Shibuya Tourbillon ~20~ 秋の渋谷から。写真の海賊!? ペーパーパイレーツ、想像建築……。

(2014.10.08)
『アツコバルー arts drinks talk』で開催された写真イベントfromニュージーランド『ペーパーパイレーツ』
『アツコバルー arts drinks talk』で開催された写真イベントfromニュージーランド『ペーパーパイレーツ』準備のため400枚の写真を壁に貼っていく、の図。
渋谷を吹く風はもう秋色。渋谷に戻ってきたアツコさん、ギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』、ライブハウス『サラヴァ東京』のオーナーはアクティブです。日本で初開催となった写真海賊イベント『ペーパーパイレーツ』、渋谷ARお散歩ツアー、そして想像建築画家(!?)野又穫展について。
ペーパーパイレーツの海賊たち。

9月23日秋分の日に『ペーパーパイレーツ』というイベントを催した。プロ、アマ構わずで誰でも自分で撮った写真を送ってください。それを壁にバアーっと貼って、DJ呼んでお酒飲んでパーティーして、最後に自分の気に入った写真を壁からはがして持って帰る。というイベント。ニュージーランドですでに3回やってうまくいったから今度は東京でやってみたいのです。という1通のメールをもらったのがはじまり。すべてはフリーなイベント、だからパイレーツなのだそうだ。東京の100軒のギャラリーに送って返事がきたのは3軒だったという、私のギャラリーがそのうちの一軒だった。もっともこれは若者同士でやったほうが面白いと判断して、25歳の息子とその元同級生だった私のギャラリーの責任者のなぎささんに運営を一任した。

SNSやツイッターを通して開催情報がひろまり、日本国内からも外国からも毎日のようにA3のサイズにプリントした写真が送られてきて、それを見ているだけでかなり楽しかったが、イベントの前の晩は滑り込みでデータで送ってくる人たちがいて、スタッフたちはほぼ徹夜でコンビニで出力したそうだ。集まったのは約400点の写真。主催者のティム君はニュージーの24歳のカメラマン。ティムの相棒はやはり24歳のカメラリポーターのジョー君、彼はなんと今イラクで英語の教師をしているので30時間かけて、このためだけに日本に3泊でやってきた。

プロ、アマ構わずで誰でも撮った写真をメールで送信。それを壁に貼って、DJ呼んでお酒飲んでパーティーして……。
プロ、アマ構わずで誰でも撮った写真をメールで送信。それを壁に貼って、DJ呼んでお酒飲んでパーティーして……。
最後に自分の気に入った写真を壁からはがして持って帰る!
最後に自分の気に入った写真を壁からはがして持って帰る!
それぞれの写真の裏にはメルアドやメッセージ。参加者たちもおおいに楽しんでくれてツイッターで多くの人がアップしてくれた。
それぞれの写真の裏にはメルアドやメッセージ。参加者たちもおおいに楽しんでくれてツイッターで多くの人がアップしてくれた。
主催者のティム君はニュージーの24歳のカメラマン。ティムの相棒はやはり24歳のカメラリポーターのジョー君。『アツコバルー arts drinks talk』なぎささん、あきらさん。
主催者のティム君はニュージーの24歳のカメラマン。ティムの相棒はやはり24歳のカメラリポーターのジョー君。『アツコバルー arts drinks talk』なぎささん、あきらさん。

当日、朝から「ねちねち君」(ソフト粘着剤)を使って片っ端から写真を貼っていく。400の視点が400の画像になって一堂に会するのはそれだけですごい迫力。ドキドキワクワクしてくる。夜7時になると続々と人が集まって、パーティーのはじまりだ。ティムが取り付けたスポンサーからのラム酒がふるまわれ、会場は上機嫌が伝染してゆく。

驚いたのはみんながすごく必死に写真を見ること。普段展覧会でみせる態度とは違い、自分のものにできる(しかもタダ)と思うと選ぶ目が真剣になるのだ。という大発見をした。みんなちゃんと見ている。9時ジャストに好きな写真をはがしてよい決まり。9時10分前頃にはすでに皆、自分の狙った写真の前にスタンバイしている。作家の方は自分の写真が売れ残ったらどうしよう? 誰が持って行ってくれるのかな? とこれもドキドキ。そしてマイクから「はいどうぞ!」のアナウンスが聞こえるや、あれほどあった写真がみるみるはがされてみんなの鞄に収められてゆく。

有名な人の写真展をいくつも見たが、あれほど熱い目で見ていた人たちはいなかった。そしてゲームがあって面白い。参加者たちもおおいに楽しんでくれてツイッターで多くの人がアップしてくれた。それぞれの写真の裏にはメルアドやメッセージ。もらっていった人たちとの新しいつながりが生まれているだろう。

