女性のための、元気になれる俳句30 選・如月美樹 あこがれはオリオンの裏側のやみ 鎌倉佐弓

(2008.12.15)
 

 夜、オリオン座が南の天高くのぼる時期になると、冬だなあという思いを強くする。天体望遠鏡を買ってもらった小学生のとき、将来は天文学者になりたいと夢見ていた。星の物語であるギリシャ神話を懸命に読んだのもこのころ。「宇宙には果てがない」という意味がわからずに、毎晩そのことばかり考えて過ごしたこともあった。
 望遠鏡のレンズがくもり、カバーがかけっぱなしになったのはいつからだろう。夜毎、遠い宇宙に思いを馳せていた少女は、自分の半径1.5メートルのことばかりに気を取られ、人間関係に四苦八苦し、10年後のことはおろか明日のことすら想像することもできない立派な現代人になった。
 オリオンの裏側の闇に憧れること、それはもう一度宇宙について思うこと。そして大人になった少女は、自分が存在していることの不思議にいまさらながら気づくだろう。掲句初出『天窓から』(1992)。