イケイケヤング陶芸家『イケヤン☆』展レポート&『イケヤン☆』作家展覧会情報!

(2009.09.25)

全国から若手陶芸家(およそ150人!)が集結しての年に一度の恒例イベント※『イケヤン☆』が、今年も美濃焼で名高い岐阜県多治見市の修道院にて開催されました。
※(イケヤン☆=イケイケヤング陶芸家の略称とのこと。)

現在活躍の「若手作家」と称されるのはだいたい20代から30代前半。やがて5年10年と歳月がたてば、皆、立派な中堅陶芸家と呼ばれていることだろう。その頃になると気楽な交流や、本気の友達作りも難しくなるのではないか?と予想。道も半ばで生業にできていないが日々が煌めく「今」だからこそ、互いに高め合い、触れ合おうじゃあないかというのがこの会の主旨。

ところで、イケヤン☆実行委員会を先陣きってまとめる青木良太氏、昨今の活躍ぶりには目を見張るものがある、注目の気鋭若手作家。その舞台は遠く海を渡り、NYで開催された展覧会『New ceramics laboratry Ryota Aoki’s NIPPON!』は大好評を博し、LAへの巡回も決まっているという。TBS系テレビ番組『情熱大陸』も現在彼に密着取材中。(10月末頃の放送予定。)そんな主宰者の青木氏は今回のイベントをこう語っている。

親しい顔もお初に見る顔も和やかムードの中「イケヤン☆」の合言葉で一斉に乾杯!
(以下会場写真すべて 益子焼/伊藤丈浩)
修道院が栽培するぶどう園の緑に囲まれ開会宣言。左が主宰青木良太氏。

「好きな陶芸で喰っていけるようになり、陶芸への恩返しです。そのために陶芸界を盛り上げたいと思いました。
このあと、各地で個展もあり制作がとても大変。でも、今回のイケヤン☆は多治見の若い人達がスタッフになってくれて色々なサポートをしてくれるおかげで開催できます。来年、再来年とドンドン大きくなって行きます。準備は大変ですが楽しいですよ!」

魅力溢れる企画も満載でスタートしたこのイベント。石川県金沢のくずし懐石で、器使いも参考になるギャラリー併設のアートなレストラン『a.k.a』がケータリングで参入、口福感は勿論、作陶のインスピレーションに繋がるような五感をも存分に満たしてくれた。さらに陶芸を目指すものならば一度は憧れるその道の重鎮、天才奇才とうたわれる鯉江良二氏などが登壇し、若者たちの前で繰り広げるトークセッション。めったにお目にかかれない大先輩の話を直に、一同釘付けとなっていたのは言うまでもないだろう。

有志スタッフが忙中会議を重ね練ったアトラクションで沸く会場。チームに分かれての対抗戦の数々はかなりの本気モードに! 手に汗握る場面も。写真はクリックで拡大します。
巨匠鯉江良二(写真手前)×青木良太によるトークセッション、「若者に伝えたいこと」。ラフロイグ(ウィスキー)片手に、熱く繰り広げられる。
金沢「a.k.a」のケータリングフードとお酒を楽しみながら、貴重な話に聞き入る参加者たち。イケヤンの夜は活気に包まれふけていく。

さらに、申し込みのあった陶芸家たちへの前ミッション「マイカップ持参」だが、フタをあけてみたらば驚きを隠せない。全国の有名ギャラリストやメディア関係者が集まり、そのカップたちをジャッジしてくれるというのだというから、これから前進したいと望む者にこんなチャンスはめったにあるものじゃない。

これらの豪華ゲストはほとんどが青木氏の活動軌跡。それらを後輩たちへと惜しみなくシェアする懐の深さには頭が下がる。だから、彼のスピーディかつナチュラルな飛躍ぶりには、努力や運もあるのだろうが他者へのこうした施しが自然と返ってきているのでは、と思うこともある。勿論、本人は何も求めていないだろうし、楽しんでいるだけなのだろうけれど。

数年前の暮れも押し迫るある12月に訪れた滋賀県長浜市のギャラリー『季の雲』の青木良太展で、彼の作品を初めて見る。そこには、トレードマークとなりつつある黒いターバンに片耳ピアスのいでたちの青年。スイスに奨学生として留学、帰国後第一弾の個展だったかと思う。

透けるほど薄いマットな白が、日の光を受けてほのかな光を放っている。エッジの効いたシャープさも魅力だが、どこか清らかな、優しさも共に在るバランスが美しく、私は円柱型の器を、つい購入してしまった。本人はこの不思議な魅力に気付いているのだろうか……と続けられる会話の片方で、そんなことを思っていた。伝えようとしたけれど、その時はやめた。自分の作品の魅力うんぬんよりも、ただ、ロクロをひく行為そのものに、もっぱらの興味が注がれていそうだったから。

手に触れたときの優しさと天使のおしりのようなフォルムが魅力の青木作品。モダン建築に和空間に、そして李朝家具などにも不思議と馴染む。 

器は、使えば欠けてしまうこともある。特に若い世代の生み出すものはその自由さゆえ使い勝手重視でないものも多々ある。でも、継げばいいし、欠けたままも風情となるのが古来よりの陶磁器の魅力。実用よりも、気にいったものを使うことで生まれる楽しさが、私は好き。それで充分に豊かになる。

若手陶芸家の行方やいかに。また、この活気に溢れるイベントの報せをもらうことが、今からの楽しみである。

 
すっかり秋の気配も深まる今日このごろ。アート巡りが無性にしてみたくなるのは私だけではないだろう。そんなあなたのために、さらに『イケヤン』に関わる若手陶芸家の作品を見てみたいな〜と好奇心そそられたあなたへ、秋の展覧会情報を!

 

青木良太展

開催期間:2009年10月26日(月)〜31日(土)
開催場所:桃居 
Tel. 03-3797-4494
東京都港区西麻布2−25−13
日祝休
http://www.toukyo.com/

 
青木良太展

開催期間:2009年11月14日(土)〜30日(月)
開催場所:CARGO
Tel. 076-422-5755
富山県富山市山室27
水休
http://www.cargo27.com/index.html

 
青木良太、大江憲一、栢野紀文、金理有、二階堂明弘、横山拓也 フロアプロデューサー・岡嶌要『へうげて、暮らすか延長戦』展

開催期間:〜2009年10月25日(日)
開催場所:ホテルクラスカ
Tel. 03-3719-8121
東京都目黒区中央町1−3−18
http://www.claska.com/

 
金理有展『色即世代』

開催期間: 2009年10月3日(土)〜10月17日(土)
開催場所:ギャラリーTAO
Tel. 03-3403-3021
東京都渋谷区 神宮前 4-8-6 メープルハウス
日月休
http://home.m07.itscom.net/taojp/

 
金理有『GEISAI#13』

開催期間: 2009年10月18日(日)
開催場所:Kaikai Kiki 三芳スタジオ
埼玉県入間郡三芳町竹間沢東2-6
http://www.geisai.net/g12/info/index.php

 
山田想展

開催期間: 2009年10月30日(金)〜11月8日(日)
まるふくCEPICA 愛知県常滑市原松町6−66—1
Tel.0569−35−2209
無休
http://www.e-marufuku.net/