池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALK夏よ永遠に!
サザンオールスターズのライブに行ってきた。

(2008.08.19)
 来年から無期限活動停止を発表し、その後発表したシングル『I AM YOUR SINGER』が瞬く間にオリコンチャート上位に上ったり、以前発売したベスト盤のアルバムがまた売り上げをのばしたりと、何かと話題を呼んでいるサザンオールスターズ。その「デビュー30周年記念ライブ・真夏の大感謝祭」に週末、出かけてきた。

 野外ライブは2年ぶり、そして今度はいつ見ることができるかわからないとあって、今回の横浜・日産スタジアムのライブのチケットはかなり入手困難のプラチナチケットと言われている。
 私はインターネットの先行予約抽選に申し込んでおいたら購入権が当たったのだけれど、周囲に聞いたら「当たらなかった」という声も多数。直前にYAHOO! オークションで確認したら、1枚2万円近くの値がついているチケットもあった。ラッキーにもゲットできたお宝チケットを握りしめて、一路、新横浜へ。

 土曜日。台風が近づき心配されていた天候も、なんとか持ちこたえている。東横線菊名駅で横浜線に乗り換えるとき、ざざっと大勢の人が降りた。普通な感じで格好もバラバラなので、乗り換えの多い駅なんだなあ、と単純に思っていたら、なんとその人々も新横浜へ。皆、サザンのコンサートに向かっていたのだ。

 駅から人々が大きなうねりとなって日産スタジアムを目指す。今回のライブは4日間で30万人を動員するという。今日1日で7万人以上がここに集まってくるということだ。

 今まで数々のライブやイベントに行って思ったことは、訪れる人が皆、似たようなファッションの傾向にあるということ。アコースティック系ならナチュラルに、ロックならロックっぽく。すっかりアーティストになりきっている人も多い。
 しかし、到着してみた日産スタジアムは違った。皆、本当に“普通”なのだ。そこらへんを歩いていた人々がたまたま、ここに集まってきたという雰囲気。カップルあり、家族連れあり、子連れあり。乳飲み子を抱いているママもいる。なんとなく、郊外のショッピングセンターという感じだ。

 唯一、印象的な点と言えば、最新シングル『I AM YOUR SINGER』の初回生産限定番のオマケについてきた、鶴をモチーフにしたハッピを、ライブ会場に着くなり羽織る人が数多くいたということ。一気にぐぐっと連帯感が強くなる。

 夕闇迫る頃、遅れることなくライブは始まった。おしゃべりもほとんどなしで、休みなく、これまでの代表曲やファンから人気の高い曲を歌い続けた桑田佳祐さんと演奏し続けたメンバー。初期の人気曲『YOU』からアンコールの最後は『YA YA(あの時代を忘れない)』で、なんとぶっ続けで3時間という大コンサートだった。スクリーンには歌詞が出て、7万人が一緒に歌い、踊り、手拍子をする。歌と共にあれやこれやと思い出し、思わずじんときた瞬間もあった。

 自然しかない九州の町で生まれ育ち青春を送った私には、夏の遊び場は海しかなかった。それもお洒落な海岸や浜辺ではなく、岩だらけの荒海。遊びといえば、シュノーケルをつけて素潜りしたり、ひたすら沖へ沖へと泳いでみたり。もちろん海の家というしゃれたものも、売店すらない。
 そんな折々、ラジカセから、カーステレオから、聞くともなしに流れてきたサザンの曲は、そうと意識しないうちに私の夏の歴史と重なっていたのだった。恐るべしサザン。「湘南ってどんなところなんだろうねえ」と、友人と語ったあの日も昔のことだ。

 ライブが終わったとたん、大粒の雨が降り出した。ハッピを脱いで、7万人の観客はまた普通の人々に戻っていく。夏の終わりはいつだって、わけもなく物悲しい。ずっとそんな風に感じていたことを、久しぶりに思い出した気がした。

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開演前。雨も降らず、この青空。

会場の日産スタジアムに向かう“普通”の人々。

左右の女性が身につけているのが『I AM YOUR SINGER』のハッピ。真ん中の男性が身につけているのが、1995年に発売されたベストアルバム『HAPPY!』に封入されていたハッピ。

メンバーの写真の前で記念撮影する人々。なんと記念撮影も順番待ち。

(2008年8月19日 anan編集部 池田美樹)