『原宿シネマ 〜憧れを感じる映画たち vol.1〜』 坂東巳之助が語る 仮面ライダーと歌舞伎の意外な接点とは!?

(2015.01.09)
『第 24 回原宿シネマ 〜憧れを感じる映画たち vol.1〜』より歌舞伎俳優の坂東巳之助さん(左)と、東映特撮作品プロデューサー 白倉伸一郎さん。
『第 24 回原宿シネマ 〜憧れを感じる映画たち vol.1〜』より歌舞伎俳優の坂東巳之助さん(左)と、東映取締役 白倉伸一郎さん。
歌舞伎と仮面ライダー。一見不可思議な取り合わせですが、実は仮面ライダーの変身ポーズ、悪者の動きには歌舞伎と共通点が。『原宿シネマ 〜憧れを感じる映画たち vol.1〜』トークの模様を、企画に関わった松竹の岡部さんがレポート。
 
館長は歌舞伎に映画
ブログも話題の坂東巳之助さん。

12月14日、『原宿VACANT』で開催された『原宿シネマ 〜憧れを感じる映画たち vol.1〜』。歌舞伎俳優の坂東巳之助さんを館長に『仮面ライダー THE FIRST』を上映。その後東映取締役 白倉伸一郎さんをゲストにトークが繰り広げられました。

この企画のきっかけは、若い方にも歌舞伎に興味を持っていただける機会を作りたいと思い、2011年のスタート以降、20、30代の若者層を中心に話題となっている映画上映イベント『原宿シネマ』の主催者のシンカさんにご相談したことです。

『原宿シネマ』は“人生の一本に会いにいく”をテーマに毎回様々なフィールドで活躍中の方を館長に招き映画上映とトークショーを行うイベントです。館長セレクトの作品のよさはもちろん、館長の普段なかなか見られない部分についても知っていただけるので、好機だと思いました。

これまで松竹では「原宿シネマ×寅さん」という企画で『男はつらいよ』を上映していただいていた繋がりがありました。

 
一緒に人生を歩んできたと言っても過言ではない
巳之助さんと仮面ライダー。

 

館長には、若手俳優の登竜門である『新春浅草歌舞伎』への出演を控えた坂東巳之助さんを迎えました。映画『桜田門外ノ変』(’10)、『清須会議』(’13)でも大活躍の巳之助さんはそのブログ『日々是Show人』も面白くて話題になっています。好きなものへの愛情があり、その魅力を情熱的に語る姿を『原宿シネマ』のお客様に観ていただきたいと思いました。

その巳之助さんが選ばれた作品は、“人生の一本”というより、ご本人曰く「一緒に人生を歩んできたと言っても過言ではない」という仮面ライダーシリーズの映画『仮面ライダーTHE FIRST』でした。歌舞伎と仮面ライダーという組み合わせは、これまでになかったことで、非常に面白いと思いました。そして、東映ビデオ、東映のご協力を得、上映権許諾だけでなく、告知の面でもご協力頂き、会社を超えた協力体制が実現しました。

 
ライダーファン垂涎
プロデューサー  白倉伸一郎さんをゲストに。

当日は、歌舞伎、仮面ライダー、原宿シネマのそれぞれのファンのお客様が来場。巳之助館長は、上映前にご挨拶され、お客様と本編を鑑賞。引き続いてのトークショーでは、「いやぁ、面白かったですね。」と興奮気味にスタート。物心ついた頃には、ちょうどライダーシリーズがなかったという館長は、ビデオやDVDで昭和ライダーシリーズを観ていたそうです。巳之助館長は巨大化しない等身大のヒーローに魅力を感じる話など、仮面ライダー愛を爆発させました。 

