女性のための、元気になれる俳句22 選・如月美樹 〜胡桃割る閉じても地図の海青し 寺山修司〜

(2008.10.20)
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 胡桃を割るという行為には孤独を感じる。ぱちんと胡桃の殻を割って中を取り出すとき、きっとそこには他に誰もいないだろう。
 地図は、傍らに置かれているのではない。どこか、この場所からは見えない本棚にひっそりとしまわれているのだと思う。それを広げて、海の大きさに思いを馳せ、この海を越えてどこか知らない世界に行くのだということを激しく夢想した少年時代があったのだ。
 閉じても青い地図の海のように、その思いは、どこかになくしたようでいながら、大人になった彼の中に今でも確かに息づいているはずだ。掲句初出『われに五月を』(1957)。