女性のための、元気になれる俳句4 選・如月美樹 〜夏帯や運切りひらき切りひらき 鈴木真砂女〜

(2008.06.14)

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 気分が少し落ち込んだときは、この句を思い浮かべる。50歳を過ぎてからの、旅館の女将という座を捨てての出奔、その後の妻子ある人との情熱的な恋愛といった、作者の人生と重ね合わせてみることも可能だ。
 しかし、作品を作品としてそのまま鑑賞することができるのも俳句のいいところ。季語は「夏帯」。作者は銀座に小料理屋を開き、日々、着物で仕事をしていた。その仕事着の帯を締めるときの気持ちを詠んだ一句である。
 白馬に乗った王子様や、誰も知らない才能に気づいてチャンスを与えてくれる人など、決して現れない。自分の人生は、自分の手によってしか開かれないことを知ったとき、人は強くなれる。夏帯は、私達にとっては、出勤時に選ぶハイヒールのようなものか。
 真砂女が夏帯をきりりと締めたように、私達はハイヒールに足を入れることで、今日も一日が始まる。