を未来にいかすデザインを求めます。

 
受付期間:

①登録受付
2010年9月1日~2011年1月31日(当日消印有効)

②作品受付
2011年2月10日~2011年2月20日(当日消印有効)

 
問合わせ先:

コイズミ照明株式会社 コイズミ国際学生照明デザインコンペ事務局
Tel. 06-6262-1369
FAX. 06-6266-7845
http://www.koizumi-designcompe.com
compe@koizumi.co.jp

      
受付時間:

10:00AM~5:00PM(月~金)担当:芳野、高木