東京オペラシティ アートギャラリー『梅佳代展』 決定的瞬間で辿る
天才 梅佳代の世界。

(2013.05.05)

『うめめ』より 2004年 © KAYO UME

東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の『梅佳代展』。衝撃的デビュー作品であり、木村伊兵衛写真賞を受賞した『うめめ』をはじめ、初期作品『男子』、『女子中学生』シリーズ、最新写真集『のと』で発表した故郷・能登をテーマにしたシリーズまで、写真家 梅佳代さんのこれまでの13年の軌跡を、アイディアいっぱいの展示で辿ることができます。決定的瞬間を捉える天才、梅佳代さんにお話をうかがいました。

■梅佳代 プロフィール

(うめ・かよ)写真家。1981年石川県生まれ。2000年『男子』、’01年『女子中学生』シリーズで写真新世紀佳作受賞。’06年初の写真集『うめめ』を発表、第32回木村伊兵衛写真賞を受賞。その他主な写真集に、『男子』(’07年)、『じいちゃんさま』(’08年)、『ウメップ』(’10年)など。日常の光景を独自の視点で切り取り、様々な媒体や展覧会で作品を発表している。現在開催中の『梅佳代展 UMEKAYO』は国内外の美術館では初の個展となる。最新写真集『のと』(新潮社)が4月26日刊行。

梅 佳代『のと』


◯梅佳代さんトリビア 幸せを感じる瞬間は韓国ドラマ『太陽を抱いた月』でキム・スヒョンを見ている時。同学年になる1980年生まれの嵐 大野智、朝青龍、妻夫木聡や女性では小池栄子、優香を応援している。好きな写真家は選べないほど多いが特に林家ペー。ライバルは写真専門雑誌『アサヒカメラ』投稿ページに投稿している人全員(!)。毎月必ずチェック、勉強している。梅佳代さんは同誌で「梅佳代もこの一枚」を連載中。

●『梅佳代展』で展示中の作品

『男子』より 2000-2002年 © KAYO UME

『能登』より 2012年 © KAYO UME

『能登』より 2009年© KAYO UME

『じいちゃんさま』より 2007年© KAYO UME

『うめめ』より 2002年© KAYO UME

『ウメップ』より 2009年© KAYO UME

『ウメップ』より 2009年© KAYO UME

『男子』 2000-2002年 © KAYO UME
『男子』から『のと』まで
約570点、一挙公開。

==『梅佳代展』では『男子』、『じいちゃんさま』、『シャッターチャンスPart1、2』、『女子中学生』、故郷の能登を撮影した『能登』と6つのテーマ別にコーナーを設けて、約570点、一挙公開されています。実際に展示を自身でご覧になっての思いは? 

梅佳代:部屋ごとにみんな違うテーマなので、ひとつの山に向かって盛り上がってくというよりは、バンッ! バンッ! とそれぞれの部屋(コーナー)が際立っている、という感じです。『男子』や『女子中学生』の部屋は、子どもたちの写真なので勢いがあるし、『能登』は、穏やか。自分で言うのは変ですけれど(笑)、すごいなあって思います。

==特に気に入っているところは?

梅佳代:うーん、全部気に入っているので……(悩)。しいて言うなら『じいちゃんさま』の部屋かな。一番長い間撮ってきていることもあるし。ひとりの人をこれほど長い時間撮り続けてきたことはないです、「(じいちゃん)生きてるなー、うれしいなー。」と思います。1998年からはじまって写真集『じいちゃんさま』を出して(’08)、その後、つい最近までの写真を時系列で部屋をぐるっと一周するように展示してあります。この部屋に入るのは絶対に忘れないで! 

