女性のための、元気になれる俳句11 選・如月美樹 〜少年の机に地図と空蝉と 大木あまり〜

(2008.08.04)
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 この句の季語である「空蝉(うつせみ)」は、蝉の抜け殻のこと。木の幹などにかじりついた抜け殻を、子供の頃はよく取ってきたものだ。
 さて掲句、とある夏休みの景。少年の机の上に広げられた地図、そして蝉の抜け殻。地図は、これから出かける山の詳細地図かもしれないし、大陸の示された世界地図かもしれない。
 それだけではない、ここにはもっと別のものも見えてくる。帽子、虫眼鏡、色鉛筆、方位磁石……。少年はこの句の中には登場しないけれど、彼がいま、人生の途上のどのあたりにいるのか、どんなことを考えて過ごしているのかが、鮮やかに見えてくる。
 少年にとって夏は果てしなく長く、不思議と冒険に満ちている。そして、私達大人は、そんな夏があったことを忘れ去っている。掲句初出『雲の塔』(1993)。