リブロ・トリニティ – 12 - 『フランスAOCワイン事典』須藤海芳子 著

(2009.10.14)
~著者+編集者+書店スタッフ、著者+書店販売員+読者……3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

須藤海芳子著

『フランスAOCワイン事典』

須藤海芳子著
『フランスAOCワイン事典』


三省堂のHP『Words Wide Web(ワーズワイドウェブ)』の『フランスAOCワイン事典』のページはこちら。

■ 著者より

須藤海芳子(すどう・みほこ)

1968年東京生まれ。
高校2年の夏に経験した家族とのパリ滞在で、すっかりフランスの食文化に魅せられる。大学時代には、フランス=ヴィシーに短期留学。ホームステイでフランスの家庭料理に触れる。明治学院大学文学部フランス文学科を卒業後、メルシャン株式会社勤務を経てフリーに。1994年にはフランス=ディジョンに渡り、ワイン銘醸地ブルゴーニュ=ジュヴレ・シャンベルタンで収穫を体験。その後、半年かけてフランス各地のワイナリーを巡る。現在は、ワインとチーズを中心に、食生活に関する提案活動を行っている。 社団法人日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー、フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ)。著書に『シャンパン&スパークリングワイン』(主婦の友社)。

印象的なエピソードとともに、食卓を一層楽しいものにするワイン事典。

ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなど、フランスのワイン産地には有名なものが多くあり、目にする機会も多いと思います。最近は、あまり知られていない産地のものも日本に輸入されるようになりましたが、その数はまだ多くありません。
フランスの田舎を旅しているとき、食事とともに楽しんでいるワインのエチケットに目をやると、「このワイン知らない!」という経験がしばしばあります。フランス語で書かれた本やサイトで調べるということになるのですが、後で調べようと思ってそのままになってしまったことも多くありました。また、調べると言ってもこれがなかなか大変で、それぞれのアペラシオンが掲載されている本はあっても、ブドウ品種、タイプ、合わせる料理などに言及しているものはなかなかありません。
知りたいと思った時に、パラパラとめくって調べられるフランスAOCワインの本があったら……という気持ちが、この事典誕生のルーツです。 つまり、自分が「欲しい!」と思った気持ちを形にしたという訳です。

ワインは、人をして語らせてしまう飲み物で、特にワイン好きはやめようと思ってもついついワイン談義に花を咲かせてしまいます。ですが、一緒にテーブルを囲む方の中に、ワインにあまり詳しくない方がいた場合、味や造り手、ヴィンテージなどの話に終始する食事は、何となく居心地の悪い空間になってしまいがちです。 幸い、フランスのワイン産地には、あまねく知られた興味深い歴史や文化があり、時として耳にしたことのある歴史上の人物がいます。ナポレオン、ルイ16世、ピカソなど……。
印象的なエピソードとともに、食卓を一層楽しいものに。よりワインが身近に感じられるような本をつくる、という企画がここに実現いたしました。もちろん、品種、飲用適温、合わせる料理、生産量といったワインの詳細データとともに、ワインの特徴、テロワールにいたるまで情報は満載です。

この事典を傍らに、ワインを片手にフランスを旅する、そんな気分になっていただけたら嬉しいです。

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■書店スタッフより

(株)CCC TSUTAYA TOKYO ROPPONGI井上彩(いのうえ・あや)

東京都出身です。2007年に(株)CCCに入社してから2年半、TSUTAYA店舗4店舗にてBOOK担当社員をしています。京都が大好きで、これからの紅葉の季節が待ち遠しいです。六本木の店はこれまでと売れる本も棚の作り方も全く違うので、まだまだ日々勉強中ですが、楽しいお店です。ぜひ皆様一度いらしてみてください!

ワインの本が初めての方でも手に取りやすい。

『フランスAOCワイン事典』の第一印象は、とにかく「軽い印象で親しみやすい」というものでした。他のワイン本は表紙がシックな色合いのものが多いのですが、この本は表紙が真っ白で、見た目がかわいらしいからです。ワインの本が初めての方でも手に取りやすい配色だと思います。内容的にも洗練された印象ですので、ぜひお手にとってご覧下さい。

また、10月2日(金)には、当店内にて『フランスAOCワイン事典』の刊行記念イベントを開催いたしました。編者である須藤先生と佐藤先生のアドバイスを聞きながら、ワインを試飲していただくイベントです。テイスティングミニセミナーも全部で3回行い、佐藤先生にはボルドーとブルゴーニュの味わいの違いや、ボージョレーについてお話しいただきました。須藤先生には、AOCという制度についてご説明いただいた上で、「事典を片手にワインを飲む」という本書が提案するワインの楽しみ方についてお話しいただきました。