『梅佳代展』
だからこそできる見せ方。

==能登の若い子たちの写真がいっぱいの『能登』のコーナーから、奥の『じいちゃんさま』のコーナーにつながる面白い構造になっていますね。写真として時間を分断したものを6つのテーマでまとめています。それを全体として改めて見なおしてみて初めて気がついたことなどはありますか? 展覧会のために新しい展示をしてみて発見したことなど。

梅佳代:そういうのは後からわかることが多いんですよね。『じいちゃんさま』、『男子』はこれまでにも何度が展示をしたシリーズなので、どのように見せたらいいかイメージが湧くし、頭の中に展示構成のデータがあって、こうすれば面白くなるというのがわかっています。だんだん熟成されているというか。『男子』の部屋は天井も床も使って、今回だからできる、ということもかなりありました。もし部屋がひとつしかない会場でやってくれと言われたら今回のようなスタイルでは見せなかったと思います。『女子中学生』も今回の展覧会だからこそ出せるものだと思いました。


能登の若い子たちがいっぱいの『能登』の部屋から『じいちゃんさま』の部屋に繋がる。
楽しくおちゃめな『じいちゃんさま』の部屋。未発表の作品も公開されている。

圧巻の『男子』の部屋。床の上にも『男子』が……! 

小学校の時いました、こんな男の子。天井からも……。
カメラを常に持ち歩くから
いつでもシャッターチャンス。

==白目を剥いてる男子、電車の中で寝込んでしまう男性、お化け屋敷から出て大泣きする少女たち……と、梅佳代さんの写真はどこかで見たことがあるようなシーンだけれども信じ難い一瞬の写真です。このような奇跡の一瞬を撮る。そのためのコツといいますか、心がけのようなものはありますか?

梅佳代:……(考えて)強いて言えばカメラをいつも持っていることかな。誰でもそんな瞬間に出会ってるはずです、自分では特別なことに出会ってるとは思っていないんですけど、写真で見たらすごい瞬間だと思うことはあります。特に今回みたいに美術館の大空間で展示する場合や、写真集としてわざわざ発表したりしているのを見たら、なんだか日常が特別に見えるかもしれませんね(笑)。

==たとえば私たちが「はっ! これはシャッターチャンス!」と思ってももう遅い、カメラ構えてもその瞬間はなかなかつかめないものです。ところが梅佳代さんは、その瞬間にカメラのレンズを覗いた状態で臨めるという不思議があります。

梅佳代:写真で見ると、面白い瞬間というのはすごく短くて0.5秒くらいに思えるかもしれないですけれど、実は1分半くらいあったりします、結構長いんです。そこにカメラがありさえすれば充分間に合います。

==梅佳代さんにとっては、一瞬というより流れに近いものなのかもしれませんね。

梅佳代:そうですね、連続写真で撮っているものもありますが、長い流れの中で写真を撮っている、そういう感じです。

***

==今回の展覧会は梅佳代さんにとって初めての美術館での展覧会で、これまでの集大成であり、ステップアップ、通過点のひとつといえると思います。ここからまた新しい展覧会、作品が生まれていくのかもしれませんね。

梅佳代:今回新作として『能登』のシリーズを展示していますが、写真集としてもまとめて『のと』を発表しました。写真集を作るために写真を選ぶことと、展示のために写真を選ぶことではなんとなくちがうんですよね。改めて構成するのはたいへんでしたが、選択しなければならない時はなるべく迷わないように、「深く考えない」で、その時の感覚を大切にするようにしました。実際、写真のセレクトやアイディアはその日の気分で変わる。さっきは『じいちゃんさま』が一番と言ったけど明日になったら変わってるかも(笑)。

==センスや感覚で写真を選ぶところは、DJ的でもありますね。

梅佳代:DJ!?(笑) 感覚的なんですけど、そこは写真家として急に客観性を発揮することもあるんですよ(笑)。

『梅佳代展』


会期:2013 年 4 月 13 日(土)〜6 月 23 日(日)

会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿 3-20-2
時間:11:00 〜 19:00、金土〜20:00*最終入場は閉館の 30 分前まで
休館日:月*祝日の場合は翌火、*ただし4月30日(火)は開館)
入場料:一般 1,000円 / 大・高生 800円/中・小生 600円
お問合せ電話番号:03-5353-0756

主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団、産経新聞社
特別協賛:日本生命保険相互会社

協力:相互物産株式会社

企画協力:pdash

* 同時開催「収蔵品展 044 難波田龍起の具象」、「project N 52 秋山幸」の入場料を含みます。収蔵品展入場券 200 円 (各種割引無し)もあり。

* 閉館の 1 時間前より半額(夜割)。