そして、満を持して、巳之助館長が「神様のような人」と憧れる東映取締役の白倉さんをトーク相手としてご紹介。白倉さんは、平成仮面ライダーを多く手掛けたプロデューサーで、ライダーファンにも大変有名な方です。白倉さんも、ご自身が手掛けた本作を観るのは、2005年以来10年振りとのことでした。「久しぶりに観たけど、面白いなぁ。」と満足げに話され、「亡くなった長石(多可男)監督との思い出や、撮影所ゆかりの地の桜が咲くのを待ってから撮影したことなど、思い入れがあるから全シーン泣ける。」と語りました

 
かっこいいポーズをスローモーションで見せる
歌舞伎的要素を残す日本のヒーローたち。

その後、”歌舞伎”と”特撮や日本のヒーローもの”には歌舞伎的要素が残っていること”に話題は移りました。
「仮面ライダーは、変身するとマスクを被った姿になりますが、歌舞伎でも演目により面を用いることがあります。
仮面、面自体には表情がないので、体の動きなどで表情なければなりません。それが難しさであり、また共通点だと思います」と俳優ならではの見解を巳之助館長が述べると、「仮面ライダーは無表情で、何を考えているかわからない。(ライダーを演じる)スーツアクターは、平衡感覚がわからない中で演じている。」と白倉さんもスーツアクターのすごさを絶讃。そして、仮面ライダーは歌舞伎のひ孫のようなものと表現しました。日本の映画の黎明期には、歌舞伎の中継のようなものがあり、それが時代劇になり、やがてライダーに繋がっていったそうです。刀を持たず手持無沙汰になったヒーローが、見得の間で変身ポーズを取るようになったということのようです。(ライダーの変身ポーズは大相撲から来たと伝わっているそうです)

巳之助館長は、「格好いいポーズ・アクションをスローモーションで見せるというのは海外でもやっていますが、
歌舞伎の見得のように、また仮面ライダーのポーズのように、特に意味もなく格好いいポーズを格好いい間で、
しかも止まって見せるものはないと思います」と続けました。

 
会場には坂東巳之助さんの仮面ライダーマスクのコレクションも展示されました。
会場には坂東巳之助さんの仮面ライダーマスクのコレクションも展示されました。
 
一番“ライダーっぽい形”は
『車引』

歌舞伎の中で一番“ライダーっぽい形”ということで、巳之助館長が引き合いに出したのが、『車引』で桜丸が笠を取るシーンです。両手で9時45分の方向に笠を外す動作付きで「特に意味はなく、ゆっくり笠を外して登場を印象付ける為だけにかっこいいポーズをしている。ストーリーが動く前に入るので、登場人物に注目が集まり、ストーリー展開の指針にもなる」と解説。白倉さんは、歌舞伎の名乗りのライダーへの影響を指摘して、「海外では、なぜを敵を前に名乗るのか。敵を前に固まってるけど気後れしてるの?」と言われることがあると続け、ポーズをとったり(見得)、名乗ったりすることで意識も変身することが海外には伝わりづらいと話しました。

次に、巳之助館長が紹介したのが、『蘭平物狂(らんぺいものぐるい)』の奥庭での蘭平と花四天の大立ち廻りの場面。「理屈でない変身、見得(決めポーズ)、なぜ一斉に攻めて来ずに、一人ずつ、襲い掛かってくるのかというところは、ショッカー戦闘員との戦いの元になっているのではないか」と紹介。白倉さんも同意し、製作者としての視点から、「時代劇やライダーシリーズでも、倒された戦闘員の処理に困るので、怪人は爆発して自分でお掃除しているわけですが、歌舞伎では、そこも含めちゃんと見せ場になっていてすごいです。間の合わせ方など、俳優さんは非常にレベルが高いのですね。」と感心することしきりでした。

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参加者から「巳之助館長が本当に嬉しそうで、こちらまで嬉しくなりました」という感想が出る程、楽しそうだった巳之助館長。仮面ライダー、そして白倉さんという“憧れ”の存在を身近に感じる『原宿シネマ』となりました。

(松竹経営企画部広報室 岡部いずみ)