書店で刊行記念試飲会というのはTSUTAYA TOKYO ROPPONGIならではの新しい試みです。多くのお客様にご参加いただき、盛況のうちにイベントを終えることができました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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■編集者より

㈱三省堂相川千尋(あいかわ・ちひろ)

1982年、千葉県生まれ。2008年春、三省堂入社。フランス語辞書担当。大学院ではフランス近現代美術史を専攻していました。研究テーマは19世紀後半の画家、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ。研究で使うフランス語が好きで好きでどうしようもなくなり、フランス語辞書の編集者になりました。

『フランスAOCワイン事典』は初担当ということもあり、思い入れもひとしおです。ワインは全くの初心者でしたが、1年半の編集期間を経て少し詳しくなりました。お酒は弱いので、ワインは4杯まで。それ以上飲むと腰が抜けます。

AOCごとに産地の歴史や文化、ワインにまつわるエピソードをまとめて。

AOCとは、フランスで法律に基づいて認定される、品質保証制度です。本書はこの認定を受けたワイン400種のほとんどを網羅し、14地方に分けて紹介しています。

日本ではまだ一般になじみのないAOCワインを扱った事典であるため、よく「何かの翻訳?」と聞かれるのですが、本書は全くのオリジナルです。たしかに、類書といえるAOCワイン事典はフランスでも出ていますが、これほどの情報量はありません。本書はフランス本国にもない、本格的なワイン事典です。フランスの公的機関や各地方委員会の持つ資料を丹念にまとめ、今まで資料の少なかったコルシカ地方やサヴォワ地方、南西地方も詳しく取り上げています。校了直前まで何度も差し替えを行い、最新のデータを反映させました。

本書の特徴は、AOCごとに産地の歴史や文化、ワインにまつわるエピソードをまとめていることです。文化とともにワインを味わっていただくことで、ワインを飲む楽しみはよりいっそう大きなものになると思います。ピカソなど、なじみのある人物のエピソードも出てまいりますので、ワインだけでなく、フランス文化全般がお好きな方にもお勧めいたします。特産品や観光名所も多く紹介しましたので、旅行ガイドのようにお使いいただいても面白いかもしれません。

また、「ワインの特徴」では、よく使われる基本的なテイスティング用語が繰り返し出てきますので、基本的な用語が自然に覚えられるかと思います。これからワインの勉強を始める方にもぜひお使いいただきたく思います。

味の決め手となる「テロワール」では、地質年代や土壌の成分など、かなり専門的な用語まで取り上げました。編集過程では、ここまで専門的な情報を入れるべきかどうか迷った部分もありますが、結果としてプロの方にまでお使いいただける本格的な事典となったと思います。

原則としてすべての項目にボトルの写真を掲載し、生産量、最低天然アルコール度、ブドウ品種、飲み頃、飲用温度、合わせる料理やチーズなどのデータも詳細に示しました。

「フランスワイン」、しかも「AOCワイン」のみを扱った本というと、「フランスらしいエリート主義が鼻につく」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、AOCというのは、もともとは食品偽装対策のために始まった品質保証制度です。現在、食品偽装が問題となっている日本にとっても無関係のものではありません。むしろ、フランスにおけるAOCの発展から、産地に根差した農産物の保護やブランド化など、日本人としても学ぶところが多いのではないでしょうか?

最後に、表紙のデザインについて一言。本書では、取り上げた14地方それぞれにイメージカラーを設定しています。アルザスはさわやかな緑、ボージョレーはヌーヴォーの若いイメージがあるから明るめの紫、などです。実は本書の表紙には、これらのイメージカラーがちりばめられています。しかもただ単に色を並べているだけではなく、イメージカラーの位置がそれぞれの地方の場所を表しています。よく見ると、六角形をしたフランスの国土が見えてきませんか? 地方に根差したフランスワインの性格がうまく表現された、奥の深いデザインだと思います。

監修は、メルシャン技術顧問の小阪田嘉昭先生にお願いしました。編者は、シニアソムリエの佐藤秀良先生、ワインアドバイザーの須藤海芳子先生、パリ在住の翻訳家であり、webダカーポにもコラムを執筆されている河清美先生の3人です。ワイン法がご専門の明治学院大学蛯原健介准教授にも、AOC法について執筆をしていただきました。

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