作品が売れない。と嘆くよりも(私はいつも嘆いているけど)フリーで楽しいこんなパーティーを繰り返すうちに本当に欲しい写真をお金を払って買う人たちが出てくるのだろう。道は長く、楽しい。

『PAPER PIRATES TOKYO』

 
同じく渋谷。
ヒカリエからARでお散歩。

藤幡正樹さんの『ギャラクシーラボ』が渋谷ヒカリエ『8/01/COURT』で行ったメディアアートの実験。その中のイベントで、渋谷の街をAR(拡張現実)で探検しようという素敵なツアーが10月4日にあった。

萩原朔美さんと藤幡正樹さんが渋谷の街角に古い渋谷の映像をオーバーラップしたり、郵便ポストにスマフォを当てると、萩原朔美さんがポストの上に乗っかっていたり。そんなことができちゃうAR。まだまだ活用されていないが可能性はとっても大きい。『サラヴァ東京』のマンスリープログラムにも、毎回ARで写真を見るとその人が歌っていたり、と面白い仕掛けがしてあるが、渋谷の街を歩きながらARできるって素敵。

藤幡正樹さんとデザイナーの佐藤卓さんそして野又穫さんはなんと芸大の同期生、予備校でも一緒だったというから古いつきあいだ、しかも3人3様、違う分野で活躍している。野又穫さんの個展が行われているアツコバルーでこの3名が渋谷でトークをした。
*写真提供 東京藝術大学大学院映像研究科オープンラボ Galaxy Lab.2014

 
渋谷の街をAR(拡張現実)で探検しようという、『ギャラクシーラボ』よる素敵なツアー。
渋谷の街をAR(拡張現実)で探検しようという、『ギャラクシーラボ』よる素敵なツアー。
渋谷の街角に古い渋谷の映像をオーバーラップしたり、郵便ポストにスマフォを当てると、萩原さんがポストの上に乗っかっていたり。
渋谷の街角に古い渋谷の映像をオーバーラップしたり、郵便ポストにスマフォを当てると、 萩原さんがポストの上に乗っかっていたり。
まだまだ活用されていないが可能性はとっても大きいAR。
まだまだ活用されていないが可能性はとっても大きいAR。
 

開催中!
野又穫 展 Ghost -浮遊する都市の残像。

想像建築の世界を描く素晴らしい画家、野又穫の新作展が渋谷のアツコバルーで開催中。渋谷をテーマに初めて油絵に挑戦した。渋谷から徒歩10分ほどの池尻大橋に生まれた画家は渋谷に親しみがある。今回のテーマは「Ghost」、建物の気配や記憶の中にある建築を描く。という新しい試みに挑戦している。昔の細密画を思わせる野又の作風を愛する人たちは少し驚いてしまうかもしれない。実は、彼は震災の後、建築に対する信頼を失ってしまったという。今描きたいのがリアルに似せた建築ではなく、心に残る残像としての建築なのだそう。2013年には渋谷駅前をテーマに2つの記念すべき大作をものにし、町田市の美術館で発表した。町田市立国際版画美術館『空想の建築 – ピラネージから野又穫へ』 

今回はそれに次ぐ作品たち。建物の気配を表したかったという。彼のビジョンは私たち日本人が持っている「はかないもの」へのサウダージを思い出させてくれる。昔の日本の家は20年もてばよかった、西洋の真似をして壊れない建造物を作ってきたがやはり壊れた。それは日本の大地が揺れているから。人の心も建物も揺れて動く。絶対的なものも永遠も存在しない、って知っているはずだったのに。野又穫の新作絵画に震災後の日本人の意識を感じる。

野又穫 展 「Ghost」
浮遊する都市の残像

2014年11月3日(月・祝)まで

開催中の『野又穫 展 Ghost -浮遊する都市の残像』。
開催中の『野又穫 展 Ghost -浮遊する都市の残像』。
渋谷から徒歩10分ほどの池尻大橋に生まれた画家 野又穫 は渋谷に親しみがある。渋谷をテーマに初めて油絵に挑戦した。
渋谷から徒歩10分ほどの池尻大橋に生まれた画家 野又穫 は渋谷に親しみがある。渋谷をテーマに初めて油絵に挑戦した。
アツコさんのギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』

TEL:03-6427-8048
所在地:東京都渋谷区松濤1-29-1 クロスロードビル 5F
営業時間:イベントによって異なる。

入場料:500円(ワンドリンク付)

営業時間:水~土 14:00 ~ 21:00 、日~月 11:00 ~18:00
定休日:火