Shibuya Tourbillon ~18~ 東京 – パリ 老いも若きもアヴァンギャルド。

(2014.07.14)
sibuya-tourbillon-18-01photo / Yann Revol 『二人のホドロフスキー 愛の結晶
アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン = ホドロフスキー

共作ドローイング展』のふたり。
東京・渋谷のギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』、ライブハウス『サラヴァ東京』のオーナー アツコ・バルーさんのコラム『シブヤ・トゥルビヨン』。ついにアヴァンギャルドにショー chaud! 熱い夏の到来。開幕するカルト映画の巨匠ホドロフスキー ドローイング展、パリの若くてパワフルなギャラリー『ランラサブル』、若きアーティストの憧れボザールの卒業制作展について。東京もパリも燃えているのです。
レジスタンスが立ち上がる?
例の法律が国会を通ってしまった。NHKは報道の自由を奪われた。社会が一方向に行き過ぎると、それまで黙っていたレジスタンスが声を挙げ始める。危機に直面すると人は賢くなる、過激になる。つまり面白くなってくる。(決して面白がっている訳ではないので誤解のないようにお願いします。)人間ロボット化の進んでいる我が国で、唯一、人と違うこと許されるのがアート活動。空気を読むこともなく、我が道を突き進むのがよしとされるのがこの世界、アートである。これからますますアートが頼もしくなってくることだろう。

そんな中で、我が道を突き進んで85年になるカルトの巨匠、ホドロフスキーの日本で初めての展覧会が『アツコバルー arts drinks talk』で開かれる。私は今パリで、ほぼ毎日彼らの自宅に通ってジクレー(インクジェットプリントのことで新しい版画の形態)のチェックやサインの作業を進めている。またもや新作の映画のロケに突入している巨匠は自宅でも同時進行で3つのバンド・デシネ(bande dessinée コミック)の脚本を書き続けている。そんなワーカホリックな彼と妻のパスカルだが、私が行くたびに何か新しいエピソードを披露してくれるのが楽しみである。

 
二人のホドロフスキー 愛の結晶
稲妻にうたれたように。

妻のパスカルは夫のほとんどの仕事に付き添う。彼らは二人で一人という感じのチームワークである。彼女と彼の出会いは運命的だったという。ホドロフスキーがずっと行っている無料のタロットカードのセッションで、ある日、友人についてきたパスカルがタロットカードを引くことになった、彼女は数日前から同じ夢を見ていたという。自分が死ぬ、という夢だ。カードを引く前にホドロフスキーは何を感じたか、そのことをズバリ言い当てた。それ以外にも彼女の人生のすべてを一瞬で言い当てたという。それは女性を魅了する手口ではなく、ただ二人の間に不思議な電流が走った感覚がしたそうである。まるで映画のワンシーンのようだった、とパスカルは語る。

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アレハンドロとパスカルのホドロフスキー夫妻。ふたりの出会いはタロットカード。


「カップルは何かを生み出さなくてはいけない。」

……とホドロフスキーは言う、「過去に2回結婚したがいずれも夫婦の間に競争心があり心が休まらなかった。パスカルと暮らして初めてお互いを認め合い、尊重する関係が築けた。友情でも愛情でも何かを作らないといけない。と私は思うのだ。私は子供は作れないから二人で絵を産み出した。」

大人買い続出、パリの展覧会。

パリの 画廊 “Foret Verte(フォレ・ヴェルト)” のアレハンドロ&パスカル・ホドロフスキー展では、オープニング前にどうしてもみたいというファンが一人で3枚、4枚と買い込んで、はじまる前にほとんどが売れてしまった。しかも売りたくないという作家の気持ちで、大きな作品には200万円という値段がついていたにもかかわらず……というフィーバーぶり、であった。今回アツコバルーでは、52点を展示する。それぞれジクレー(インクジェットプリントのことで新しい版画の形態)でエディション5、すべてに二人のサイン入りだ。で限定5枚がサイン入りとなる。日本のファンにも手の届く値段で、とお願いしたので約5万か~10万円という特別価格である。このような機会を設けてくれた彼らに感謝する。

