雑誌の黄金時代を築いたアート・ディレクター、堀内誠一さんの仕事の全容がわかる展覧会『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』、世田谷文学館にて開催です。

(2009.07.03)

みなさんがご覧になっている『アンアン』も『ブルータス』、『ポパイ』そして『ダカーポ』も、ロゴをデザインしたのは、堀内誠一さんです。

マガジンハウス社屋に描いた壁画の前の堀内誠一さん(1983年)

堀内誠一さん(1932~1987)は、『an・an』や『BRUTUS』など、数多くのヴィジュアル雑誌のアート・ディレクションを手がけ、今日の雑誌のスタイルに決定的影響を与えたデザイナーであると同時に、絵本/挿絵画家としても、『ぐるんぱのようちえん』『マザー・グースのうた』をはじめ、今なお親しまれる多くの名作を残しました。また、旅を愛し、世界各国に足を運ぶとともに、独自の視点でとらえた各地の文化・風俗の魅力を、軽妙洒脱なスケッチとエッセイによって紹介しました。

堀内さんゆかりの地・世田谷で開催される展覧会『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』では、若干14歳で歳で伊勢丹百貨店宣伝課に入社し、早熟な才能を開花させた10代の頃から、晩年に至るまでの足跡をたどり、「旅」・「絵本」・「デザイン」の3領域にわたる、堀内誠一のさん創作活動の全容を、約200点の作品・資料によってご紹介します。

『an・an』第6号の表紙。表紙デザイン、タイトルロゴデザイン、アートディレクション、すべて堀内誠一。写真は立木三朗
『BRUTUS』タイトルロゴデザイン(1980年 鉛筆・紙)

世田谷文学館では、これまでも『花森安治と「暮らしの手帖」展』(平成17年)、『植草甚一 マイ・フェイバリット・シングス展』(平成19年)など文学に隣接する美術、デザイン、旅、音楽なども視野に入れた、ジャンルを横断する企画展を開催してきました。

今回の展覧会では『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』というタイトルそのままに、堀内さんの仕事を堀内さんの仕事を網羅的に紹介します。

「この1点」となると、難しいですが、じっくり鑑賞していただきたいのは、『パリからの旅』(平凡出版、1981年)に収められた、「パリを歩く」の章の原画(原稿)です。パリ郊外に住んでいた堀内さんが、独自の視点と語り口で紹介する、メトロ・カフェ・レストランなどの紹介なのですが、ページ丸ごと、文章も絵も、全て手書きで仕上げられています。

手書きの文章なのに、きれいな行間、段組でピタっと収まっていて、スケッチとのバランス、全体の構成がきまっている。これはデザイン力と言ってもいいかもしれません。楽しいスケッチ、そしてエッセイの魅力もあり、その意味では、旅・絵本・デザインの、3つの要素がすべてつまっている作品です。

今回の展覧会は、10年ぶりの開催となる本格的な回顧展です。是非ご覧ください。

『an・an』第259号(平凡出版・現マガジンハウス)「パリの絵本」に掲載された手描きの「パリの名所絵地図」(1980年)。
堀内さんが手がけた絵本の原画も。『ぐるんぱのようちえん』作:西内ミナミ(1965年、福音館書店)
『マザーグースのうた』訳:谷川俊太郎(1975年、草思社)
関連イベントもチェックしてくださいね。

■「堀内さんの『旅』」
 巌谷國士(仏文学者・旅行作家・明治学院大学教授)
日時:7月11日(土)14時~15時30分

■「堀内さんの絵本」
 スズキコージ(絵本画家)×土井章史(トムズボックス代表・絵本編集者)
日時:8月8日(土)14時~15時30分

■堀内さんの雑誌づくり
 石川次郎(エディトリアルディレクター)×幅允孝(BACH代表・ブックディレクター)
日時:8月29日(土)14時~15時30分

会場:全て1階文学サロン
料金:各回 1,000円(展覧会入場券つき。中学生以下無料)
※ 各回当日11時より1階ロビーにてチケットを販売。定員150名。

『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』

7月4日(土)~9月6日(日)
世田谷文学館 
Tel.03-5374-9111
東京都世田谷区南鳥山1-10-10 
10:00~18:00
月休
ただし、7月20日(月)、8月31日(月)は開館。
7月21日(火)、8月30日(日)は休館。

筆者プロフィール

財団法人せたがや文化財団
世田谷文学館 学芸員
大竹嘉彦

2003年、武蔵野美術大学芸術文化学科卒業。世田谷美術館、財団法人地域創造勤務を経て現職。「この堀内さんの企画展準備期間中、セタブン(世田谷文学館)ライブラリー勤務のお姉さま方と『an・an』の話で盛り上がっていました。彼女たちの70年代の『an・an』を巡る思い出話がとても面白く、企画のヒントもいただきました。立川ユリと秋川リサが青と白のボーダーの水着を着て座ってる表紙の号がよかった、急いで青山のお店に買いに行ったらデザイナー本人がお店にいて緊張した……etc.。『an・an』は彼女たちのファッションバイブルだったんですね。」