『二人のホドロフスキー 愛の結晶
アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン=ホドロフスキー
共作ドローイング展』
会期:2014年7月17日(木)~9月21日(日)
料金:500円(ワンドリンク付)
*内覧会、先行販売会:2014年7月16日(水)19:00 〜 21:00
 一般のお客様40名をご招待します。
 要予約。詳しくはこちら。

会場:『アツコバルー arts drinks talk』
営業時間:水~土 14:00 ~ 21:00 、日~月 11:00 ~18:00
定休日:火
夏季休暇 : 8月12日~19日

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アレハンドロ・ホドロフスキー / パスカル・モンタンドン=ホドロフスキー『消防少年』” L’enfant pompier ” – « El niño bombero »
さてもパリ。21歳で「飽きない」ギャラリー
”L’Inlassable” をはじめた男子二人組。

さて、パリのこのごろ。フランスのアート界が隣のロンドンに比べて保守的でつまらない、という話を私がしたら友人の弁護士でコレクターの女性が「そんなことはない、パリにも若くてパワフルな連中がいる!」と私に紹介したのがこの、”L’Inlassable ランラサブル”=飽きない、という名のギャラリー。

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”L’Inlassable”が掲載された『Beaux Arts』誌、2014年4月のパリ特集。

大学で美術史を学んだユリスが、卒業と同時に幼なじみでミュージシャンのジョンを誘ってはじめたのだが、最初はただのショーウインドウひとつだった。とはいっても、かなり面白いショーウインドウ。あるときは覗き穴からビデオ作品を見る仕掛け、はたまたパフォーマンスなどで話題をさらった。

sibuya-tourbillon-18-04幼なじみのユリスとジョンがはじめた”L’Inlassable ランラサブル”=飽きない、という名のギャラリー。

 

オープ二ングは道路、それでも300人の仲間が集まった。すぐそばにある美大、ボザールの学生の作品を中心に最初は何でもありというチョイスだったが3年経った今では音楽レーベルとアートとの2本立て。1年前にガレージを手に入れてクルマ1台のスペースで展覧会を開いている。しかしそんなことではおさまらない、怖いもの知らずの二人は世界中のアートフェアに出張って行く。「でもどこのアートフェアに行っても若いと馬鹿にされるんだ、特にフランスは若者に対してひどいね」という。しかし私は若くして始めたということにうらやましさを感じる。どんな間違いだって、とんでもないことだってできてしまう。

sibuya-tourbillon-18-05ランラサブルの2人、中央はインターンのゾエちゃん。

sibuya-tourbillon-18-06ガレージの入り口の正面にはストリートアートが。

なんせ若いギャラリーで、来る人も若い、その日ちょうどバカロレア試験の合格発表の日で、「受かったよー!」と飛び込んでくる高校生や、スクーターでガールフレンドと乗りつける青年あり。「そうだ、今日はボザールのオープン・キャンパスだから一緒に行こう。」ということで目と鼻の先にある美大に歩いていった。構内の展示スペースには彼らが扱ってる学生作家がずらり。我が家のように大学を歩き回り私を案内してくれる彼らがすごくキラキラして最高にいいな、と思った。そうだよ「不況だ、」と嘆く前に行動せよ、だよね。

ギャラリー 『L’Inlassable ランラサブル 』Facebook
ボザールの卒業制作展。
そしてもうひとつパリから。セザンヌにモネ、すごい卒業生を誇るパリのボザール(École des Beaux-Arts パリ国立高等美術学校)の学祭を、2日間(2014年7月4日~5日)に渡って訪れた。音楽や模擬店というお決まりのお祭りと同時に学年末の発表会でもある。30あるアトリエはそれぞれ特徴ある作家たちが率いる一種の徒弟制度の研究室だ。中には川俣正のアトリエもある。学生は入学時からポートフォリオを見せて教授に弟子入りを申し込むが、全員希望のアトリエに入れるわけではない。5年間で修士課程が終了、その間2回、半年から1年、ヨーロッパ25カ国の美大に留学できる。もちろん先方の教授に弟子入りできればの話だが。

学生たちの作品より。

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アツコさんのギャラリー『アツコバルー arts drinks talk』

TEL:03-6427-8048
所在地:東京都渋谷区松濤1-29-1 クロスロードビル 5F
営業時間:イベントによって異なるのでホームページで確認

入場料:500円(ワンドリンク付)